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かつて「天才」と呼ばれたアスリートたちの今

投稿日:2018年6月10日 更新日:

かつて「天才」と呼ばれた人たちが、挫折を味わって第二の人生を歩んでいるというお話です。

「天才」と呼ばれたアスリートたちのその後の人生

受付嬢になっていた「ポスト浅田真央」 2018.06.05
週刊現代

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巡り巡って芸人に

長野県を中心にモノマネタレント、ラジオDJ、歌手として活動している松山三四六さん(本名・秦光秀、47歳)は、中学時代は相撲で若乃花(現・花田虎上)に圧勝し、柔道では吉田秀彦に「アイツには勝てない」と言わしめた天才アスリートだった。
本人がこう語る。

「小学時代は柔道では2回全国大会で優勝しました。
わんぱく相撲にも出場して全国大会を連覇。
同級生に後の若乃花がいたんですが、準々決勝で3秒ぐらいで倒しましたよ。

その若乃花と同じ明大中野中学に入学して、僕は柔道部でしたが、相撲部の助っ人によく駆り出されました。
そこでも若乃花に負けたことはありません。
中学に入ったころは今より30kg近く太っていて、166cmで90kgを超えていました。

柔道では中学3年のときには全国大会で、後に世界選手権王者となる中村佳央を決勝戦で倒して78kg級で優勝しました。
そのころの夢は、オリンピックに出場し、世界チャンピオンになること。
当時、1学年上だった吉田秀彦さんも、『こんな奴に勝てるわけがない』と言ってくれたんですよね」

高校時代は国体で優勝したが、右ひざの半月板を負傷。
その影響で大学時代に念願だった世界選手権出場を逃し、柔道を断念した。

「夢が叶わないことを知った瞬間が、柔道をやめると決めた時でした。
その後、選んだのが学校の先生になること。
夢を諦めても幸せに生きていけるということを伝えたかった。

ところが、社会科の教員免許を取ったものの、内定がとれたのは女子校の1つだけ。
『スクール・ウォーズ』みたいな先生を目指していたから、迷いました。

そのとき吉本興業から、東京NSCの第1期生を募集するDMが届きました。
それで『人生、博奕や』と芸人の道を選んだんです」

ストライカーが大工に

だが、芸人としてのセンスの無さにも気づかされた。
紆余曲折を経て、松山千春のコンサートにて飛び入りで歌を披露したことがきっかけで、ラジオのDJとなった。
さらに長野県でのラジオ番組出演を皮切りに、現地での仕事がどんどん増えていったという。

「7年ほど前から長野大学の客員教授をやっていますし、道場で柔道も教えています。
選手として僕は努力が足りなかった。
なぜそれに気が付いたかというと、子どもたちを教えるようになったから。

僕は天才だったから、『なんで、こんなことができないの?』とつい言っちゃうんですよ。
それで指導法を必死に勉強するようになって。
僕は『できないから面白い』という探求心を、若いときに持つことができませんでしたから。

僕の息子も柔道をやっていますが、夢破れた後も、十分に充実した生活を送れる人間力の土台をいま築いておかなくてはいけないよ、と口を酸っぱくして言っています」

磯貝洋光さん(48歳)は間違いなくサッカー界の天才少年だった。
中学時代はU-17日本代表のエースストライカー。
名門・帝京高校でも1年生から10番を背負った。

東海大学在学中に日本代表に選ばれ、Jリーグのほぼ全チームからオファーが舞い込み、ガンバ大阪では主力選手として活躍した。
だが、29歳の若さで現役を引退する。
磯貝さんはこう明かす。

「監督の意にそぐわなかったので使われない日々が続いた。
無理やり監督のスタイルに合わせてサッカーを続けるよりも、自分の人生を生きたいと思った。
それに足も負傷していたし、俺はサッカーを十分楽しめたという思いもありました」

引退後はプロゴルファーを目指して活動したが、まだプロテストには合格していない。
体重は現役時代よりも40kg近く増え、100kgを超えた。

「ゴルフのトレーニングは今も続けているし、子どもたちにサッカーも教えている。
言ってみれば、何もかも中途半端かもしれない。
3年前から大工の仕事も不定期でやっています。

でもね、人生の前半は、サッカーの神様に愛されて、後半は好きなことがやれている。
子どもたちへの指導に携わっているのは、サッカーが自分をここまで成長させてくれたという感謝から。
これから?『俺、今日から変わります』と言いたくなる綺麗な女性と出会いたいね(笑)」

大阪・東大阪市にある「麺屋こころ 長瀬店」で店長を務める多井清人さん(38歳)は高校野球ファンなら知らない人がいない天才打者だった。
小学6年生のときには少年野球チームで4打席連続本塁打を記録。
中学時代はボーイズリーグの日本選抜代表として米国遠征を経験した。

当時、甲子園出場の常連だった大阪・上宮高校に入学すると、1年生の秋からクリーンナップ。
3年生のときには4番打者として春の選抜で、甲子園で2試合連続本塁打を放った。
高校通算33本塁打。多井さんが言う。

「当時はホームランしか狙っていなかったですから。
2年のときに夏の予選では、日生球場で打球がバックスクリーンを超えた。
記者の方に、『あのバックスクリーンを超えたのはおまえか、(元近鉄の)ブライアントだけや』と言われたことを覚えています」

「私の人生の財産」

同世代には井川慶(元阪神)や石原慶幸(広島)らがいるが、多井は彼らに劣らぬ超高校級選手だった。
高校の同級生3人がプロ入りし、当然、多井もそうなるかと思われていたが、法政大学への進学を決断した。

