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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

投稿日:2019年12月18日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第32話 訪ねてきた懐かしい同級生

 中学三年の夏、和彦は一人で病院にやってきた。風邪以外、病気らしい病気をした事がない彼にとって、病院はあまり縁がない場所だ。受付で見舞いに来た旨を言い、病室を案内してもらう。

 階段を上って三階に向かう。若者は階段を使うべき。彼はそんなこだわりを持っている。三階の一番奥に、目的の病室がある。途中にあるいくつかの大部屋を通り抜けた先に、彼女が入院している個室があった。

 病室の前には「水谷裕美」の名前が書かれている。ここだ。右手に持っていた花束を、紙袋を持つ左手に持ち替える。ふーっと一息吐いてから、コンコンとドアをノックした。

「どうぞ」という声を受けてドアを開けた和彦は、「久しぶりだね」と笑う彼女に迎えられた。思っていたより元気そうで、和彦はひとまず安心した。窓の向こうには、暑そうな青空が見えた。

「和彦さーん!」久し振りに聞く零美の大きな声。少し驚きながら、和彦は机に向かって作業していた手を止めた。「はーい」と返事をした後で、書きかけの小説を保存する。せっかくここまで書いたのだから、保存を忘れてはいけない。

 一寸先は闇、何が起こるかわからない。何度も苦い経験をしてきた和彦は、二度目の保存をする。店の方に出てみると、零美が和彦に問いかけてきた。

「和彦さんは、中学時代の同級生で水谷裕美さんを覚えているかしら?」
「えっ、水谷さん? 水谷さんってあの、ミステリー研究会にいた水谷さんの事かなあ……」

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和彦の表情を確認した零美は、彼にくるりと背を向けた後に、何やら独り言を言い始めた。

 そして再び振り返ると、「そうですだって」と言った。「そうですって、何がそうですなの?」何が何だかわからないといった顔の和彦。「だよね」と言って笑う零美。

「ごめんごめん。実はその水谷裕美さんが、こちらにいらしてるのよ」
「こちらにって言っても……どちらに?」

 彼女が延ばす右手の先には、ただ空間が広がっているだけ。自分には見えないが、零美には視えるその人が、おそらくそこにいるのだろう。

「こちらの水谷さん、もう亡くなっていらっしゃるの。長らく病気を患っていたみたいで」
「水谷さんと言えば……」

 和彦は記憶を辿ってみる。彼女は、心臓の持病があると聞いた覚えがある。入退院を繰り返していたため、学校も休みがちだったような気がする。

「その水谷さんが何故、ここに来ているんだい?」

 素朴な疑問である。中学卒業以来、彼女とは連絡もとっていなかった。どうして今頃になって、ひょっこり現れたのか。それが不思議で仕方なかった。

「あなたにお礼が言いたかったんですって」
「僕にお礼? 彼女に何か、お礼を言われる事なんてしたかなあ……」

 思い出そうとするが、遠い昔の中学時代の事、とっくに忘れてしまっている。

「とりあえず、座ったらどう? 積もる話もあるでしょうから」

積もる話と言われても、どう会話しろと言うんだ。

 心の中でそう思ったが、言われた通り零美の隣に座ることにした。

「水谷さんは、人生の大半が病院のベッドの上だったの。それが最近、不自由な肉体から抜け出すことができて、やっとあなたを訪ねて来られたそうよ」
「そうかあ。死ぬって言うと嫌な事みたいだけど、体の不自由な人は肉体がない方が楽なんだよね」

 和彦には、実際に水谷裕美の霊がそこにいるのかどうかわからない。しかし、零美の言う事には妙に納得出来た。

「小笠原康介警部という名前に覚えはない?」
「小笠原康介警部? その名前、どうして君が知っているの?」
「彼女が教えてくれたのよ」

 小笠原康介警部とは、和彦が中学時代に書いた推理小説の主人公の名前だ。初めて書いた小説「小笠原警部の捜査事件簿」に登場するキャラクターだが、零美が知っているはずはない。和彦は、その小説を失くしていたのだから。

