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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

投稿日:2019年12月15日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第11話 憑りつく霊たちの事情

 駅のホームに、都内をぐるりと一周する電車が入ってきた。通勤ラッシュの時間を過ぎた電車の中は、ほどほどの混み具合。零美は和彦と並んで、乗降扉近くの吊革につかまって立つ。今日は久しぶりに和彦の実家に行く。加賀美志保に会うためだ。

 先ほどから和彦は、目の前に座る若い女性が気になって仕方がない。その女性は、白い大きなつばの帽子を被り、サングラスをかけて下を向いている。年齢は二十四、五歳ぐらい、線の細いスラっとした美女。隣りには妻の零美がいる。それなのに、和彦は彼女をチラチラと見ているのである。

 彼女が美人だから、という理由だけではない。絶え間なく、ぼそぼそと独り言を呟いているからだ。その声は小さくて聞き取れない。しかし確かに聞こえてくるので、和彦は気になって仕方がない。そして、もうすぐ目的の駅に到着するところで、その声は突然大きくなり、はっきりと聞き取れた。

「まったく、いつまで憑(つ)いているんだ! この野郎ーーーーーー! いい加減にしろーーー!」

 静かな車内に不似合いな、突然響き渡った余りにも大きな声。周りの人たちの視線が、一斉に声の主に集まった。しかし彼女は、何事もなかったかのように下を向いて座っている。

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すぐに電車は駅に着き、和彦と零美は人波に流されるようにホームへと押し出された。

 人波で零美と離れてしまった和彦は、すぐに彼女の元に駆け寄った。

「君はさっきの声、聞いたかい?」開口一番、一番聞きたかった事を聞いた。

「『いつまで憑いているんだ、この野郎ーーー!』?」
「それ。あれにはびっくりしたね」

 和彦は歩きながら、両手を広げるジェスチャーをする。

「あれは結局何なの? 霊に憑かれているってこと?」
「可哀想だけど、そういうことね」

 淡々と答える零美。さして驚いた様子もない。

「君は、その……、霊を視たのかい?」

和彦が恐る恐る聞いたのは、零美が普段からあまり霊を視ないようにしているからだ。

「……視たわ」

 そう言った零美を見て、思い出したくない感触を和彦は受け取った。聞かなきゃ良かったと後悔する。霊感のない和彦には、視えるというのは羨ましいことだ。それをネタにして、面白い小説だって書く自信はある。

 しかし、霊が視えることで、零美が子どもの頃から苦しんできたことも知っている。普段の彼女が、出来るだけ霊を視ないようにしていることも……。

 ある人が言う。人は誰でも訓練次第で、視えたり聞こえたり出来るようになると。大きな事故で生死の境を彷徨った人が、霊を視えるようになったという話もある。和彦は、いつか自分も視えるようになりたいと願う一方、そうなったら怖いという思いもあるのだ。

「さっきあの人に憑いていた霊……」

 考えながら歩いていた和彦は、話し掛けてきた零美の顔を見た。

「あの霊は、顔だけを彼女の右肩に乗せていた……」
「えっ、顔だけ?」
「彼女の右耳に向かって何かを囁いていたけれど、何を囁いていたのかはわからない……」
「……それは鬱陶しい話だ」
「それが毎日繰り返されたら、彼女だって辛いわよね」
「毎日ね……。毎日耳鳴りがする人も大変だって聞いたことある。耳元で意味のある言葉を囁かれるのは本当に辛いよ。いい加減にしろって言いたくなるのもわかるな」

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和彦の言葉に、零美も頷く。

「あの霊は恐ろしい形相をしていたから、きっと恨みつらみの言葉だったはず。だけど、彼女にとっては良い迷惑よ。だって、彼女には何の罪もないもの。彼女の先祖に苦しめられて亡くなった人が、先祖ではなくて今生きている彼女を苦しめているんだから」
「それは理不尽な話だなあ。恨むなら、いじめた本人を恨めよって言いたい」
「その人がこの世に生きていれば出来るけど、もうこの世にいなかったらどうしようもない。だからせめて、その人の子孫を苦しめるしかないのかも。もし子孫がいない場合は、少しでも関係のある人とか……」

 零美は話の途中で立ち止まり、駅構内の壁際をじっと見ていた。

「どうした? 何?」
「あそこにほら……。じっと座っている人が……」
「えっ、どこに?」

 零美が指差す方向を見るが、和彦には何も見えない。

「あの人も、強い恨みを抱えている……」
「強い恨み? 誰かに殺されたってこと?」
「それは違う気がする」
「違うって?」
「たぶんあの人は、自殺じゃないかな。誰か特定の人に対してではなく、この社会全体に対する恨みだと思う」
「社会全体にね……」
「自己主張の強い人だと、通り魔事件とか起こして、幸せに暮らしている人たちに思い知らせてやろうとする。だけど自己主張が出来ない人は、自分で自分が嫌になって傷つけたくなる……。

 そういう人は、同じような思いを持っている人を探しているの。自分の苦しみをわかってくれる人を。そしてそういう人の体に憑いて、恨みつらみ、妬み嫉み、怒りや悲しみの思いを増長させる。

 だから、怒りや悲しみをそのままにしておくのは危険なこと。三秒以内とか、三分以内、三十分以内……。短い時間で気持ちを切り替えるべきなのよね」

 そう言って零美は、足早にその場を立ち去ろうと歩き出した。彼女の瞳が潤んでいたのは、さっきの霊の事情に共感したためか。和彦にはそう思えた。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/11/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第9話 水は何色にも染まる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第10話 次期院長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第13話 老後のための熟年婚活」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第49話 産みの親に会うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第50話 丑の刻参り」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第51話 彼の告白を待つ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第52話 過去が思い出せない」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第53話 別れさせるのが仕事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第54話 息子に店を継がせたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第55話 選ばれない人生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第56話 交通事故で助かった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第57話 鏡が嫌いになった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第58話 彼が死ななかった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第59話 男女が付き合うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第60話 未来を予言する」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第61話 彼女がコミュ障になった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第62話 鑑定は相談者を産みかえる作業」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第65話 人気女優と俳優の恋愛」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第66話 会社を辞めて彼がしたい事」

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