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被災地復興まで断酒、貯金ゼロのスーパーボランティア尾畠春夫さん

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スーパーボランティアの尾畠春夫さんの「壮絶なる我が人生」に続く後編です。

酒も飲まず、貯金もゼロ…スーパーボランティア尾畠春夫さんの生き様

スーパーボランティア・尾畠春夫さんが語った「壮絶なる我が人生」
私が被災地に行く理由【後編】 2018.08.25
週刊現代、齋藤 剛

山口県周防大島町で行方不明となっていた2歳男児を発見し、大きな注目を集めたスーパーボランティア・尾畠春夫さん。現在、広島県呉市でボランティア活動を続ける尾畠さんに、週刊現代の齋藤剛記者が「被災地に行く理由」と「家族の話」を訊いた――。

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健康保険証は11年無使用

私は65歳から本格的にボランティア活動を開始して、最初は新潟の中越地震のときかな。災害があるとすぐ現地に向かいました。それこそ全国を回りましたね。
東日本大震災のときは、南三陸でがれきの中から思い出の写真などを見つけ、被災者に戻す「思い出探し隊」の一員として、約500日間ボランティア活動をしました。このとき、酒をやめました。それまで自分は浴びるほど飲むタイプでした。しかも、ストレートでしか飲まない。しかし、南三陸の光景を見て思うところがありました。
避難所のベイサイドアリーナには1800人もの避難者がいた。ぎゅうぎゅう詰めで身動きできない。にもかかわらず、誰も文句を言わない。同じ日本人でありながらこんな思いをしている人がいるんだと思った。酒なんか食らっている場合ではないと思ったんです。

それから7年5ヵ月一滴も飲んでいません。ただ、酒を断ったわけではありません。中断しているだけです。解禁するときは東北3県の仮設住宅がすべて取り除かれたときと決めています。そんな日が来ることを期待しています。
健康保険証は11年ほど使用していません。大きな病気は40歳の頃に腸捻転をやったことくらいかな。大分の自宅にいるときは毎日8㎞ほどジョギングしています。健康の最大の秘訣はとにかく体にいいものを食べる。これに尽きる。
具体的に言うと、野草を集め、茹でて酢醤油で食べます。桑の葉がうまいですね。あと、たんぽぽもうまい。オオバコ、ドクダミ、ヨモギ……。どれも体にいい。こうした食生活は登山を始めた40歳の頃から続けていますが、誰かにおすすめしません。実際、家族でも食べているのは自分だけです。
いまの食生活ですか? 被災地に負担をかけることがないよう、別府市内のディスカウントストアで約2週間分の食料を買い込みました。ボランティア中の主食は、持ち運びに便利なパックご飯とインスタントラーメンです。ご飯は3パックで198円。ラーメンは5パックで158円です。
パックご飯は温めるとガス代がかかるのでそのまま食べます。おかずなんていりません。梅干しがあれば十分です。寝泊まりするのは軽ワゴン車の後部座席です。被災地のどんな環境でも寝られるようにするため、普段からゴザの上で寝ています。この車は13年間乗っていますね。走行距離は約20万㎞。故障したことは一度もない。タフな相棒ですよ。

ボランティア活動中はお風呂にも入りませんし、シャワーも浴びません。大分に帰って温泉に入る。これは格別です。3時間も4時間も入ってしまいます。これはボランティアを終えた後の楽しみのひとつです。
日常生活はシンプルそのものです。テレビはNHKしか見ません。しかも、情報収集のため30分見るだけ。ただ、地元紙である大分合同新聞は定期購読しています。お気に入りはラジオ深夜便。懐かしの歌が好きですね。

カミさんは旅に出て5年帰ってこない

私は被災地に行ったら「暑い」とは絶対に言わない。もし自分が被災者であったならば、どう思うのか。ボランティアさせていただいているという立場を忘れてはいけません。
当然ですが、言動すべてに気をつける必要があります。赤い服を着ているのもこだわりです。背中には名前が大きく書いてあります。これには理由があり、被災している方は身元がわかるほうが安心するんです。
さらによく話すこと。黙っていると怖いでしょう。赤い服もそうですが、すべては安心感をもってもらうためです。

