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夫に不倫されたうえに自殺された妻が1000万円支払えと言われました……

投稿日:

事故物件の話はよく耳にされると思います。
大家さんとしては本当に困る話ですよね。
そのため、自殺の場合は遺族から負担してもらいたいと思うのはわかりますが、その金額がなんと……

「不倫夫の自殺」で1000万円請求された妻の告白

12/11(水) 7:50配信

 自殺や他殺などの「事故」によって不動産物件内で人が亡くなった物件は、昨今「事故物件」と呼ばれる。テレビや雑誌などのメディアでその言葉を耳にした人も少なくないだろう。

 事故物件には住みたくないという人が多いため、家賃を安くするなどの優遇処置をとっている物件も少なくない。

■事故物件扱いで安くなった家賃は誰が補填している? 

 そういう安くなった物件を狙ってわざわざ住む人たちもいる。そんな人たちが記事で取り上げられることも多い。ただ、その安くなった家賃は、誰が補填しているのかを気にかける人は少ない。

 「大家でしょ?」と思うかもしれない。もちろんそういう場合もあるのだが、亡くなった人の遺族が補償しているケースも少なくないのだ。

 2019年9月に『自殺遺族になっちゃった!!』(竹書房)という漫画が出版された。

 作者である、漫画家の宮本ぐみさんと、原作の宮本ぺるみさんは姉妹だ。今回の本は、妹のぺるみさんの経験談を中心に描かれている。つまり、ぺるみさん自身が過去に自殺者の遺族になってしまったのだ。
 自殺遺族になった後、そして自宅が事故物件になってしまった後、どのような厄介な出来事が彼女たちを襲ったのだろうか? 

 竹書房の会議室で話を聞いた。

 今をさかのぼること数年前、ぺるみさんは結婚しており2人の幼いお子さんがいた。はた目には幸せな家庭そのものだが、すでに亀裂は入っていた。

 家庭の破綻のきっかけは、ぺるみさんの夫の浮気だった。

 「浮気と言っても一晩限りの関係ではありません」
 「何とか継続して暮らしていたんですが、溝はまったく埋まらなくて、『家を出ます』と言って、子供と一緒に別居生活を始めました」

 協議離婚になり、互いの両親とともに話し合いをしていたが、夫は「離婚しない」の一点張りだった。

 それから夫は、家族や友人に説得されてなんとか離婚を受け入れたようだった。

 「それで、夫が自宅へ『朝、9時に離婚届を取りに来い』って言ったんです」

 ぺるみさんは夫と顔を合わせる気にはならず、ぺるみさんの母親に取りに行くようお願いした。

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■そこで待っていたものは…

 ぺるみさんの母親がマンションに着くとキッチンのテーブルの上には離婚届が置かれていた。しかし、夫の姿はなかった。隣の部屋を見ると、寝ている足が見えた。ぺるみさんの母親が恐る恐るのぞいてみると、夫はロープで首を吊っていた。

 「母からの第一報で『首を吊って死んでいる』と聞いたときは、あのマンションのどこで首を吊ったんだろう? と思いました。夫は183センチと高身長で首を吊るのは難しいだろう、と思ったんです」
 夫は、パソコン机の下にロープを張り、そこに首をかけて死んでいた。体の下には失禁防止用なのだろうか、布団が敷かれていた。

 首吊り自殺は足が空中に浮いているイメージがあるが、実際には地面に足が着いている場合が多い。体が地面に着いている首吊り自殺は、医学用語では非定型的縊首という。

 直ちに救急車が呼ばれ、病院に搬送された。マンションの周りには救急車とパトカーが停まり、ちょっとした騒ぎになってしまった。その様子は、近所に住む大家も見ていた。
 「部屋が事故物件になってしまったのではないか?」と危惧した大家は不動産会社に電話を入れた。

