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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

投稿日:2019年12月14日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第8話 血だらけの訪問者

 東京の奥多摩。緩やかなカーブが連続するこの道を、バイクで訪れるライダーは多い。矢吹孝文もその一人だ。彼は、週末に必ずここに来ていたのだが、今は平日の昼間である。仕事で大きな失敗をして、会社に迷惑をかけてしまった彼は、責任を取って退職した。もともと、好きでやっていた仕事ではない。未練などなかった。

 せっかく時間が出来たのだから、今日は思い切り楽しもう。この道路を貸し切りにするなんて、なんて贅沢なことか。溜まりに溜まったストレスを発散させよう。彼はこれまでの人生で、間違いなく最高の瞬間を迎えている。しかし、突然目の前に現れた障害物を避けようとした瞬間、バランスを崩してしまったのだ。

 予約の客も帰り、店を閉めようとしていた零美に、一人の男性が話しかけてきた。「あの、すいません……」零美は血だらけの彼に驚いたが、とりあえず話を聞こうと中に招き入れた。

「どうされましたか?」
「実は、オートバイで事故を起こしたんですが、実家の両親に知らせてもらいたいと思いまして…」

 そう言う彼は、黒いライダースーツを着て、頭から血を流している。零美は、彼から実家の連絡先を聞いて紙に書いた。和彦はその様子を奥から見ていたが、零美が独り言を呟いているようにしか見えなかった。

「では早速、あなたのご両親に電話します」
「お願いします」

 零美は、彼から聞いた電話番号に掛けてみる。

「あのう、夜分に失礼いたしますが、そちらは矢吹様のお宅で間違いないでしょうか?」
「はい、うちは矢吹ですが、どちら様でしょうか?」

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電話に出たのは、五十代後半ぐらいの女性だった。

「私の名前は加賀美零美と申します。東京で占いのお店をしている者です。実は、大変申し上げにくい事なのですが、先ほど息子さんがこちらに訪ねて来られまして……」
「ああ、そうですか」
「息子さんは、オートバイで事故を起こしたそうなんです」
「事故ですか? それで、息子は無事ですか?」
「いえ……。あのう、申し上げにくいのですが……。実はもう、亡くなっていらっしゃるのです」
「えっ? 息子が死んだって? だってあなた、さっき息子が訪ねて来たって言ったじゃないですか!」

 変なことを言う。いたずら電話なのかと、母親は腹を立てた。

「はい、言いました。実際、今も私の目の前にいらっしゃいます」
「それってどういうことですか? 息子が死んで、幽霊になって訪ねてきたって言うんですか?」

 母親は興奮しながらも、馬鹿にするような物言いをした。

「はい、そうです」
「そ、そんなバカなことがありますか? 幽霊が訪ねて来ただなんて……。私を馬鹿にしてからかっているんですか? 何のためのいたずらですか? ひどいわ、いきなり電話かけてきて。そんな質(たち)の悪いいたずらするなんて」
「い、いえ、ちょっと待ってください。いたずらじゃないんです。本当にあなたの息子さんなんです」

電話を切られてしまうかもと思い、零美は焦った。

確かに、いきなり見ず知らずの人から電話がかかってきて、お宅の息子が亡くなったと言われても、すぐに信じられるものではない。彼の顔を見ると、困ったような申し訳なさそうな顔をしている。

「もし、もしですよ、もし本当に息子が死んだのなら、警察から電話があるはずじゃないですか。そんな連絡なんて、何にもありませんよ!」
「それはですね、山の中だから見つかりにくいんだって息子さんがおっしゃっています。だから警察にも、連絡がまだないんですよ」
「とにかくもう、いたずらだったらいい加減にしてください。もう切ります!」

 そう言って、母親は電話を切ってしまった。振り返って彼を見ると、なんとも悲しそうな顔をしている。せっかく私を頼って来てくれたのに、役に立てなくて申し訳ない。零美は彼に向かって頭を下げた。これからどうしようかと困った零美は、とりあえず和彦に相談してみる事にした。

「ねえねえ、和彦さん。ちょっと、こちらに来てくださらない?」
「えっ? ああ……」

 さきほどの電話の内容から、亡くなった青年が店内にいるのだろうと察しがついた。しかし、和彦には青年の姿は見えない。零美がいるので安心なのだが、不安を抱えながら恐る恐る近づいてみる。

