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大人の恋愛短編集「声に恋して」

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大人の恋愛短編集「声に恋して」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
日常の一コマを切り取って、大人のための恋愛短編にしてみました。

「声に恋して」

 大型トラックが行き交い、交通量の多い幹線道路沿いにあるファミリーレストラン。福井健吾(ふくいけんご)は駐車場に車を停めると、階段を上って店内に入った。出迎えた店員に「お好きな所へどうぞ」と言われ、左奥に目をやる。お目当ては、禁煙席の奥にある隅っこのテーブル席。運良く誰もいない事を確認して素早く席に着く。

 店員に、チョコレートケーキとドリンクバーを注文した後、まずはブレンドコーヒーのホットで喉を湿らす。「うっ、苦っ!」ブラックコーヒーの味を確認してから、砂糖とミルクを補充するのが福井のお決まりのやり方だった。

 コーヒーを端にずらし、カバンから取り出したパソコンの電源を入れた後、スマートフォンで時刻を確認する。午後二時五分前。もうすぐ約束の時間だと思っていると、「あのぅ、八代先生(やしろせんせい)ですか?……」と言う声が聞こえた。

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福井は慌ててスマートフォンをカバンに押し込むと、顔を上げて声の主を確認した。

 白のブラウスの上から茶色のカーディガンを羽織った女性が立っている。「あっ、えーっと、三井恵美(みついめぐみ)さん、ですかね?」と尋ねてみると、彼女は「はい」っと笑顔で答えた。

 「お待ちしておりました、どうぞ」と言って彼女を席に座らせると、「鑑定士 八代光(やしろひかる)」と書かれた名刺を取り出して渡した。八代光とは、福井が占いをする時の名前である。

 彼女に「何か頼みますか?」と尋ねると、「じゃあ、同じので」と言うので、店員を呼んで注文をした。彼女がコーヒーを持って席に着いた後で、「では、よろしくお願いします」と鑑定を開始する。

「三井さんの気になる事は何ですか?」
「私、結婚出来るのかなって思って……」

 自信のなさそうな彼女の言葉が、福井に疑問を抱かせた。彼女の年齢は二十二歳。見たところ、容姿もそれほど悪くはない。どうして結婚に不安を抱くのか、福井にはその理由がわからなかった。

「では、命式を観てみましょう」そう言って、彼女の四柱推命の命式を出す。

 パソコンの画面に出てきたそれを確認した福井は、インスピレーションで感じたままを彼女に伝えた。

「三井さんは、女性としてはとても良い命式ですよ。うん、すごく良いと思います。男性から愛されやすい人ですよね」

 福井は感じたままを伝えた。実際、嘘でも何でもなく、良い命式に見える。だからこそ、どうして結婚出来るかどうか心配なのか、気になって仕方なかった。

「実はあの……。好きな人がいるんです……」
「そうですか。じゃあ、その人の相性を観てみますか?」
「いや、あの、えーっと……。その人、結婚しているんです……」
「えっ?」

 結婚しているって事は、不倫? 愛人? 福井の頭の中をいろんな言葉が駆け巡る。

「じゃあ、不倫……って事ですか?」
「いえ、私の一方的な片想いです……」

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片想い……。という事は、不倫にはならない。

 福井は、ほっと胸を撫でおろす。と同時に、彼女の複雑な胸の内を垣間見た。既婚者を好きになってしまった彼女。それは、決して実る事のない恋。だからこそ、結婚出来るかどうかの問いにつながるのだ。

「そうですか……。それは切ないですね……」
「それで、先生がその人に似ているんです……」
「えっ? 私が? その男性に?」
「はい、声が」
「あっ、声が、ですか……」
「電話した時、声が似てるって思ったんです。それで、会いたいなって思って……」

なるほど。そう言う事か。

 鑑定と言うよりも、好きな人の声に似ている私に会いたい。そういう事か。福井はちょっと複雑な気持ちだった。

「どうですか? 全然違うでしょ、その人と。会ってがっかりしました?」
「いいえ! イメージしてた通りでした! すごく素敵です!」

 えっ? 意外な反応に戸惑ってしまった。二回りも年上なのに。結構な年上男性が好きなのだろうか? おそらく、父親からの愛情が不足していたのかも知れない。それで、父親のように甘えられる対象を求めているのかも。福井はいろいろと想像を巡らせた。

「そう、ですか。じゃあ、たまにこうやって会います? 妻と子どもがいるおじさんですが、私で良ければ相談相手になりますよ」
「本当ですか?」
「お金がないから、パパ活みたいに援助は出来ませんけど、コーヒーぐらいはおごります」
「ありがとうございます!」

 嬉しそうな彼女の笑顔が魅力的だ。何だか、こっちが不倫関係に溺れてしまいそうだ。そんな福井の思いを他所に、恵美は満面の笑みを浮かべている。そんな彼女を見ながら、福井は少しだけ、鼓動の高鳴りを抑えられないでいた。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n4602fo/2/】

大人の恋愛短編集「雨の日の恋人」

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