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富山の学習塾が作った奇跡の学校の「頭のいい子の育て方」

投稿日:2018年6月16日 更新日:

富山の学習塾が作った中高一貫校から東大合格者3名など、難関大学の合格者が急増という話です。

難関大学合格者急増!富山・奇跡の学校の「頭のいい子の育て方」

開校10年の今年、東大理Ⅲに2名合格 2018.06.04
週刊現代

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今春の大学受験で、東大理Ⅲへの複数名合格は、全国でも13校しか存在しない。
それを田舎の私立が成し遂げた。

どんなスパルタ教育が行われているのか?
現地を訪れると、そこでは意外にも――。

学習塾が作った中高一貫校

開業3周年を迎えた北陸新幹線を使えば、東京駅から富山駅までは約2時間。
そこからローカル線、富山地方鉄道に乗り換え、約30分。
いくつもの無人駅を通り過ぎ、上滝駅で降りる。

駅前には古い和菓子屋があるだけで、コンビニもない。
タクシーを呼んで10分ほど走り、満開の桜が美しい熊野川を越えると、まだ新しい瀟洒な学び舎が現れた。
立山連峰を一望できる風光明媚な場所にある。

そんな地方の私立学校が「快挙」を成し遂げた。
富山県にある中高一貫校、片山学園中学校・高等学校(富山市東黒牧)から、大学受験の最難関・東京大学理科Ⅲ類(理Ⅲ=医学部)に2名が合格したのだ。

文科Ⅰ類(法学部)も含めれば、今年の東大合格者は3名だ。
その他にも京都大学1名、早稲田大学7名、慶應義塾大学6名など、難関大学にも続々と合格している。

同学園の片山浄見理事長が振り返る。

「そもそも富山県は『私学不毛の地』と言われていて、私学は県立校を落ちた子が行くところと考えられてきました。
公立(出身者)にあらずんば、人にあらず――本当にそう言われてきたのです。

富山の場合は、富山中部高校、富山高校、高岡高校の『御三家』が圧倒的に優位に立ち、私学の地位が低い。
そんな固定観念に風穴を開けたいという思いで私立の中学を作ったのが、13年前のことです。

1期生が高校生になる’08年に高校を開設。
以来、毎年東大合格者を出しています」

元々、片山理事長は富山最大の学習塾「育英センター」を運営していた。
だが、学習塾は学校よりも一段下の存在に見られていた。
「教育者」を志していた片山理事長にとって、学校を作ることは’77年に塾を開業したときからの悲願だった。

「学校開設にあたって掲げたのが、『東大20名、医学部医学科20名合格』という目標でした。
部活のない日は、19時まで夜間特別授業を行って、全国でも屈指の授業時間を確保。
学校の周辺にはコンビニも娯楽施設もありませんから、集中して勉強をするにはもってこいの環境です。

学習塾で培ったノウハウを応用して難関大学の合格実績を作り、知名度を上げることが狙いでした。
当初は学習塾付きの学校を目指していました」

日本一の授業時間を掲げて、塾での指導経験が豊富な教師が夜まで指導にあたる。
わからない生徒にはわかるまで徹底的に学習させた。

そんな片山理事長の狙いは、初年度からずばりと当たる。
新設校にもかかわらず、1期生から東大や国立大学医学部の合格者を出し、教育関係者からは「富山の奇跡」と讃えられた。

富山県内において片山学園の評判はすでに確立している。
こと医学部進学に関して定評があり、医者が子供を入学させることが多いという。

「富山県の場合、『御三家』の県立高校に入らなければ、難関大学の医学部合格は難しかった。
『御三家』以外の高校の授業が医学部に入れるような内容になっていない上に、周囲に医学部を目指す生徒がいませんから。

しかし、高校受験に失敗するリスクが高いので、今ではウチの学校が医学部進学のための一つの選択肢となっています。
『国立大学の医学部を目指すなら、片山学園に行ったほうが近道だ』というイメージは定着しました」

