女子プロレスの人気を支えたダンプ松本さんの壮絶人生を綴った連載が面白いので紹介します。
ダンプ松本 億単位の金で金銭感覚が麻痺する全女 引退へ
【ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」:連載12】
女子プロレスブームがピークを迎えた1985年には、テレビ中継が月曜夜、土曜と日曜が隔週で夕方から放送されるようになっていた。月に8回も全女の番組があったわけだ。凄いよな。年間300試合で日本中どこでも超満員。視聴率は20%以上までハネ上がっていた。
地方を回ると、どの会場でもグッズの売り上げは1000万円を超えた。つまり単純計算で年間30億円。グッズのみでだぜ。今じゃ考えられないけど、Tシャツなどのグッズが売れても選手の取り分はゼロ。全女を経営する松永一家の4人兄弟が全部持ってっちゃうわけだ。
松永一家がそれぞれ豪邸を新築して、1億円のクルーザーを買ったり、埼玉・秩父の山を丸ごと購入したり、移動用のバスを3000万円のベンツの新車に代えたり…。当日券売り場のお金がダンボールに入りきらず、足で踏んづけているのを見たことがある。もうメチャクチャだ。貧しい家庭に育った私には、お金を踏むなんて狂気の沙汰にしか映らなかった。
それでも最高時には月給が手取りで580万円あった。年収は5000万円を超えていた。その時期は約4年続いた。今思えば少しぐらい貯金すればよかったのだが、全部飲み食いに使ってしまった。トイレに流れちゃったわけだ。引退直後、母親のために一戸建て(埼玉・深谷市)をプレゼントしてあげられたのが唯一の救いだった。
86年になるとブル中野(83年デビュー。極悪同盟の主要メンバー。ダンプ引退後の88年に獄門党を結成し、女帝の異名を取る。元WWWAシングル王者。97年引退)が極悪同盟に加入。戦力もアップして最大時には10人もの大所帯に膨れ上がった。そうなると若い子たちの食事代も面倒を見なければならない。毎日焼き肉屋に行ってはニューハーフパブに行ったり…一晩で30万円とか平気で使っていたな。でも後悔はひとつもない。
極悪同盟の移動バスには「五箇条の約束」を書いた紙が張られていた。時間厳守、他人の陰口は言わない、ナイショ話はしない…。どうだい。読んでる人の中にも、身に覚えのある他人の陰口が好きな人が何人かいるだろ? 団体生活を送る上ではごく当たり前のルールなんだよ。いじめを経験して落ちこぼれていた人間の集まりだから、チームワークは良かった。
この時期にはいくつかのクーデターが起きている。ベテラン4~5人を残して正規軍20人以上の若手選手が結託。「本隊のバスでは移動したくない。極悪同盟のバスで移動したい」と会社に直訴したのだ。あまりにいじめがひどくなっていたからだ。皮肉なもんだよな、バスを3000万円のベンツに買い換えたら、皆乗りたくないって言うんだから。2日間、全員乗せたけどあまりにギューギュー詰めなんでこっちが音を上げた。「私が一緒に謝ってあげるから皆戻りな」と説得して、全員で会社に謝罪した。結局、怒られたのはバスに残っていたベテラン勢だったけどな。
同時に、極悪同盟の人気が上がるにつれ、他の選手の嫉妬もエスカレートした。テレビ出演が急増した私とブルが憎かったのか「もう出さないでくれ」と直訴した先輩もいた。何人かが結束して「ヒールが目立つようになっては、やっていられない。あの2人をクビにしてくれ」と申し出たこともあった。この時かばってくれたのが(松永)高司さん(全日本女子プロレス会長=故人)だ。
「俺はダンプを取る。辞めるならお前らが辞めろ」と。私には「お前は好きなように反則を続けていい。俺が守る」とも言ってくれた。だから高司さんには今でも感謝している。しょうもないウソをつかれたこともあったけど、プロフェッショナルという意味では、尊敬すべき人だった。
しかし人間関係に疲れきった私は会社が心底嫌いになった。会社を困らせるためには何をすべきか。突然に引退を発表してやろう。そう決意したのは87年冬のことだった。
Sponsered Link
p>☆だんぷ・まつもと=本名・松本香。
1960年11月11日、埼玉・熊谷市出身。
1980年8月8日、全日本女子プロレス・田園コロシアムの新国純子戦でデビュー。
84年にヒール軍団・極悪同盟を結成してダンプ松本に改名。
長与千種、ライオネス飛鳥のクラッシュギャルズとの抗争で全国に女子プロ大ブームを巻き起こす。
85年と86年に長与と行った髪切りマッチはあまりに有名。
86年には米国WWF(現WWE)参戦。88年に現役引退。
タレント活動を経て03年に現役復帰。
現在は自主興行「極悪祭り」を開催。163センチ、96キロ。
(構成・平塚雅人)
[出典:ダンプ松本 億単位の金で金銭感覚が麻痺する全女 引退へ(東スポ > https://www.tokyo-sports.co.jp/prores/1674321/ ]
”当日券売り場のお金がダンボールに入りきらず、足で踏んづけているのを見たことがある”……すごい時代だったんですねえ。
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その1
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その2
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その3
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その4
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その5
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その6
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その7
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その8
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その9
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その10
女子プロレスラー・ダンプ松本の壮絶人生「極悪と呼ばれて」その11
Sponsered Link
p>