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心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

投稿日:2019年12月19日 更新日:

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第36話 逆らえない上司」

「小説家になろう」に投稿している私の小説を皆さんに紹介させていただきます。
【あらすじ】
 心霊鑑定士の加賀美零美(かがみれみ)は、四柱推命と霊視を駆使して悩める人々の相談に乗っている。恋愛の悩み、仕事や人間関係の悩みなど、人それぞれ様々な悩みを抱えている。
 霊感の強い彼女は、死んだ人の姿を視(み)ることができ、会話もすることができるため、時には死んだ人が訪ねてくることもある。
 相談者の心に寄り添いたいと願う彼女だったが、零美自身の心も悲しみで溢れていた。果たして彼女は、相談者の心を癒し、自分自身も癒すことが出来るのだろうか。
(これは、前作「心霊鑑定士 加賀美零美のよろずお悩み解決所 1」の各話を改稿したものです)

第36話 逆らえない上司

 大きな体に短髪の広崎勉は、その体格に似合わずおどおどしている。店のドアを開けると「あの、予約していた広崎です……」と消え入るような声を出した。

「どうも広崎さん、お待ちしていました。中にお入りください」と零美に促された彼は、「失礼します」と言い、背中を丸めて遠慮がちに入ってきた。

 零美は「広崎さんのお悩みは何でしょうか?」と言いながら、紙とボールペンを用意した。彼は重い口を開き、「あの……。実は、職場の上司の事で相談が……」と言った。頭や口に手をやりながら、視線を泳がせる彼の額には汗が滲んでいる。

「詳しい事は言えませんが、私はとある大学の職員をしております。とある運動部の学生たちを指導するコーチという立場なのですが、私の上司になる運動部の監督との関係に悩んでいるのです」
「監督が上司で、あなたが部下になるわけですね」
「そうです。私は、監督の指示を学生たちに伝える役目になります。それがあまりにもひどい指示で、それを学生に伝える事に内心とても葛藤しておりまして……」
「それはたとえば、どんな内容なのでしょうか?」
「そ、それは……私の口からは……」

 そう言って彼は、黙り込んでしまった。その表情で、彼の気持ちは充分に推察できる。

「はい、わかりました。それではこの紙に、あなたと上司の名前……いや、上司の名前は必要ありません。Aさんにしておきましょう。生年月日だけ書いていただけますか?」

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少し安心した彼は黙って頷くと、言われた通りに紙に書いて渡した。

 それをパソコンに入力した零美は、二人の命式を出して彼の前に並べた。

「まず、広崎さんについてです。あなたは、争いを好まず和を大事にしたい人です。組織やチームを大事に考えるタイプで、体育会系の縦社会の構図にはあまり疑問を持たないのではないかなと思います。上からの指示は絶対だと考える感じですかね」
「確かに、チームの勝利が絶対ですから、自分の考えは持たないようにしています」
「次にこちらの監督さんです。この人は割と、感受性が鋭い人です。言葉で話さなくても相手の考えがわかるので、相手に対しても『これぐらいは察して』と要求すると言うか、あまりコミュニケーションは得意ではありませんね。『言わなくてもわかるだろう』と思ってしまい、言葉が足りなくなると言うか……」
「そうですね。あまり口数が多い人ではないので、こっちが意図を汲んで行動する事が多いです。特に学生には、よほど大事な時にしか話をしません」
「ある意味、人を信用しすぎるタイプです。『これぐらい許される』とか『俺に逆らう奴はいない』とか。人を疑わない、純粋な人と言えますが、悪く言えば無責任で、誰かが責任を取ってくれるだろうという考え方です。

 上に立つ人は『責任は俺が取るから安心しろ』という態度であるべきだと思いますが、この人にはそれは難しいかも知れません」
「まあ、責任を取るタイプではないかも知れません……」
「こういう人の下にいると、かなりストレスが溜まるのではないでしょうか?」

零美には、彼が相当のストレスを抱えている事はわかっていたし、広崎もまた力なく「はい……」とだけ答えた。

「広崎さんはもう、限界に来ているように感じられます。本音としてはいかがでしょうか?」

 普段は聞かない優しい言葉をかけられた彼は、体を震わせて「実は……」と切り出した。

「監督から、今度の試合で学生に反則行為をさせるように命じられているんです……」
「反則行為とは、どんな?」
「それは……」

 広崎は口をもごもごとさせている。言いたくはないのだろう。無理に言わなくても良いですよと言おうとしたら、彼の口が開いた。

「相手の中心選手を潰してケガをさせろ……と……」

 そう言った彼は、下を向いたまま体をぶるぶると震わせている。それがどれほど恐ろしい事なのか、彼の表情が物語っていた。

「そんな事したら、もし当たり所が悪ければ死ぬ可能性だってあるんじゃないですか?」

 少し興奮気味に話す零美の言葉に、彼は下を向いたまま、黙って小さく頷くだけだった。

「もしもその人に大ケガを負わせてしまったら、どうやって責任を取るんですか!」

 興奮して声が大きくなった零美は、我に返ると「すいません」と小声で謝った。

「この監督、責任取れるんでしょうか? いざとなったら、選手やコーチのせいにするんじゃありませんか?」
「……」
「これ、今回が初めてじゃないんでしょ?」
「……」
「今までだって、何回もやってきた事なんでしょ?」
「……」
「その度に、やった選手の責任にして、自分たちは知らん顔してきたんじゃないですか?」