 そして不動産会社から、自宅に待機していたぺるみさんに電話がかかってきた。

■あれよあれよという間に事故物件決定

 「不動産会社からは『もし事故物件にしてしまった場合、損害賠償とその他で、1000万円払っていただきます』と言われました。まだ自宅で亡くなったとは確定していませんでしたが、パトカーや救急車が来ているのを見て決めつけてきたようです」
 病院に運ばれた際の夫の生死は微妙なところだったのだが、とにかく死体検案書には「自宅で首を吊って死んだ」と書かれてしまった。

 「それで事故物件が決定してしまいました。反論したいこともあったのですが、それには時間もお金もかかる裁判が必要でした。

 泣く泣く受け入れるしかありませんでした。あとは1000万円から値段を下げるしかありません」

 大家はいくら請求しても構わない。ただ、それでも1000万円という額はかなり高額だと言う。

 1000万円の内訳は、

1、特殊清掃費、原状回復費として80万円
2、次の入居者が決まるまでの家賃2年分340万円
3、次の入居者の減額分の家賃(半額)4年分340万円
4、大家への慰謝料240万円
 というものだった。

 不動産会社からは、合計1000万円を一括で早急に払うように言われた。

 「私も弁護士を立てることにしました」

■自殺は不動産の契約違反になる?

 ぺるみさんも夫が亡くなって初めて知ったのだが「夫が自殺する」というのは、不動産の契約違反になるのだ。
 賃貸物件で自殺するというのは「原状回復義務」「善管注意義務」「用法遵守義務」に違反することになる。

 「善管注意義務」とはつまり一緒に住んでいる家族に対しては「自殺させないようにする義務」があるということだ。

 病気や事故などで亡くなった場合は本人には違反しようとする気はないが、自殺の場合は「違反する明確な意思」があるため裁判をしたら必ず負けると言われた。

 「言葉の意味はわかりますけど、素直に納得はできませんでした。『夫が長年にわたり不倫をしたため、離婚しようとしたら自殺した』という事態に、私に非があるとは思えませんでした」

 不動産会社は直接実家に現れた。賃貸の連帯保証人であるぺるみさんの父親に「1000万円を払え」と直接言ってきた。両親は、

 「迷惑かけたんだから、払わなければならないんじゃないの?  わざわざ足を運んでもらったんだし。なんだったら私たちの家を処分して……」

 とほだされかけていた。

 しかし、ぺるみさんは1000万円を素直に払う気にはなれなかった。
 まずは1の特殊清掃費だが、夫は死後すぐに見つかっており、自殺による部屋の汚れはなかったため、特別な清掃をする必要はなかった。ぺるみさんの知人の特殊清掃と遺品整理の仕事をしている男性に依頼して、もろもろ20万円で清掃、処理をしてもらった。

 2、3の事故物件の逸失利益の請求額は、相場の倍の額だった。

 「都市部では『入居者が決まるまで約1年』『家賃減額は約2年』が相場だそうです。都市部は近所付き合いが希薄なため、噂が消えるのが早いということでこの年数になるそうです。田舎だともう少し長くなるそうです」

 話し合いの結果、次の入居者を今月中に見つければ、2は0円になることになった。そして3の家賃減額も、4年から2年分へ減額された。

 4についても大家からは

 「もし2週間以内に新しい住人を見つけたら、慰謝料は0円にする」

 と言われた。

 「知人でDJをしている青年にお願いして住んでもらいました。かなり困った人で『無断で犬を飼う』『仲間を集めて大騒ぎする』『家賃を払わない』と住人としては問題行動ばかり起こして弱りました。家賃30万円ほどを立て替えることになりましたが、それでも言われたとおり素直に払うよりはずいぶん安く済みました」
 1000万円の請求は、最終的に220万円まで下げることができた。最初の請求額が大きいため、ずいぶん安くなったような気がするが、それでも220万円というお金は大きい。

 「それに、支払いはそれだけではありませんでした」

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■住民税は亡くなってからも払う必要がある?

