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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

投稿日:2019年12月17日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第27話 誰にも言えない恋

 風呂上がりに髪を乾かすドライヤーの音に紛れ、微かに聞こえた軽やかなメロディー。SNSの着信を知らせる聞きなれた音。自然と、石川みずえの心臓の鼓動が早くなる。髪はよく乾かさないと蒸れてしまう事も忘れ、傍に置いていた携帯を手にする。

 本名では登録していない彼からの着信。毎晩、だいたいこの時間に届く事はわかっている。メッセージを読んだら削除する。それが彼との約束だ。

 書かれているのは、熱烈な愛のメッセージ。少年らしいストレートな表現。「愛しています」面と向かったら言えない事も、文字だと大胆になってしまう。ただ、後で読み返すと恥ずかしい。だから削除してほしくなる。

 でも、もう一つの理由が占める割合の方が大きい。二人の恋は禁断の恋。誰にも知られるわけにはいかない。だからこそ、削除しないといけないのだ。

 長文を読み終わり、みずえは余韻に浸る。再び髪を乾かしては、もう一度メッセージを読み返す。それを何度も繰り返した後に、覚悟を決めて削除する。今日もみずえは、眠れない夜を過ごすのである。

 みずえは、小さな顔に不似合いな大きなサングラスと大きなマスク、さらには大きなつば広の帽子を目深にかぶって店内に入った。芸能人がお忍びで来たのかと思わせるような恰好で恥ずかしかったが、誰かに見られる怖さの方が勝っていた。

「予約しておりませんが、よろしいでしょうか……」

 消え入りそうな弱々しい声。生身の人間なのかと確認するが、確かにこの世の人である。零美には、彼女の悩みの深さが感じられた。

「あっ、構いませんよ。ど、どうぞ、ご遠慮なくお入りください……」

 つい、相手に合わせてしまう。共感性の強い零美は、相手の想いが瞬時に飛び込んでくる。まるでコピー機で複写されるように。それが良い事なのか悪い事なのか。不自由な運命に翻弄されながらも、与えられた命を全うするしかない。

「先生のお噂を人づてに聞きました。人にはあまり知られたくない内容ですから、こんなおかしな恰好で来ました。すいません……」
「いえいえ、大丈夫です、秘密厳守ですからご心配なく。それに、私は忘れっぽいので、聞いてもすぐに忘れてしまいます」

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忘れっぽいのは本当である。

 それが良い時もあるし、悪い時もある。しかし、あまりに強烈な内容は、忘れられなくて苦労している。

「霊視をしてくださると聞きました。名前や生年月日を明かしたくないので、この写真を見てください」

 みずえは二枚の写真を出した。一枚は自分の写真だろう。癒し系の美人である。もう一枚は、学生服を着た男子が写っている。

「えーっと……、この子は?」
「私が勤める学校の生徒です。今、高校三年生です」

 この人は高校教師だと今知った。

「ところで、どのようなご相談ですか?」

 彼女と彼は、ただの教師と生徒の関係ではない事は察しがつく。きっと言いたくはないだろう。しかし、その関係を聞かなければ鑑定は始まらない。

「彼は吹奏楽部で、私は吹奏楽部の顧問をしています。先日、彼から好きだと告白されました。私と彼は、十歳も離れています。でも、心がときめいてしまって……」

 頬に手を当て、恥ずかしそうな仕草をする。しかし、サングラスとマスクで顔は覆われて、表情まではよくわからない。

「あなたも、彼の事を好きなんですか?」
「……は、はい。実は私、父から暴力を受けて育ちました。そのせいで、男性に対して恐怖心があります。でも彼は優しくて、先生先生と慕ってくれて……」

 彼の写真をよく見ると、アイドルグループにでもいそうな可愛らしい男の子である。

「実はこの子も、家庭環境が複雑なんです。父親のDVで母親が離婚、今は母子家庭です。母親想いで優しい子なんです」
「確かに、この写真からもその優しさが伝わります。そしてまた、寂しいという感情も伝わってきますね……」