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現在の貯金はゼロに等しいですね。年金は月約5万5000円。ここからボランティア活動費を捻出しています。私は商売人ですからカネには執着しています。それはいまも同じです。
ただし、ないものは追っても仕方ない。私は逃げるものは追いかけない主義です。そのときの状況に応じた生活をしているだけです。ここに来るだけでも往復で約1万円かかります。残りは4万円。それに合わせて生活するだけ。ない袖は振れぬ。これを心がけています。
家族の反応なんて気にしません。ただし、ボランティアに出かけるときは、自宅の玄関に『どこどこに行く』と息子と娘への伝言を残して出発しています。
カミさんは、いまは旅に出ている……。一人旅です。「自由にしたい」って。「旅に出たい」と言うから「はい、どうぞ」と。5年前に出かけて……まだ帰ってない。愛想を尽かされたらそれはそれで仕方ない。
そもそも、夫婦なんてもともと他人じゃから。ただ惚れて結婚した。憎いとかそんな気持ちはない。いまの家は妻とゆっくり老後を過ごすために購入したものです。カミさんも鍵を持っている。いつでも帰ってこられる状態にしてあります。
息子は公務員です。市役所に勤めています。自分とは真逆の人生を歩んでいる。「魚屋を継いだほうがいいかな」と聞かれたことがあります。そのとき、「お前には継がせないよ」と怒りました。
当たり前ですが、自分の人生は自分で歩むべき。私は子供に対してどうこうしろと言ったことはありません。国民の義務さえ果たしていれば何をしてもいい。

小さくても長持ちする。そんな生き方をしたい

娘はいろいろと心配してくれます。携帯電話を持つように何度も言われていますが、携帯電話にしろ、パソコンにしろ、そうしたものに振り回されたくない。カーナビも一度も使ったことがありません。
孫といえば、忘れられない思い出があります。店をやめて1年後くらいかな。あるとき、一番年上の孫が突然うちに来た。当時、孫は高校生でしたが、真剣な顔で「話があるんだ。じいちゃん、タバコをやめろ」と言うんです。
65歳を過ぎると体力が急激に落ちるから絶対にやめろって。自分はヘビースモーカーで、ピースを2箱吸っていました。これはうれしかった。孫の言うことは天の声だと思い、その場ですべて燃やしました。ちなみに、この孫は登山をしています。私の影響だそうです(笑)。これ以上うれしいことはないですよ。
来る人は拒まず。もっとも、マスコミはすぐいなくなるでしょう。私なんて一過性のもの。日本は熱しやすく冷めやすい。自分のことなんてすぐ忘れるでしょう。僕は花火の中では線香花火が好きなんです。小さくても長持ちする。そんな生き方をしたい。
いつかは沖縄で遺骨収集したいと思っています。ガマってわかりますか。沖縄にある自然の洞窟です。ここには相当な数の兵隊さんの骨が残っているようです。その捜索をしたい。本当は今年実行する予定で、道具など準備をしていました。ところが、災害が続発して断念しました。いまはこちらが優先です。ただ、来年の春にも実現したい。

ボランティア活動の現場では、経験豊かな尾畠さんの存在感はやはり大きい。暑さで具合を悪くしたスタッフを見つけると、すぐさま水を飲ませ、休ませる。積極的にコミュニケーションをとろうとしないメンバーがいると、笑顔で話しかける。
最後に尾畠さんと握手したが、握力は78歳のそれではなかった。そのバイタリティ、行動力には感服するしかなかった。

[出典:酒も飲まず、貯金もゼロ…スーパーボランティア尾畠春夫さんの生き様(週刊現代、齋藤 剛)(現代ビジネス > https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57178 ]

「そもそも、夫婦なんてもともと他人じゃから。」
奥さんに対しても「自由に生きて」と言えるなんて、すごいです。

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