「詰め込み」をやめた

実績を作れば、周囲の目も厳しくなる。
「脱ゆとり」を標榜する「詰め込み教育」で合格実績を上げただけ、所詮は学習塾が作った学校――そんな陰口も聞こえてきた。

実際、片山学園の「スパルタ方針」は時代の雰囲気とそぐわなくなっていった上に、生徒と教師の負担が問題視されるなど、その限界を露呈し始めたのだ。
そこで片山理事長は、5~6年前に大胆な方針転換を図る。
全生徒が参加していた夜間特別授業を廃止し、学習塾のノウハウをリセットした。

「夜間授業が終わるのが19時で、先生も生徒も疲れ果てていた。
いくら勉強量で勝負をしても伸びしろはないと考えを改めたんです。

人間、集中力には限界がありますからね。
夜間授業をやめたところ、持続力がつき、それが結果としてよかったと思っています。

なおかつ、合格実績が下がったわけではない。
今年はウチの卒業生が95名で、東大合格が3名。
県立富山高校は卒業生が275名で東大合格が4名ですから、人数の割合で言うと、富山高校よりも実績が上と言っても過言ではないでしょう。

部活動も吹奏楽部は全国レベルですし、陸上の短距離走では県記録を持っている子もいます。
もっとも野球部は、まだまだ甲子園が遠いですね。
それでも3年前に夏の地方大会でようやく1勝できました。

学習塾が母体の学校だから勉強はある程度教えられても、教育はできないと見られていたのが、この数年で『全人教育』もできる進学校という見方に変わってきました」

校舎を案内してもらった。
広大な敷地に建てられているため、とにかく廊下が広い。天井も高い。
体育館の上には展望デッキもあり、北アルプスの山々が眼前に広がる。

校内には弓道場や武道場、ゴルフの室内練習場もある。
この校舎で全校生徒614人(’17年度)が学ぶ。
訪問時は春休み中だったため、生徒の姿はまばらだったが、自習室で勉強に勤しんだり、体育館で吹奏楽の練習に励んだりする姿があった。

寮は10畳もある個室

2年前からは授業の仕方もドラスティックに変えたという。
’20年に向けて「教育改革」がスタートし、大学の入学試験がマークシート式の「大学入試センター試験」に代わって、記述式を取り入れた「大学入学共通テスト」になる。

こうした変化を見据えて、片山学園では「授業改革」に取り組んでいる。
授業改革担当で、進路指導部長の森内梨絵氏が解説する。

「これまでの授業では、先生が受験に出てきそうな『おいしいところ』を板書して伝え、生徒たちはそれをノートに写すだけの授業でした。
言うならば、主役が先生だった。
その授業の主体を生徒に戻すようにしています。

まずは先生がその授業で生徒たちが何を学ぶべきか、課題を設定します。
その課題に到達するために、生徒が自分たちの頭で考えるのです。
私が教えている国語で、具体的に説明しましょう。

たとえば、評論文の文章構造を図解して、それを説明できるようにするという課題を初めに設定します。
従来では先生が黒板に図解を書いて解説し、生徒が学ぶだけでした。
それを生徒が自分で図解し、グループで議論する授業に変えたのです。

自分が導き出した答えを友達と比べて、グループで話し合います。
そしてグループで一つの解答を採用して、それを説明する。

最後には個人で振り返って、自分が最初に書いた答えと最終的に仕上がった解答の何が違うのかを考え、他人に説明できるようにする。
そして次からはどう考えたらいいかを学ぶんです」

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こうした授業は’16年度から全科目のすべての授業で導入された。
教師が教科書に従って授業を進めていく「昭和の授業」とはまったく異なる。

従来とは大幅に異なるやり方に戸惑いもあるが、手応えもある。
森内氏は、「新しく中3になった子は、入学当初からこの授業を受けていますが、成績は右肩上がりです」と胸を張る。

20年から始まる「大学入学共通テスト」では、知識だけではなく、思考力や判断力、表現力が問われる。
片山学園高校の松原肇校長は、そこで片山学園の授業が活きるのではないかと期待する。

「現在行っている新しい授業は、全国的に見ても進んでいると自負しています。
こうした授業を受けた生徒をどう評価するか、我々も一生懸命考えて定期テストを作っているのですが、実は昨年11月に行われた『共通テスト』のプレテスト(試行調査)の設問と出題傾向が似ていたんです。