写真の彼は笑っている。しかし零美には、無理をしているように感じられた。

「彼も、あなたと一緒にいると心が休まるのでしょう」
「そう言ってくれます」

 ここで零美は、聞きづらい事を聞かずにはいられなかった。

「えーっと、大変立ち入った事を聞きますが、彼とはどこまでの関係……ですか?」
「あっ、それはあの……体の関係の事ですか?」
「まあ……」
「生徒と先生ですから、さすがにそこまではありません」
「あの……キスは?」
「彼は真面目で頭も良い生徒です。将来は一流企業に入って、早く母親を楽にさせたいと言っています。そんな彼に問題を起こさせるわけにはいきません」
「でも高校生なら、そういう欲求も強いのではないでしょうか?」

 彼女の言う事を信じたい。しかし、本当の事を聞かないといけない。

「確かに、中高生の男子にはそういう子が多いです。でも彼は、自分の将来と私の立場を守るために我慢しています」
「それは素晴らしい。ではお聞きしますが、あなたは彼とどうなりたいのですか?」
「彼と私は年齢差があり過ぎます。彼が大学生になれば、同世代の女の子と知り合う機会も増えるでしょう。もうすぐ三十になろうというおばさんより、若くて綺麗な子に巡り合うチャンスだってあります。私なんかと付き合って、そのチャンスを逃すのは……」
「ですが、あなたの本音は、優しい彼を逃したくないのでは?」

 痛い所を突いた。しかし、彼女に自分の本音を出してほしい。そんな思いからだった。

「……はい、そうです。こんな私に、彼のような男性が今後現れる保障はありません。つなぎとめておきたいのが本音です……」

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そう言ってみずえは、ハンカチをバッグから取り出した。

 涙が頬を伝う。拭っても拭っても、涙は流れる。

 真剣な心の叫びが痛いほど伝わる。自分の立場、そして彼の将来。頭ではわかっている。でも、心では彼を放したくない。女の性だ。

「本音で話してくださり、ありがとうございます。私も真剣に、思いを伝えます。あなたと彼の関係性はとても良いです。パートナーになれば、うまくいくでしょう。心と心が深く結びついています。

 しかしそれだけに……、深入りすればするほど、抜け出せなくなります。深く結びついてしまえば、離れたくても離れられなくなるのです」

 心を落ち着かせようと、零美は目の前のコーヒーを口にした。

「残念ですが、二人の関係性がどれだけ良かったとしても、周りの人が祝福してくれなければ幸せにはなれません。あなたのご両親、彼のお母さん、親族の方々が、果たして二人を理解してくれるでしょうか?

 あなたも彼もとてもナイーブで、傷つきやすいです。深く結びついてから引き裂かれるのは、きっと傷つく事になります。彼のためにも、あなた自身のためにも、深い関係になる前に距離をとるのはいかがでしょうか?

 彼は受験生です。もし志望の大学に入れなかったら、あなたは自分のせいだとご自身を責めるでしょう」
「それは本当に困ります。私のせいで彼の未来を壊すなんて……」
「人の人生には、環境が大きく関わってくるものです。どんなに相性が良くても、環境のせいで一緒になれないカップルは大勢います」

 彼女は彼と別れる覚悟を決め、礼を言って帰っていった。彼女を見送りながら、零美は自分の回答を振り返る。果たして、あの答えは正解だったのだろうか?もっと違う導き方があったのではないだろうか? 
 愛だけでは生きられない。人の世の不条理さを感じる出会いだった。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/27/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第2話 胸に秘めた水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第3話 登校拒否の娘を何とかしたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第4話 懐かしい母の温もり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第50話 丑の刻参り」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第51話 彼の告白を待つ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第52話 過去が思い出せない」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第54話 息子に店を継がせたい」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第57話 鏡が嫌いになった理由」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第62話 鑑定は相談者を産みかえる作業」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第65話 人気女優と俳優の恋愛」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第66話 会社を辞めて彼がしたい事」

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