「あの小説、どこにいったのか見つからないんだ」
「それがね、水谷さんが持っていたそうよ。あなたが彼女にあげたの、覚えてない?」

 和彦は、おぼろげにしか覚えていない記憶を辿ってみる。彼女とは確か、一年の時にクラスが一緒で、同じミステリー研究会だった。時々入院していた彼女に、何か読み物でもと思い、小説を貸してあげた記憶がある。

 しかしその中に、自分が書いたものも含まれていたのか。そうだとしたら、ちょっと恥ずかしい。内容は忘れたが、とんでもない駄作だったに違いない。和彦はそう思った。

「あなた、覚えていないの?」と零美に言われて「申し訳ない」と頭をかく。零美が話しかける彼女がいるはずの空間を見るが、霊感のない和彦には全く見えない。そこで、中学時代の彼女の顔を思い出して当てはめてみる。

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零美が視ている、三十を過ぎた彼女の顔を見てみたい。

 目の前の彼女には、年齢を重ねた自分の顔が見えているはず。それがちょっと悔しい。

「水谷さんね、あなたが書いた小説を何度も繰り返して読んでいたの。あなたが考えた小笠原警部さん、優しい人だったみたいね。彼の語る言葉にとても励まされたそうよ。奥さんが病気で入院していた小笠原警部は、よく病院に見舞いに行っては奥さんを笑わせていたって」

 そう言われて、小説の内容が少しずつはっきりと思い出されてきた。小笠原警部は「罪を憎んで人を憎まず」だった。犯人に自白させた後、自ら捕まえずに自首させる。トリックと言うほどのものはない。登場人物たちの背負っている背景に焦点を置いていた。

 それはきっと、病気と闘う彼女への励ましの意味があったのだろう。思春期の甘酸っぱい恋心のようなものかも知れないと、和彦には思えた。

「その小説、君がずっと持っていてくれたのか。今思うと、君は僕の最初の読者だったし、ファンだったよね。君を喜ばせるために、僕は一生懸命書いていたんだろう。僕がこうして小説家になれたのは、君のお陰だよ。本当にありがとう」

 和彦には見えないが、彼女がいるはずの空間に向かって頭を下げた。彼の両目から、つーっと一筋の涙が流れている。何とも言えない温かさを胸の中で感じ、和彦は嬉しかった。

「良かったね」と、零美が背中を撫でる。彼女のお陰で、自分の小説の原点を思い出す事が出来た。素直にありがとうと言いたい。そんな思いと同時に、ある事が気になり始めた和彦は、涙を拭って顔をあげた。

「ところでその小説だけど、今はどこにあるんだろう? もう一度読んでみたいよ」

 その疑問には、通訳者である零美が答えてくれた。

「水谷さんね、亡くなる前にその小説を編集部宛てに送ったそうよ。そろそろ担当の小森さんから電話があるはずだって言っているわ」

 その言葉が終わるや否や、和彦の携帯が鳴り響いた。電話の相手は担当編集者の小森氏。編集部に小包が届いていると教えてくれた。

「水谷さん、ありがとう。わざわざ送ってくれたのか……。本当に、ありがとう……」

 和彦は涙腺が弱い。笑いながら泣いている。彼女の分まで一生懸命に生きていこう。和彦はそう思った。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/32/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第2話 胸に秘めた水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第3話 登校拒否の娘を何とかしたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第4話 懐かしい母の温もり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第9話 水は何色にも染まる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第10話 次期院長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第13話 老後のための熟年婚活」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第70話 気になる義母」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第71話 脳を騙す」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第72話 涙で膨らんだ水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第73話 許せない父親」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第74話 モテたいけれど」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第75話 いつも来る常連の彼女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第76話 口が悪いけど可愛い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第77話 いつ死ぬのか知りたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第78話 彼女を覚えていない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第79話 あの人の生まれ変わり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第80話 彼女が気になる三人の男」

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