「こちらが、オートバイ事故で亡くなった矢吹孝文さん」と紹介されても、どこに彼が立っているのか見当もつかない。「夫の和彦です」と紹介され、和彦は軽く頭を下げた。「ごめんなさい。僕には全然あなたが見えないんです」と言うと彼は、そりゃそうでしょうという顔をして笑った。

「あのね、和彦さん。この人、バイクで事故を起こして、そこがまた山の中なのでわかりづらい場所なんだって。それで、誰にも発見されそうにないから、私に何とかしてほしいって頼みに来たのよ」
「うん……。それは何となく、僕にも理解できる。君は、亡くなった人の通訳みたいな立場だからね。僕の母もおばあちゃんも、そういうことやっていたから、君がそういうことが出来るというのは理解できるよ。でも、普通の人には理解できないかも。いきなり、亡くなったあなたの息子さんと話しましたよって言われてもさ……」
「そうなんだよね。だからさ、たぶん警察に連絡しても、きっと信じてもらえないんじゃないかと思う。どうしたらいいかな?」

 零美にそう言われてしばらく考えた後、思いついたように和彦が、「そうだ。あいつがいるじゃん」と言って電話を掛けた。

「もしもし……川崎? 久しぶり、加賀美だけど。こんな時間に悪いんだけど、頼みがあるんだよ。ちょっと家に来てくれないかな?」
「加賀美か、久しぶりだな。いいよ、今からすぐ行く」

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しばらくすると、「こんばんは」と声がした。

刑事の川崎亮太だ。短髪で背が高く、顔は色黒で、大きな目が人懐っこさを表している。筋トレが好きで、陸上部では短距離選手だったのに、胸板が厚く二の腕はかなり太い。

「こんな時間に呼び出して悪いね」と和彦が言うと、手を上げてにこりとした。「お久しぶりです」と零美が挨拶をする。川崎は頭をかきながら「奥さん、相変わらずお綺麗ですね」と言って豪快に笑った。恥ずかしい言葉を簡単に言える彼を、和彦は羨ましく思った。

「早速で悪いけど、君に頼みがあってね。こちらの男性、オートバイで事故ったらしい……」
「えっ? こちらの男性? どちらの?」

 和彦の手が示す方を見るが、空間には何もない。

「いや、その……。実は僕にも見えないんだけど。ここにその人がいるらしい。僕の母が霊能者で、うちの奥さんもそういう能力があるってこと、君も知ってるだろ? それでこちらの亡くなった男性が、うちの奥さんを頼って来たんだよ」

 そう言われても、川崎には全く見えない。ただ、和彦の母が有名な霊能者であり、零美もそういう能力があることは知っていたので、あり得る話だなとは思った。

「川崎さんが信じられないのは当然だと思います。さっき、こちらの矢吹さんのお母さんに電話したら、いたずら電話だと思って切られてしまいました。それで、警察に電話してもたぶん、信じてもらえないだろうと思って、川崎さんに連絡しました。このまま誰にも発見されなかったら、あまりに可哀想じゃないですか……」

 大きな瞳を潤ませて訴える零美。その瞳に吸い込まれそうになるのを堪えながら、こんな美女の頼みを断れる男なんているだろうかと川崎は思った。

「奥さん、わかりました。私にお任せください。警察官を動員して、必ずやこの人の遺体を探しますから」

 大きな胸を張って、男らしさを強調する。「ありがとうございます。お願いします」「ありがとう、川崎」と二人に言われ、何だか少し照れ臭い。亡くなった矢吹も頭を下げていたのだが、彼の姿が視えたのは零美だけだった。

 数日後、川崎から電話があり、矢吹孝文の遺体が発見され、警察から遺族に連絡をしたという。その話を、和彦は零美に伝えた。

「無事に見つかって良かったね」
「きっと、実家のお母さんも驚いたでしょうね。あの電話は本当だったとわかって」

 そう言って微笑む零美には、頭を下げてお礼をしている矢吹の姿が視えていた。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/8/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第2話 胸に秘めた水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第3話 登校拒否の娘を何とかしたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第4話 懐かしい母の温もり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第9話 水は何色にも染まる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第10話 次期院長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第13話 老後のための熟年婚活」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第51話 彼の告白を待つ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第52話 過去が思い出せない」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第58話 彼が死ななかった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第59話 男女が付き合うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第60話 未来を予言する」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第61話 彼女がコミュ障になった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第62話 鑑定は相談者を産みかえる作業」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第63話 亡き夫の願い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第64話 夢で殺される理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第65話 人気女優と俳優の恋愛」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第66話 会社を辞めて彼がしたい事」

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