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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

投稿日:2019年12月17日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第28話 彼女が本当にやりたい事

「さつき、おはよう!」

 教室に入った森田さつきが声のする方を見遣ると、親友の羽鎌田みのりが手を振っている。みのりの席は、窓際の一番後ろ。廊下側の一番前に座るさつきからは一番遠い距離になるが、休み時間の二人はいつも一緒になる。カバンを置き、さつきはみのりの席に移動した。

「ゆうべ書いた小説、読んでみて」
「うん」

 みのりに手渡されたノートを受け取り、立ったまま読む。高校生の女子が片想いの男子に思いを告げる場面だった。実際の二人は女子高に通っている。

 現実には経験していない恋愛を想像しながら書いているみのり。それを読むさつきも、自分ならどうだろうと想像しながら読む。読み終えたさつきに、みのりが声をかける。

「主人公の瑞希と真也、描いてみてくれる?」
「私の感じたイメージで良い?」
「良いよ」

 さつきはノートを預かって席に戻った。授業を受けながらも、瑞希と真也の顔を考える。先生に見つからないよう、ノートの端に描く。校舎の裏に呼び出した真也に、瑞希が告白する場面。恥ずかしくて、まともに真也の顔が見れない瑞希を描いてみた。

 休み時間の度に、みのりが見に来る。「すごい」「そうそう」「切ないね」見たままの感想を言葉にするみのり。さつきにはその反応が嬉しい。絵を描いている時が一番楽しくて、それを人に褒めてもらうのがさつきの生き甲斐になっている。

 いつか絵を描く事を仕事にしたい。それがさつきの小さい頃からの夢だった。しかし、そう簡単にはいかない事情がある。さつきの頭に、自分が果たせなかった夢を娘に託す母親の顔が浮かんでくる。

 日曜日の午後、さつきは母親の和枝と共に零美の店にやってきた。長い髪を腰まで延ばし、高そうなブランドの服に身を包んださつき。零美は、さつきの沈んだ顔が気になって仕方がなかった。

「ご予約を頂いた森田さんですね」
「はい、こちらが娘のさつきです。どうぞよろしくお願いします」

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母親の後ろにいたさつきは、強張った顔のまま、小さくお辞儀をした。

「森田さんの気になる事は何でしょうか?」
「娘のさつきの事です。どうでしょう、この子は女優になれますか?」

 和枝の自慢は、娘が容姿端麗である事。元々和枝は、女優になりたいという夢があった。しかし、親に反対されて夢を諦めてしまう。自分が果たせなかった夢を娘に託したい。小さい頃から、さつきには女優になれと言い続けてきた。

「では今から、さつきさんの命式を出します」

 さつきの生年月日を入力して命式を出すと、プリントアウトした紙をテーブルに置いた。

「おっしゃる通り、さつきさんは演者としての才能があります。豊かな感性と高い芸術性は天性のもので、表現力も人並み外れています」
「やっぱりそうですよね。良かったわね、さつきちゃん」

 ニコニコと話す和枝とは対照的に、さつきは下を向いたまま黙っている。零美は彼女の様子が気になり、やさしく話しかけた。

「あのう、さつきさんは女優になりたいと思っていますか?」

 声をかけられたさつきはびくっと肩をすくめ、下を向いたまま言葉を発しない。

「先生が聞いていらっしゃるんだから、お答えしなきゃだめよ」

 和枝は娘の反応に苛立つが、感情を抑えて諭すように叱る。しかしさつきは黙ったまま。零美には、さつきがかたくなに心を閉ざしているように感じられた。

「さつきさんは本当に、女優になりたいのでしょうか?」
「本当ですよ。小さい頃からこの子は、女優になるのが夢だったんですから」

 零美の言葉に、和枝の口調がより強くなる。

「でも、私にはどうしてもそうは見えません。本当は、女優ではなく他の夢があると思うのですが」
「そんな事ありません。この子は私の娘です。この子の事は私が一番よく知っています。小さい頃から可愛い可愛いと近所でも評判で、皆さん口を揃えて『将来は女優になったらいい』とおっしゃいます。この子は女優になるために生まれてきたんです。何を言うんですか」

 感情むき出しの母親に対し、娘は黙ったまま。二人の間には大きな溝がある。

「確かに、女優としての素質はあります。ですが、ご本人が女優になりたいかどうかは別です。見た目も美しいさつきさんは、確かに女優になれるでしょう。さつきさん自身、お母様の夢を叶えてあげたいと思うでしょう。でも、本当の夢は違うと私には感じますが、いかがですか?」
「そんな事は……。じゃあ、さつきに聞いてみてください」

 いかにも不機嫌そうな口調に閉口気味の零美。しかし、さつきをこのまま放っておく事は出来ない。

「私から提案したいのですが、さつきさんと二人だけでお話させてもらえませんか? お母様には言いづらい事があるようですから。私が責任を持って聞きます。ですからどうか」