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 ここでこの人を責めても仕方がないし、責められるべきは監督である。この人は、監督の指示を選手に知らせる伝達係にすぎない。

 もし拒否をすれば自分がクビになり、次の人がその役目を果たすだけなのだ。何とも理不尽な世界だと零美は思った

「その監督には誰も、物申す事は出来ないという事ですよね?」

 大きな体を丸めたまま、彼は黙って小さく頷いた。

「それなら、大きな事故が起こる前に、あなたはその監督から離れるべきだと思います。今の仕事を辞める事は出来ないんですか?」
「辞めろと言われても、今の私には出来ません……。私はただ黙って、監督の命令に従うしかないんです……」

 両手の拳を力強く握りしめた彼は、骨が軋むほど悔しがった。零美には、そんな彼の事情を察してあげる事ぐらいしか出来ない。

「仕事を辞める事も出来ないし、選手にやれと言う事も出来ないとは……。申し訳ありませんが、私には、今の仕事を辞めた方が良いとしか言えません。もしも相手が大きな怪我でもしたら、指示を伝えたあなたの責任は免れませんよ」

 あえて冷たく突き放す言葉しか言えない。少しでも危険性があるのなら、そこに居てはいけないのだ。危険な場所からは、すぐに逃げなければいけないのである。

 彼は立ち上がると、何も言わずに力なく帰っていった。その後ろ姿が不憫で仕方ない。彼が立ち去った後も、店内には重くどんよりとした空気が充満していた。

 それから何週間か過ぎて、テレビのニュースを見た零美は愕然とした。そこには、監督と共に多くの取材陣に囲まれた彼の姿があった。結局、悪い予感は的中し、最悪の結果になった。

 すでに被害者側は、被害届を警察に提出していた。多くのフラッシュを浴び、しどろもどろに会見をする彼。彼を見つめる零美の瞳からは、大粒の涙が零れていた。

【出典:https://ncode.syosetu.com/n0235fd/36/】

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第1話 別れたくても別れられない女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第2話 胸に秘めた水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第3話 登校拒否の娘を何とかしたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第4話 懐かしい母の温もり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第5話 不倫女の心の痛み」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第6話 彼女が別れを切り出した理由とは」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第7話 相性の悪い相談者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第8話 血だらけの訪問者」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第9話 水は何色にも染まる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第10話 次期院長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第11話 憑りつく霊たちの事情」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第12話 志保と零美の関係」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第13話 老後のための熟年婚活」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第14話 次期社長の嫁取り問題」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第15話 父母代わりの人に愛されるということ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第16話 息子に降りかかった災難」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第17話 真面目な彼が好き」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第18話 母になるために」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第19話 告白されてわかったこと」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第20話 不倫で授かった命」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第21話 占いは自分を好きになるためのもの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第22話 人はイメージで変わる」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第23話 孤独になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第24話 子どもを連れた再婚」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第25話 課長への片想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第26話 夢に出る母の想い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第27話 誰にも言えない恋」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第28話 彼女が本当にやりたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第29話 帰ってきてくれるだけで良い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第30話 女優のすすめ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第31話 プロポーズしてくれない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第32話 訪ねてきた懐かしい同級生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第33話 彼女が運が悪いと思う理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第34話 驚きの転身」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第35話 三つ目のコーヒーカップ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第37話 息苦しくて生きづらい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第38話 夫に帰ってきてほしい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第39話 漫画家になりたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第40話 どっちが良いの」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第41話 離れていても親子」」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第42話 父親からの縁談」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第43話 もしかして運命の人かも」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第44話 結婚式の前日に」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第45話 自分で自分を誉める」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第46話 信じる自由と信じない自由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第47話 結婚詐欺はビジネス」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第48話 母親は顧客」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第49話 産みの親に会うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第50話 丑の刻参り」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第51話 彼の告白を待つ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第52話 過去が思い出せない」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第53話 別れさせるのが仕事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第54話 息子に店を継がせたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第55話 選ばれない人生」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第56話 交通事故で助かった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第57話 鏡が嫌いになった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第58話 彼が死ななかった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第59話 男女が付き合うという事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第60話 未来を予言する」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第61話 彼女がコミュ障になった理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第62話 鑑定は相談者を産みかえる作業」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第63話 亡き夫の願い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第64話 夢で殺される理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第65話 人気女優と俳優の恋愛」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第66話 会社を辞めて彼がしたい事」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第67話 遊女の哀しみ」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第68話 お母さんに会いに来た」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第69話 黒いハイヒール」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第70話 気になる義母」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第71話 脳を騙す」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第72話 涙で膨らんだ水風船」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第73話 許せない父親」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第74話 モテたいけれど」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第75話 いつも来る常連の彼女」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第76話 口が悪いけど可愛い」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第77話 いつ死ぬのか知りたい」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第78話 彼女を覚えていない理由」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第79話 あの人の生まれ変わり」

心霊鑑定士 加賀美零美 1「第80話 彼女が気になる三人の男」

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