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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

投稿日:2019年12月16日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第25話 課長への片想い

「今日は悪かったですね。これ、飲んでください」

 課長はそう言って、野村ひとみの机の上に缶コーヒーを置いた。ひとみは「ありがとうございます。いただきます!」と言って笑顔になる。急な書類変更だったが、嫌な顔一つしないで引き受けた。ひとみにとって、課長の頼みは最優先事項なのだ。

「お先に」と手を上げて、帰っていく課長を見送る。「お疲れ様でした」と頭を下げる。壁に掛かった時計を見て「私も急がなくちゃ」と呟いて立ち上がった。零美の店に予約を入れていたのだ。約束の時間には間に合いそうにない。

 もう既に遅くなった夕方。ひとみはハアハアと息を切らせてドアを開けた。

「遅くなりました、野村ひとみです」
「お待ちしておりました。さあ、どうぞ」
「すいません、急な用事を頼まれてしまって……」
「大丈夫ですよ。コーヒーで良かったでしょうか?」
「ありがとうございます、コーヒーは大好きです」

 以前に来た彼女の事を、零美はよく覚えていた。

「ブラックでしたね」
「そうです、ありがとうございます」

 二人分のコーヒーカップを持ってくると、汗をかいた額をしきりにハンカチでぬぐっていた。

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「今日は何か気がかりな事でも?」

「今日はですね。以前の方とは違う人の相性を観てもらいたくて……」
「じゃあ、その方のお名前と生年月日を書いてください」
「それが……、彼の名前は書きたくなくて……」
「じゃあ、仮にAさんという事にしましょう」

 二人の命式を出し、テーブルに並べる。

「この人、とても優しい人です。面倒見が良くて、困っている人を見ると助けたくなる感じです」
「本当に優しくて、私がミスしても『良いよ良いよ』と言って怒りません」
「会社の同僚?」
「いえ……。私の上司、課長です……」
「課長さんは、まだ独身でしたか」
「独身ではなく、結婚しています。子どもも二人……」
「……そうなんですね」

 一回り以上も年が離れている。しかも妻子のいる男性。彼女の悩みは深い。

「不倫、ですか?」

 言いたくない言葉で、聞きたくない言葉だが、恐る恐る聞いてみた。不倫と聞くと、以前の嫌な思い出が蘇る。しかし、聞かない訳にはいかない。

「私の、ただの片想いです」
「ああ、そうですか。じゃあ、不倫にはならないですね」

 少し安堵した。一方的な片想いで実らない恋は辛いが、関係を結ばなければ非難される事はない。

「では何故、相性を知りたいんですか?」
「もし……。もし課長と私の相性が良くて、もし課長が奥さんと別れる事になったら……。その時は私にも、チャンスがあるのかなと思いまして……」
「あっ……そうですね……。あり得ない事ではないですよね。でも、課長の奥さんの生年月日までは、さすがにわかりませんよね?」
「それはわかりませんが……。先生なら、写真で霊視が出来るかなと思いまして……」

そう言うと、ひとみはスマホから画像を選んで零美に見せた。

「えーっと、これは……。運動会、ですよね」
「小学校の運動会ですね」
「その小学校には……。どなたか知り合いのお子さんがいらっしゃるとか?」
「知り合いはいません」
「では、課長さんの家族を見に行ったと?」
「そうです。可愛いんです。課長に似ているなあと思って」

 違う画像も何枚か見せた。

「これは、息子の雄大(ゆうだい)君。サッカーの試合でゴールを決めたんです。課長に似て、運動神経が良いんです」
「雄大君ですか。よく名前知ってますね」

「妹は紗良(さら)ちゃん。目元が課長そっくりでしょ?」

 その画像には、ファミレスで食事している課長家族が写っている。そして、妹だけがアップで撮影されていた。

「これ、お店で撮ったんですね。よく気づかれませんでしたね」
「私……毎回違う変装します」

「毎回、ですか?」

 テーブルを挟んでにこりと笑う彼女。その距離が、やけに気になる。しかし、それを悟られないように心を鎮めて、画像をじっと見つめていた。しばらく考えた後、彼女にスマホを返して、落ち着いた口調でこう言った。

「画像からは、何の心配もない幸せな波動が伝わってきます。この夫婦は、強い絆で結ばれています。壊れるような気配は感じられませんねえ」
「そうですか……」
「課長さんの命式を見ても、真面目で人格者だと言えます。滅多な事では怒らない、度量のある人でしょう。あなたに優しくしてくれたのは、父親が娘に対して、あるいは兄が妹に対してと同じで、異性を見るような目ではないと思います」
「……そうですか。やっぱり、そうですよね……」

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うな垂れて、肩を震わせている。

 そして、撮りためた課長の家族写真をいくつもスライドさせた。

「これ……ストーカーって事ですよね?」
「えっ?」

 彼女に何も言えない。ストーカーである事を自覚していなかったのか。それとも、自覚しながら続けていたのか。本人にもわからないのかも知れない。

「こんな事を繰り返して、もう一年近くになります。わざと課長と同じ駅の街に引っ越しました。課長に知られないように、遠くから……。ただ遠くから見つめていました。

 本当は知っていました。課長がとても家族思いな事を……。奥さんとも、とても仲が良い事も……。奥さんもとても良い人です。私、奥さんの事は嫌いじゃないです。

 だから、奥さんに知られないように……気をつけていました。私のせいで、この幸せな家庭を壊すのは嫌だったんです」

 零美には、かける言葉が見つからない。

「私……もう少しで、盗聴器を……仕掛けるところでした……」
「盗聴器、ですか……」
「でも、それこそもう犯罪ですよね。このストーカー行為自体、既にもう立派な犯罪ですが……」
「はい。それは削除しましょう。……削除出来ますか?」

 こくりと頷く彼女。しばらく考えた後、画像を一つ一つ消し始めた。何も言わずに見守る零美。

「やった、出来た……。先生、全部削除出来ました」
「それは良かった……」

 目が潤んでいるように見えるが、必死に笑顔を作ろうとしているひとみ。彼女の恋は終わってしまったが、早く立ち直ってほしい。料金を支払い、深々とお辞儀をして帰っていく彼女の後ろ姿を見送りながら、今度また、笑顔で訪ねてきてくれる事を祈らずにはいられない零美だった。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/25/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第2話 胸に秘めた水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第3話 登校拒否の娘を何とかしたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第4話 懐かしい母の温もり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第9話 水は何色にも染まる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第10話 次期院長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第13話 老後のための熟年婚活」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第49話 産みの親に会うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第50話 丑の刻参り」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第51話 彼の告白を待つ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第52話 過去が思い出せない」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第53話 別れさせるのが仕事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第54話 息子に店を継がせたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第55話 選ばれない人生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第56話 交通事故で助かった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第57話 鏡が嫌いになった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第58話 彼が死ななかった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第59話 男女が付き合うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第60話 未来を予言する」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第61話 彼女がコミュ障になった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第62話 鑑定は相談者を産みかえる作業」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第63話 亡き夫の願い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第64話 夢で殺される理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第65話 人気女優と俳優の恋愛」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第66話 会社を辞めて彼がしたい事」

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