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日本で生まれ育ったのに「北朝鮮工作員」にされてしまう若者たち

投稿日:

前回14年間 日本人の女と同棲して、3人の子供の父親を演じていた「北朝鮮工作員」の続きです。
外から工作員が入ってくる場合の他に、日本国内にいる在日朝鮮人の若者を工作員にしてしまう…
以下より引用させていただきます。
日本で生まれ育った若者が「北朝鮮工作員」にされるまで(竹内 明)

日本で生まれ育った若者が「北朝鮮工作員」にされるまで 私が出会った北朝鮮工作員たち 第4回 竹内 明 2017.10.29

核やミサイル開発で連日ニュースを騒がせ、ついに戦争になるのかという不安も高まる北朝鮮。
しかし、北朝鮮の脅威はすでに、あなたの隣に迫っているかもしれない……。
日本にも数多く潜伏しているとされる北朝鮮の工作員たち。
彼らはいったい何者で、どんな生活を送っているのか。
元工作員たちへのインタビューを重ねてきた報道記者・作家で『スリーパー 浸透工作員』の著者でもある竹内明氏が、自らの目で見、直接話を聞いた元工作員たちの証言から、日本にも潜んでいる北朝鮮工作員の実像に迫ります。

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「我々の脅威は飛んでくるミサイルや、これから潜入してくる工作員じゃない。
もうすでに、日本には工作員が入り込んで生活している。

さらには、日本で生まれ育った若者が工作活動に巻き込まれることもある。
真面目な若者が、エリート意識をくすぐられて工作員になってしまうこともあるんだ……」

北朝鮮工作員を追ってきた、ある歴戦の公安捜査員は、私にこう語った。
その言いぶりには、心なしか同情が含まれていた。

日本で生まれ育った若者が、工作員になる――。
2012年に詐欺容疑で大阪府警に逮捕された「元在日朝鮮人Y」がその一例である。

「元在日朝鮮人」と書いたのには訳がある。
Yは帰化して日本国籍を取得した「日本人」だからだ。

だが、公安警察は彼を北朝鮮工作員と断定した。
Yには、どんな背景があったのか。
今回は、私が取材した、その素顔をお伝えしよう。

一般教員もタッチできない特殊教育をつけられて

Yは、東京にある朝鮮大学校外国語学部を優秀な成績で卒業した男だった。
外国語学部は朝鮮中高級学校の英語教員を養成する学部で、Yは3年の時、「在日本朝鮮青年同盟朝大委員会」の外国語学部支部委員長に就任している。
Yをよく知る卒業生は言う。

「全寮制の朝大で、委員長は生徒会長みたいな立場。
品行方正で真面目な熱誠者から選抜されます。

私たち一般学生の中には、彼らを『アカ』と呼ぶ人もいました。
Yは朝高時代から熱誠班に選ばれていたはずです」

民族教育を行う朝鮮大学校に通っているとは言っても、学生は日本社会の中で生まれ育った若者たちだ。
当然ながら多くは、日本での生活や日本社会の価値観を「当たり前」と思って生きている。
だが、なかには祖国・北朝鮮の思想や価値観にディープに染まっていく学生もいるのだ。

この卒業生が口にした「熱誠班」とは、1960年代末に編成されたもので、総連幹部の子弟や学業優秀、身体的にも優れた学生から選ばれる。
非公然組織の「学習班」の予備組織のような位置づけで、ここに所属する学生には、政治指導員による特別カリキュラムでの思想教育によって、絶対的な忠誠心が養われるという。

「熱誠班には、誰が所属しているかも分からない。
特別教育には、学校の一般教員もタッチできない。
学生は、かつては空手などの格闘技も教え込まれており、本国の工作機関の指示で動く学生もいたと聞いている」(朝鮮大学校関係者)

つまるところ、学生時代には、すでに工作組織のリクルート対象だったYの将来は決まりつつあったのである。
だが、表向きはYの周囲に、工作員となるような影は見えていなかった。

