心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」
「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)
第16話 息子に降りかかった災難
「佐伯さん、お電話です」
「はい」
開いていたファイルを保存してから、佐伯譲治は机の上の電話をとった。聞きなれない会社からの電話に、譲治は少し不安になる。そして、その不安を決定づける言葉が聞こえてきた。「お金、返してくれませんか」借金の取り立てだ。
ギャンブルなどせず、衝動買いもしない譲治には、借金と言われても身に覚えがない。何かの間違いではと尋ねると「奥さんですよ」と言われた。思い当たるふしがある。派手な服や高価なバッグ、どこにそんなお金がと思っていた答えがこれなのだ。
その夜、譲治は昼間の電話の内容を話し、妻の陽子を問い詰めた。喧嘩腰の譲治の態度に腹を立てた陽子は、貸金業者から送られてきた未払い金の催促状をテーブルに投げつけた。山のような手紙の数に譲治は愕然。事態は深刻だと悟る。
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零美の店に、一人の女性が訪ねてきた。
憔悴しきった彼女は、身なりからして五十代前半ぐらい。見るからに疲れ切った顔で、深い悩みを抱えていることが和彦にもわかった。
「佐伯かなえと言います。長男の事で悩んでいます。息子は二十五歳ですが、お嫁さんが十九歳上の四十四歳です。その人は二回離婚していて、前の人たちとの間の子どもが四人、息子との間には一歳の子どもがいます。今、離婚の準備をしているところなのですが、息子に内緒でお嫁さんが借金作ったみたいで……」
「借金、ですか……」
零美は息子夫婦の命式を出し、プリントアウトして並べた。
「これが息子さんの命式です。かなり自我が強く、自信家です。自分が正しいと思っているので、なかなか周囲の意見に耳を貸すことは難しいです」
「本当に昔から言う事を聞かない子でした。親子ほども年の差がある人と結婚するのは反対したんです。でも結局、結婚してしまって。子どもも生まれたので、しょうがなく認めたんですが、お金にルーズだってことがわかって。それでようやく、息子も離婚しようと思ったんですよ」
「借金はどのくらいあるんですか?」
「約三百万あります」
「え、三百万? それは結婚する前からですか、それとも結婚した後にですか?」
「結婚する前からもあり、結婚した後のもあるようです」
「確かに、この女性はお金に関してルーズです。お金だけでなく、他にもいろいろとルーズでしょう。息子さんにとっては、細かくないという点が楽だったかも知れません」
「片付けや掃除も好きじゃないので、私が時々片付けたり掃除をしたりしていました」
「その後、借金問題はどうなりましたか?」
「息子が相談してきたので、私たちが立て替えました。息子は公務員ですが、貯金はそんなにありません。あのお嫁さんの金遣いが荒かったのか、お金が残っていなかったんです」
「お嫁さんは、立て替えたお金を返す事は出来そうですか?」
「それは期待していません。手切れ金だと思って諦めています」
「息子さんが別れたいと言ったんでしょうか?」
「いえ、息子はまだ愛情があって、別れたくなかったようです。私たちがお金を出すから、その代わり別れなさいと言って説得しました。息子の子どもは私たちが引き取って育てます。あの人もお金がないし、それにもう、次の人を見つけているようで……」
「えっ? 離婚した後に一緒になる男性ですか?」
「あの人はそういう人なんです。最初の結婚の時も、離婚する前に次の人を見つけていましたし、息子の時も、まだ前の人と正式に別れていなかったようです」
「それは、息子さんと結婚する時は隠していたんですか?」
「そうです。もし知っていたら、絶対に結婚させませんでした」
「それはもう、なんともすごい人です。そんなに美人なんですか彼女は?」
「いえいえ。息子と結婚した時から太っていました。今はさらにブクブクに太っていますが、息子はそういう女性がタイプのようです」
「そういうお母さんだと、子どもたちも可哀想ですね」
「一番上の女の子はもう結婚して子どもがいます。息子からしたら、もう孫がいたと。下の子どもたちは、これからどうなるんでしょうか。他人事ですが心配になります」
「でも、最悪な事件にならなくて良かったです。お金目的で男性を騙して、殺される人だっていますからね」
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「本当に、息子が殺されなくて良かったです」
「まだ二十五歳ですから、新しい人と再婚されたら良いですね」
「息子はいつ頃に再婚出来そうですか? 孫も小さいので、早く再婚してもらいたいと思います」
「年回りを見ますと、二、三年後には結婚しているかも知れませんよ。男性としての魅力がありますから、女性との出会いは困らないと思いますが。頭の良い方なので、今回の件で学習されたでしょう。次はきっと、同じような女性は選ばないと思います。もし気になる方がいらっしゃれば、その方と息子さんの相性を調べさせていただきますから」
「その時は是非、よろしくお願いします。ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をして帰っていく彼女を見送り、和彦は奥から顔を出した。
「しかしその年上の奥さんって人は、もう新しい人を見つけているなんて、すごいね」
呆れ顔の和彦に、零美は言葉を返した。
「世の中には、いろんな人がいるのよ。そんなに女性としての魅力があるのかしら?」
「よく年配の独身男性が、結婚詐欺女に引っかかるでしょ。さっきの息子さんは公務員だから、お金があると思ったんだろうね。口が上手いんじゃない。若いからコロッと騙されたんだね」
「次こそは良い人と出会って、幸せになってもらいたいわね」
零美の言葉に、和彦も頷いた。
【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/16/】
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