文部科学省は『教育改革』で、21世紀を生きていくために必要な力を学ばせようと考えていますが、それは私たちの思いと同じです。
当校の成績上位層は、学びの本質の掴み方がわかってきたのではないでしょうか。
だから東大理Ⅲという突き抜けた成績を残すことができた。

学習塾が作った学校ということで、受験テクニックに走っていると色眼鏡で見られますが、私たちは正統派の学びを提供している自負があります。
これからの中高生は何をどう学んでいくべきかを追い求めている学校なのです」

校舎のすぐ横には、男女とも寮が併設されている。
特色はすべての寮生が約10畳もある個室で暮らすこと。
親元を離れて生活を自ら律することで、自立心を養う狙いがあるという。

大浴場に加えて、24時間使用可能なシャワールームも完備され、栄養価が計算された食事が「レストラン」で提供される。
片山理事長が寮を作った意図を話す。

「元々、英国の全寮制の名門男子校イートン校のような学校を作りたかったんです。
だから、校舎もイートン校を彷彿とさせるように作りました。

昨年からは1学年100人全員が、そのイートン校のサマースクールコースに行くことになりました。
日本ではごく一部、ラ・サール学園とか海陽学園などの名門私立しか提携しておらず、その中に入れてもらったのは大きなニュースですね。

若い頃に異国の地を踏むことが重要なんです。
2人一組でホームステイ先に滞在し、英語を話さないと生活ができない環境に身を置く。

カルチャーショックに見舞われ、完全にホームシックになるわけです。
それがいいんですよ。

人間は追い込まれた状況から、何かをやろうとする勇気が出てくる。
そうやって人間が育つわけです」

イートン校のように全寮制ではないが、生徒の2割は寮で暮らす。
そのメリットも大きい。

「寮では仲間たちと夜遅くまで勉強することもあるようですね。
寮生以外の生徒はバスで通ってきますが、通学時間がもったいないと入寮する高校生もいます。
寮生の友情はとても深まるようです。

寮生に限らずですが、生徒たちは卒業してから片山学園での絆が『特別だった』とわかる。
お互いなんでも知っている間柄で、男女で性別を意識しない関係性も出来上がっている。
大学に入ってから、卒業生は自分たちで同期会を作っています」(前出・森内氏)

来春には小学校も開設

なお、学費は年間約60万円、寮は食費や光熱費込みで年間約100万円。
そのほかに別途、教材費や模試の費用、海外研修の積立金が必要だ。

学費に見合うだけの合格実績を確保することにどの学校経営者も頭を悩ませている。
だが、高い目標を掲げさせれば解決できる――そう片山理事長は言う。
目標は、「真のエリート」の養成だ。

「これからの日本は、若い子が国際的なリーダーとして通用するために、どう育てるかが重要になってきます。
そのために、ディスカッションも活発に行っています。

北朝鮮や自衛隊の日報隠蔽といった時事問題についても議論させる。
自分が総理大臣だったら、物事を隠し立てせずにどのように答弁するかといったことも話し合わせます」

片山理事長の夢は大きい。
そして、学園のスローガンは「夢は叶う!」だ。
自ら範を示すために、理事長自身にはこれから叶えるべき夢がある。

「今から20年前、一度学校を作ろうとして挫折しました。
前例がなく、資金力が足りなかったためです。
世の中はこんなに無慈悲なものかと泣きましたよ。

でも、学習塾をやっていたときから、小中高大一貫教育の学校を作りたいという夢を諦めませんでした。
来春には富山県射水市に私立小学校を開設します。

私はいま68歳。
75歳で初めて小学校の卒業生を見るわけですから、そこから10年で大学を作って85歳。長生きしないといけませんね」

東大合格はあくまで結果論。
「頭のいい子」は、夢に向かって努力することで育っていくのだ。
「週刊現代」2018年4月21日号より

[出典:難関大学合格者急増!富山・奇跡の学校の「頭のいい子の育て方」(週刊現代)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55286 ]

すごい学校だなあと思いました。
卒業生が社会で活躍してくれるのを期待しています。

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