「男前でイケメン。愛嬌があった」

私の取材では、学内でのYの評判は極めてよかった。
当時、英語学科は男子学生が20人未満、女子学生が40人だったというが、女子学生からの人気も高かったそうだ。

表向きはメディアの一員として…

Yは朝鮮大学の大学院に当たる「研究院」に進学。
その後、講師を勤めた。
既定路線で外国語学部の教員になると思われていたが、Yは朝鮮新報に入社した。

朝鮮新報は朝鮮総連の機関紙で、Yは外国人向けの英字宣伝紙「ピープルズコリア」に配属され、30歳前後で編集長を任された。
「取材」という名目で、あらゆる人に会い、海外にも出ておかしくない肩書きを手に入れたのである。

Yは明るく社交的だった。
同窓生いわく「美人の後輩」と結婚、様々な会合にも顔を出して、公私ともに充実した生活を送っていた。

北朝鮮がテポドンを撃った時には、防衛省担当の新聞記者が集まる勉強会に参加して、北朝鮮情勢を講義することもあったという。
この動きについて、「軍事情報を収集するための足場作りだった可能性もある」と公安捜査員は重視している。
Yは英語能力を買われ、そのまま国際畑を歩んだ。

「このころ、Yは平壌やスイスに派遣され、滞在した。
当時、駐スイス北朝鮮大使はリ・スヨン(党副委員長)で、この時にYは北の高官と繋がりができたらしい」(Yの知人)

在日同胞の友人・知人の目には、Yは祖国への忠誠篤い、将来有望なメディア人と映っていたはずだ。
ところが、である。

周囲も驚いた、日本への「転向」

それは突然のことだったという。2001年頃、Yは朝鮮新報を退社、朝大の同窓会にも姿を現さなくなる。仲間との連絡を絶ち、在日社会から忽然と姿を消したのだ。
「Yが(日本に)帰化したらしいという噂を聞いて、まさかと思いました。同窓会でも話題になりました。あの熱誠者のYが転向するなんて、私たちの間では衝撃的なことでした」
朝大の同窓生はこう話す。総連の機関紙で編集長まで務めた人物が、転向するなど過去に例はなかったのだ。
日本人となったYは、兵庫県尼崎市にある父親の運送会社を継いだ。子供たちは朝鮮学校ではなく、日本の学校に通わせた。
そして2006年、Yは神戸大学大学院に入学する。
「Yは朝鮮半島研究の教授に師事した。イケメン? いや、その当時は30代半ばだったから、明るくて気のいい、下町のおっちゃんという感じだったよ。学会の飲み会の幹事を積極的に引き受けて、教授や院生ともうまくやっていた。英語が得意で、本当は記者になりたかったと話していた」(大学院関係者)
総連で働いていた経歴は、隠していなかった。大学院の研究仲間には「総連と喧嘩別れして、帰化した。日本の大学で勉強をし直したいんだ」と話しており、総連との関係が完全に切れているという印象を与え続けた。
Yが父親から継いだ会社の経営は、うまくいっていなかった。周囲には、「潰したいけど、アルバイト代わりに続けている」と語り、いよいよ会社が傾き始めると、カネに困窮したらしく、2年間休学した。
「彼は学術論文も書かなかった。研究がしたいというより、日本社会に溶け込むために、日本の大学院で勉強をし直そうとしている印象だった」(大学院関係者)
Yを知る神戸大学の大学院OBは、彼の人柄を評価している。
「年はとっていたけど、極めて純粋な男。過ちはすぐ認めて謝るし、素直すぎる男だった。北朝鮮への不満も持っているし、総連にはもっと不満がある。日本人になってはいたが、北朝鮮は祖国だという思いが強かった。祖国と母国の両方に役立つにはどうすればいいか、常に考えていた」

始まった「奇妙な迷走」

だが、この頃からYは奇妙な動きを見せ始めていた。
Yは、大阪にある北朝鮮情報誌の編集部でアルバイトを始めた。

この編集部には北朝鮮内部に協力者がおり、現地の庶民の声を届ける雑誌を発行していた。
北朝鮮からすれば、ぜひとも内情を探りたい報道機関だったろう。
当然ながら、北朝鮮内部にいる協力者の素性が漏れれば、情報源となる彼らには命の危険があった。