「親が『プロはあかん、大学に行け』。
そのほうがプロに行くにしても条件がよくなるからと。

ただ高校時代は自分が一番打てる自信があったのですが、早稲田大の鳥谷敬(阪神)らを見て、だんだんとそう思えなくなりました。
しかもコーチと意見がぶつかり、試合にも出られなくなったんです」

だが、プロ入りの夢を捨てることはできず、卒業後は日本生命の野球部で野球を続ける。

「社会人2年目にプロから声がかかるという話があったんですが、結局ダメでした。そこで諦めましたね。
野球をやめた後、日生で1年間働いて、ラーメン屋のオーナーと知り合い、いまの仕事を始めました。
苦労は腰が痛くなることくらい。

それより、お客さんから『おいしかった』と言ってもらえると、やっぱり嬉しい。
将来的な目標は、バカにされるかもしれませんけど、年収5億円です。
かつてのチームメイトには『プロに行っていたら年俸5億円もらっていたかもしれないやろ』って言っています。

この仕事を始めて、あらためて野球をやっていてよかったと思えるようになりました。
いろいろな人と野球の話で盛り上がれますから」

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「第2の浅田真央」と呼ばれたフィギュアスケート選手が’16年1月に静かに引退した。
西野友毬さん(24歳)。

小学6年生で5種類の3回転ジャンプをマスター。
14歳でのぞんだ国際大会、ジュニアグランプリファイナルでは3位に入った。
周囲は将来の日本のエースだと期待したが、本人は冷静だった。

「体型が変わる時期にさしかかり、今まで跳べていたジャンプを維持するのが精一杯でした。
むしろ、自分の技術力と成績が釣り合っていないと感じていました」

西野さんの不安は現実のものとなる。
15歳でジャンプがスランプに陥ったのだ。成長期で体重は5kg以上増加していた。

「空回りもあったと思います。
前年の成績があまりに良かったから、気合が入っていたんです。
このころは体重をコントロールするために、鶏のささみや野菜中心の食生活が続きました。

次第に集中力もなくなってきて、情緒不安定にもなっていきました。
週に一度はつらくて泣いていましたね。

本気でやめようと考えたときもありました。
それでもやめなかったのは、コーチが必死に止めてくれたから。
父親にも『最後までやり遂げなさい』と言われ、あらためてスケートに向き合おうと決意しました」

高校2年生からは気持ちを切り替えて再出発したという。
つらい練習を重ね、’10年の全日本選手権では浅田真央や安藤美姫と同じ最終グループに残り、6位に食い込んだ。

明治大学進学後もスケートを続け、全日本選手権や国際大会で思うような成績は残せなかったが全日本学生選手権は4連覇。
そして大学卒業と同時に現役を引退した。

「最後の大会と決めていた全日本選手権では、フリーの演技がノーミスだったんです。
会場全体がスタンディングオベーションをしてくれた。
この光景は、私の人生において財産になっています」

西野さんは中学3年で五輪出場はもう難しいと感じ、スケートは大学4年までと決めていた。

「真央さんが注目され始めて、そのすぐ下の年齢に私がたまたまいただけなんです。
引退後は社会に出ようと決めていました。

スケートの練習をしてきたからといって仕事が決まるわけでないので、就職活動はすごくつらかった。
何のためにスケートをやってきたんだろうって考えてしまいましたね。

今は契約社員として一般企業で受付の仕事をしています。
人と関わることが好きなのでこの仕事に決めたんですよ」

まだ納得できていないから

石川遼や松山英樹が台頭する以前、「天才少年」と呼ばれたゴルファーが、市原弘大プロ(35歳)である。
日本ジュニアゴルフ選手権をはじめ、アマチュア時代は25個のタイトルを総なめにした。
埼玉平成高校在学中の18歳のときに満を持してプロ転向を表明している。

ゴルフ関係者は誰もが、市原プロはすぐに初優勝を達成すると思っていた。
だが、19歳でパターのイップスに陥った。
ようやく克服すると、今度は23歳のときに腰椎ヘルニアを発症してしまう。

この苦境を乗り切ったものの、昨年は親指のケガで成績を残せず、シード落ちしてしまった。
いまだツアー0勝。しかし、市原プロは明るい。

「たしかにジュニアのなかでは勝ちましたが、プロの試合で上位争いをしたわけでもありません。
当時はジュニアの人数も多くなかったですから、そのなかで少し上手かったというぐらいのことです。

もともとすごくゴルフが好きだった。
それに僕は『自分はこういうゴルフをしたい』ということを突き詰めるほうが楽しい。
もちろんもっと結果も求めなくちゃいけないと思っています」

市原プロは、次世代の元天才少年、松山英樹をどう見ているのか。

「僕もプレーヤーである以上は、どんなに彼を凄いと思ったり、尊敬する部分があっても、負けたくない、勝ちたいという気持ちはありますよ。
ゴルフは順調にいくことなんて、ほぼありません。
試行錯誤しながら、ごくまれに上手くいく。

一瞬、『ああ、もうやめた』と思うこともあります。
でも、次の日には普通に朝から練習をしています。

もしやめるのならば、自分のゴルフに納得してから。
今年はケガの痛みがないだけでありがたいことだと思います」

少年から大人になり、世界が広がれば、上には上がいることを知る。
そのとき多くの元天才少年が「普通の人」に変わる。
それでも人生は続く。
「週刊現代」2018年5月5日・12日合併号より

[出典:「天才」と呼ばれたアスリートたちのその後の人生(週刊現代)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55449 ]

子どもの頃は才能が突出しているとすごい成績を残せてしまって、自他ともに「天才」と認めてしまいます。
それが成長と共に他のライバルたちに抜かれていくと言うのは、とても精神的につらいでしょうね。
周囲が過剰に期待しすぎるのもいけないなあといつも思います。

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