零美は頭を下げ続けた。

「……わかりました。私は外に出ますから、娘とゆっくりお話してください。それで、終わったら私に電話していただけますか?」
「はい、ありがとうございます」

 和枝は、娘を残して店を出た。さつきは、下を向いて黙ったまま。零美はさつきの横に座り、彼女の手を握って話し始めた。

「お母さんはいないから、あなたが心の中で思っている事を全部私にぶつけて。今までお母さんに言えなかった事、あなたが本当になりたいと思っている夢を教えて。あなたはお母さんの言う通りに生きなくて良いの。あなたはお母さんの操り人形じゃないの。あなたの人生はあなたのものなんだから」

 怯えるさつきの手を握り、ゆっくりと優しい口調で語りかけた。下を向いたまま震えている十六歳の少女を、母親の重圧が押しつぶそうとしている。壊れてしまいそうなガラスの心を包み込むように、肩を優しく抱き寄せた。しばらくそうしていると、彼女は本音を打ち明け始めた。

「私……絵を描くのが好きなんです」

 絞り出すようなか細い声で、小さな胸に秘められた思いが外に出された。

「あー、絵ね。あなた、絵を描くのが好きなのね」

 下を向いたまま小さく頷く。カバンからタブレットを取り出すと、自作のイラストを見せた。

「あら、すごい! 本当にこれ、あなたが描いたの?」
「は、はい……」
「すごいわ、プロみたい。お母さんに見せた事はあるの?」
「見せた事はありません」
「お母さん、あなたには女優になってもらいたいんだものね。お母さんの事を考えたら、なかなか言える事じゃないわ」

 零美の言葉に黙って頷く。

「大学はそうすると、美術大学に行きたいんじゃないかしら?」
「そうです」
「それならそうと、はっきりお母さんに言いましょう。あなたには絵の才能があるわ。この絵を見せたら、絶対お母さんも納得するはず。私が応援するから、お母さんにはっきり言いましょう」
「はい。はっきり言います」

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ようやくさつきは顔を上げて、にこっと笑った。

 零美は彼女の携帯を借り、母親に電話をかけた。しばらくして帰ってきた和枝に、零美は興奮して言った。

「お母様。これを、これを是非、ご覧になってください」

 興奮を抑えきれないまま、タブレットのイラストを和枝に見せた。写真のように精微な絵。思わず和枝は「まあ!」と声をあげた。

「こ、これ、本当にさつきちゃんが描いたの?」

 恥ずかしそうにさつきは、黙って頷いた。

「す、すごい! ねえ先生、すごいですよね?」
「はい、本当にすごいです。高校生でこんな絵が描けるなんて、素晴らしい才能ですよ。確かにさつきさんは、類い稀な美少女で、その美しさは誰もが認めるものです。でも、芸能界は美しいだけでは成功できなません。足を引っ張りあい、妬みや嫉妬の感情が渦巻く世界です。

 そんな世界で生き残れるのは、かなり精神的に強い人です。でもさつきさんは、感受性が強すぎて精神的に傷つきやすい方です。だからこそ、こんなに細かくていねいな描写が出来ると言えますが……。

 さつきさんは、美術大学への進学を希望しています。この才能は日本の宝であり、世界の宝です。是非、さつきさんの願いを叶えていただきたいのです」

 さつきの真剣な思いを胸に抱きながら、零美は和枝に必死に頼んだ。そして、さつきも一緒に頭を下げていた。

「先生、どうか頭を上げてください。実は私も、この子の絵の才能は知っていました。学校でいくつも賞をもらいましたし、小さい頃から絵が好きで、毎日飽きずに描いていました。だけど、こんなにすごい才能だったなんて……。想像をはるかに超えたものでした。

 この子は、言葉でうまく表現が出来ない子なんです。ですから、女優になるのは難しいかなと思っていたんですが……」
「人は誰でも、自分の内面を表現したいものです。それぞれ得意な表現方法が違い、言葉だったり、歌だったり、楽器だったり、文章などで表現します。さつきさんの場合、絵で表現するわけです。

 有名な画家の絵は何十億もします。それだけのお金を払っても手元に置きたいのです。さつきさんは間違いなく、人々を感動させる絵が描けます。彼女の願い、是非叶えてあげてください。お願いします」

 にっこりと笑って頷いた和枝は、さつきの肩を優しく抱き寄せた。鑑定料を支払った後、深々とお辞儀をして帰っていく二人を見送る零美の頭には、さつきの描いた大きな絵がギャラリーで飾られる光景が広がっていた。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/28/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第2話 胸に秘めた水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第3話 登校拒否の娘を何とかしたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第4話 懐かしい母の温もり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第9話 水は何色にも染まる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第10話 次期院長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第13話 老後のための熟年婚活」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第49話 産みの親に会うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第50話 丑の刻参り」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第51話 彼の告白を待つ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第52話 過去が思い出せない」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第53話 別れさせるのが仕事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第54話 息子に店を継がせたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第55話 選ばれない人生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第56話 交通事故で助かった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第57話 鏡が嫌いになった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第58話 彼が死ななかった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第59話 男女が付き合うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第60話 未来を予言する」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第61話 彼女がコミュ障になった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第62話 鑑定は相談者を産みかえる作業」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第63話 亡き夫の願い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第64話 夢で殺される理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第65話 人気女優と俳優の恋愛」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第66話 会社を辞めて彼がしたい事」

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