続いて、Yはラヂオプレスの採用試験を受けた。
ラヂオプレスは、もともと外務省所管の外郭団体で、北朝鮮を中心とする旧共産圏のメディアの翻訳記事を日本の政府機関に配信するモニタリング機関だ。
しかし、Yは一次の筆記試験で落ちている。

「惜しいミスが目立った。
たとえば、『北朝鮮の特殊部隊が韓国大統領府を襲った青瓦台襲撃事件は何年に起きたか』という問題で、正解は1968年だが、Yは1969年と答えてしまったりしていた」(関係者)

Yは面接にさえ届かず不合格となり、ラヂオプレスへの就職は叶わなかった。
一見すると、こうした行動は報道機関へのアプローチであり、周囲に語った「本当は記者になりたかった」という言葉との矛盾はない。
だがその後、Yはこんなことを言い始めたという。

「私は日朝の架け橋になりたい。
北朝鮮は日本と交渉したがっている。

金正恩は敵対する関係であっても、北朝鮮と日本は繋がっていなければいけないといっている。
私は拉致問題をなんとか解決したい」

Yは大学院OBに相談、日本政府との接触を希望する。
研究者であるこの大学院OBはYが携えたメッセージを拉致対策本部に報告、当時の拉致対策担当大臣の松原仁氏に引き合わせようと試みたという。

「Yは東南アジアなどに行って北朝鮮の軍関係者と接触していた。本国の意向を聞いて、日本政府に伝えようとしていた」(大学院OB)

本国の意向で、Yは日本政府との対話の窓口を探していたというのだ。

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発見された「隠語」と「スパイの技術」

Yが詐欺容疑で逮捕されたのは、その矢先のことだ。
兵庫県の中小企業支援制度を悪用して融資金1000万円をだまし取ったと言う容疑だった。

さらにその後、Yは世界の軍事情報が記載された米国で市販されているレポートを、北朝鮮の軍関係者に送っていたとして「著作権法違反」で再逮捕された。
大阪府警外事課はYのパソコンを解析。
すると、北の軍関係者との間のメールで隠語を使用していたことがわかった。

「平壌」を「父」、「北京」を「母」、「資料」を「画集」、「接線」(工作員が対象者に接触すること)を「面談」、「外務省」を「東京大学」、「防衛省」を「京都大学」といった具合に言い換えていたのだ。

<母のところで京都大学の画集を受け取る>というメールは、<北京で防衛省の資料を受け取る>の意味だった。

また、Yのパソコンには「ステガノグラフィー」を読むためのソフトが搭載されていた。
ステガノグラフィーとはデータの隠蔽技術の一つで、ネット空間上にある画像の中にテキストデータを埋め込むことができる。

本国の工作機関が、風景の写真の中に指令文を埋め込んでおく。
それを、工作員が特殊なソフトで解読するのだ。

かつて工作員への指示は、「A3放送」と呼ばれるラジオ放送で、5桁の暗号指令を読み上げて送っていたのだが、最近はステガノグラフィーで送る手法が主流になっている。
Yはこう供述したと言う。

「2008年頃から情報収集を始め、合計2000万円の報酬を受け取った」

この供述が本当なら、Yの行動が迷走を始めた時期と、情報収集を始めた時期は一致していることになる。
関係者によると、Yをコントロールしていたのは、「朝鮮人民軍海軍OBのビジネスマン」を名乗る北朝鮮人で、年齢は40代半ば。
中国や東南アジア、ヨーロッパなどで活動していた。

公安警察はこの男を、北朝鮮の軍所属の諜報機関・偵察総局の工作員と見ている。
だが、Yは逮捕後、知人にこう話していたという。

「確かに、連絡を取り合っていたが、渡したのは公開情報だ。スパイ活動なんかじゃない」

「すべては偽装だった」のか

Yの面倒をみた大学院OBも、Yの立場をこう慮る。

「工作員ではなく、本国とのメッセンジャーだったんだろう。
本国との連絡に暗号を使うのは、工作員でなくてもやりますからね。

日朝の架け橋になりたいというYの言葉は純粋に思えた。
人生をやり直したくて行動しているように見えたんだけど……」

だが、公安捜査員はまるで逆の指摘をする。

「Yが日本に帰化したのは、偽装転向だ。
警察の目を欺くために、日本国籍を取得していたに過ぎない。
すべて本国の指示だ。

公開情報を集めるスリーパーが、本国の意向で政治工作にまで手を伸ばそうとしていた。
彼は『アクティブ』の工作員だったんだ」

工作員による政治工作、英語では「アクティブ・メジャーズ」と呼ばれる活動にYが乗り出そうとしていたと、この公安捜査員は見ている(前述のとおり、Yはこれらの疑いを否定しているという)。
北朝鮮の工作機関は、なぜ日本で生まれ育った若者たちを利用しようとするのか。
ある北朝鮮担当の公安捜査員は、こう明かす。

