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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

投稿日:2019年12月19日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第35話 三つ目のコーヒーカップ

「風間響子さん、ようこそ」
「えっ?」
「風間さんは双子なんですね」
「は、はい……」

 風間響子は驚いた。さすが、噂通りだと思った。

「さすが噂通りの先生です。まだ何も言っていないのに、よく名前や私が双子だってわかりましたね」
「それはもう、一目見ればわかりますよ。こちらへどうぞ」

 響子は零美に促され、ソファーに座る。

「妹さんの事で来られたんですよね」
「ど、どうして……」

 響子の開いた口が塞がらない。体も硬直したまま動かない。

「そこまでわかるんですか? 先生、あなたはどこまで凄い方なんですか?」

 もうこれは、噂以上の能力だ。響子の背筋が少し冷たくなった。

「亡くなられた妹さん……。彼女の気持ちが知りたいと……」
「はい……」

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響子は俯いて、バッグから取り出したハンカチで目を覆う仕草をした。

「お飲み物は、ホットコーヒーでよろしいですか?」
「はい、ありがとうございます」

 零美はカウンターに入ると、コーヒーを淹れてカップを三つ持って戻ってきた。三つのカップのうち、一つは彼女の前に、一つは彼女の隣に、そしてもう一つを自分の前に置いた。

「どうして三つあるんですか?」と不思議そうに尋ねる彼女に、零美は「妹さんにも……」と言って両目を両手で覆った。亡くなった妹のために用意してくれる、なんて優しい人だろうと響子は感動した。

「私と妹の静子は、小さい頃から仲が良く、いつも二人で行動していました。食べ物の好み、洋服の好み、好きなアイドルなども、全く同じでした。たとえ二人の距離が離れていても、私がお腹が痛い時には静子のお腹も痛かったし、学校ではクラスが違うのに、授業中にトイレでばったり会う事もありました。

 男性の好みが一緒だったので、どうしても同じ人を好きになってしまいました。ある時、最初にデートを申し込まれたのが静子でした。二人は付き合うようになったのですが、たまに静子が用事がある時は、私が静子の身代わりになってデートしたりしました。彼は私たちが双子だと知らなかったので、最初は全く気づかなかったそうです。

 彼と静子が結婚する事になり、家に挨拶に来た時に初めて、私たちが双子だとわかって驚いていました。その後二人は結婚し、幸せに暮らしていたのですが、静子が突然交通事故で亡くなってしまったのです……」

 言葉に詰まった響子は下を向き、嗚咽が漏れないようにハンカチで口を抑えた。話を聞いていた零美も、思わずもらい泣きをしていた。しばらくして落ち着きを取り戻した響子が、零美にこう尋ねた。

「今日知りたいのは、妹が天国に行けたかどうかで……。突然の交通事故だったので、この世に未練を残して彷徨っているのではないかと思いまして……」

そう尋ねる響子に、零美は静かに答えた。

「妹の静子さんは、この世に未練を残しています」
「えっ、本当ですか?」

 意外な言葉だったので、つい驚いてしまった。響子としては「大丈夫です。天国に行っています」と言う答えが返ってくると思い込んでいたからだ。

「では、妹は天国には行っていない、そういうわけですね?」
「そうです」
「天国ではないとしたら、妹はどこを彷徨っているのでしょうか?」
「あなたの近くにいらっしゃいます」
「えっ?」

 思ってもいない言葉だった。一瞬身震いをした響子。辺りをキョロキョロと見回す。

「えっ? どこにですか? 先生には妹が視えるんですか?」
「はい、私には妹さんが視えます」
「どこに、どこにいるんですか?」
「ほら、あなたの隣に座っていますよ」
「……」

 その言葉に凍りついた響子。静止したまま、声も出ない。その時間は数分続いた。ようやく彼女は左隣りを見るが、そこには何もない。ただ空間があるだけだ。

 テーブルに置かれたもう一つのコーヒーカップ。それが響子の視界に入ると、風もないのにカップの中のコーヒーが波を立てている。続いて、右回りにぐるぐると回り始めた。

 響子と零美のカップを見ても、何の動きもない。ただ、隣に置かれたカップのコーヒーだけが動いているのだ。響子は恐る恐る、零美に尋ねてみる。

「あの、先生……。妹は……静子は私の事、怒っていますか?」

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響子の質問に、零美は黙って頷いた後、彼女にこう言った。

「理由はもちろん、お分かりですよね響子さん」

 落ち着いた低い声。この人は真相を全て知っている。響子の心臓がきゅーっと縮む。

「響子さん、あなたが殺しましたね」

 言葉が出ず、体も動かない。冷たい視線が、響子の体を突き通しているかのようだ。

「あなたがこの店に入った時から、あなたの隣にいらっしゃったんです。全身ずぶ濡れで血だらけになった静子さんが……」
「静子……」
「雨の降る夜でした。あなたに足を引っ掛けられ、よろけてしまった彼女は道路に飛び出てしまい、大型トラックに轢かれてしまいました……。即死でした」

 響子の脳裏にフラッシュバックする。二度と思い出したくなかった光景が。

「あなたの隣にいる静子さんは、手足が変な方向に捻じれてしまっています。さきほどからずっと、あなたの顔を睨んでいました」

 真っすぐ前を向いたままの響子の頬に、冷たい静子の視線が突き刺さる。静子の体は視えないが、響子の頬に冷たいものが感じられた。

「あなたは、静子さんの夫と不倫していました。そして、静子さんがいなくなれば彼と一緒になれると思ったのです……」
「い、嫌……。やめてーーーーーー!」

 絶叫と共に立ち上がった響子。脱兎の如く駆け出し、入り口のドアを開けた。そのまま脇目も降らずに走り続けた響子は、交差点で大型トラックに撥ねられた。通行人の「きゃーーーーー!」という悲鳴が、空中を引き裂いた。

 彼女を追いかけてきた零美は、彼女がもう息をしていないと確信した。呆然と立ち尽くす零美。その隣に、何も言わずに笑みを浮かべる静子がいた。

 零美は静子に一礼をすると、黙って合掌をした。通行人が救急車を呼んだ事を確認すると、ゆっくりとその場を立ち去った。ふっと振り返ると、静子の姿はどこにも視えなくなっていた。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/35/】

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第80話 彼女が気になる三人の男」

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