 

 夫が亡くなった後にすぐに、病院の入退院費を払わなければならなかった。遺体であっても、病院に入ったらお金はかかる。10万円ほど要した。

 そして夫はなくなる前にクレジットカードで、買い物をしていた。調べてみると、復縁マニュアル(恋人や配偶者とよりを戻す手引)系の情報商材だった。夫は、ぺるみさんとよりを戻したいと思っていたようだった。
 そのお金も、もちろんぺるみさんが返済しなければならない。

 「そして夫の住民税もかかりました。住民税は何月に死のうが、全年払いになると、そのとき初めて知りました」

 全年払いとはつまり1月1日に生きていたら、その年の12カ月分は支払わなければならないということだ。夫が亡くなった時期を考えると、半年以上分の住民税を納めなければならなかった。

 「夫が亡くなった際におりた保険金は、大半がそれらの費用で消えてしまいました。それでも、なんとか丸く収まってよかったです」

 多少損をしても、素直に払ってしまったほうが、精神的には楽だったかもしれない。

 ぺるみさんは言う。

 「原動力は“怒り“でした」

■「いつか何らかの形で発表してやるぞ!!」

 「不動産会社と話すときはつねに臨戦態勢で、全部メモに取ってました。そして、『いつか何らかの形で発表してやるぞ!!』と思っていました。最初はブログで発表しようかと思いましたが、結果的に姉と合作で漫画にすることができてよかったです」

 しかし戦いの日々を続けるうちに、ぺるみさんは精神的にかなり追い込まれてしまったという。

 「すごく疲れてしまいました。寝てるあいだに、夫が子供を連れに来るんじゃないか? と不安になるんですですね。夫が空からわが家に近づいてくる夢を見て『ああ夫が、娘たちをあちらの世界に連れていくために来たんだ』と思い、悩みました」

 ぺるみさんが役所の相談窓口に行くと「カウンセリングに行ってください」と言われたという。
 「病院で診断を受けると『うつ病ではないが、うつ状態です』って言われました。お薬はもらいましたけど、説明書を見ると『アルコールと一緒に摂取しないでください』と書いてありました。

 当時はアルコールで気を紛らわせていたので、結局薬は飲みませんでした」

■5分おきに『死にたい……死にたい』と電話した日々も

 その頃は、落ち込むたびにお姉さんに電話もしていたという。

 ぐみさんは当時の様子を語る。

 「5分おきに『死にたい……死にたい』って電話してくることもありました。相談を受けてるうちに、こっちの精神が壊れてしまいそうになりました。ただ、妹の扱いは慣れているので、『死ぬ前にどっか旅行行く?』とかなんとか気をそらしました」

 ぺるみさんの夫が亡くなって数年が経ち、今は姉妹と家族の皆さんは平穏に生活しているという。

 単行本を上梓した後は、知人から「実はウチも……」と、近しい人の死についての悩みを打ち明けられることが何度もあったという。

 ぺるみさんの夫がどのようなつもりで、自室で縊死したのかは今となってはわからない。

 ただ、おそらく彼が想定していた以上に、妻や子供たちに影響があったのではないだろうか。
 ぺるみさんの夫に限らず、自ら死を選ばなければならないという状況や心境は、想像を絶するほど心身共に追い詰められている。ただ、“自殺”は、本人が想像している以上に身内や他人を傷つけてしまう行為でもあるのだ。

【2019年12月12日14時50分追記】初出時のイラストの掲載を一部見直しました。
村田 らむ :ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

[出典:「不倫夫の自殺」で1000万円請求された妻の告白(東洋経済オンライン)(Yahoo!ニュース > https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191211-00318218-toyo-soci ]
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確かに、自殺を考えている人はもう、残された家族の事なんて考えられないほど追い詰められているのでしょうね。
亡くなるにしても、せめて遺された人に迷惑をかけないようにしてもらいたいものです。

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