「在日の補助工作員が本格的な工作活動をしようとすれば、朝鮮籍のままでは、まるで身動きが取れない。
合法的に日本人になると偽装にもなるし、動きやすいんだ」

「日本国籍を持つ工作員は宝です」

日本国籍を獲得することは、日本での工作活動を容易にするという意味があるだけではない。
私が取材した元北朝鮮工作員は、工作活動をする上での日本旅券の価値を、こう認めていた。

「日本の旅券は万能です。
対日工作はもちろん、対南(韓国)工作、その他のどの国でも信頼されている。

工作機関が真正の日本旅券を手に入れる方法は二つ。
日本人を拉致して、その人物になりすますこと。

でも、なりすました工作員の日本語に訛りがあったりするとばれてしまう。
もっとも安全なのは、日本で教育された在日朝鮮人を工作員にして、帰化させ、日本人として旅券を手に入れることです」

こんなケースもある。
在日朝鮮人の父親、日本人の母親の間に生まれ、日本国籍を持つことになったある青年は、朝鮮学校から慶応義塾大学に進学。

卒業後は北朝鮮の指示で、オーストリアのウイーンに留学し、そのまま北朝鮮のための工作活動を行ったという。
ある朝鮮大学校関係者はこう語る。

「在日の若者を工作活動に使うためには優越感をくすぐるのです。
高校時代から『おまえは熱誠班だ、特別だ』と言われ、修学旅行で平壌に行くと、有能な学生が呼ばれて特別待遇を受ける。

その学生には『俺は特別なんだ』という優越感が植え付けられます。
でも、この優越感は日本社会では通用しない。

閉ざされた朝鮮学校で育ち、優秀だといわれた若者も、いざ日本社会に合流するとうまくいかない。
差別を受けることもあるし、日本企業での熾烈な出世競争に敗れることもある。
そういうときに、『じゃあ、北の社会で偉くなってやろう』という気持ちが芽生えるのも自然なことではないでしょうか」

一度は優越感にひたるよう仕向けられた若者が、日本社会の荒波に晒されて、逆に本国への忠誠心を高める。
こんな現実が利用されるのだ。

若者たちの心の動揺につけこむ工作機関の手法は、実に冷酷だ。
私が取材した元北朝鮮工作員は、こうも話した。

「日本国籍を持ちながら、思想的にも民族的にも目覚めた若者は、北朝鮮の工作機関にとって宝です」

指導者の言うことをよく聞き、疑問を差し挟まない真面目な若者。
利用されるのは、そんな青年たちだという。

本来なら、生まれ育った日本社会に親しみを持っているはずの若者たちの心の隙間に、彼らの日本国籍を利用しようとする組織は忍び込み、工作員に仕立て上げ、利用していく。
北朝鮮にいる家族や親類を人質に取られ、工作員に協力させられる在日朝鮮人たちの話を以前に書いたが、若者たちの真っ直ぐな心さえも、工作機関は冷徹に利用しているのだ。

スパイ大国・北朝鮮の工作機関は、こうして日本国内でも多数の「犠牲者」を巻き込みながら、確実に社会の各方面に根を張っている。
私たち日本人は、まずその事実に冷静に目を向けなければならないだろう。

[出典:日本で生まれ育った若者が「北朝鮮工作員」にされるまで(竹内 明)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53336 ]

差別はいけないと思いながら、こういう話を聞くと偏見の目で見るようになるのが怖いです。
真面目に日本国籍を取得して、日本人になろうとする人もいるわけですから。
早く北朝鮮の体制が変わってくれることを切望します。

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