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身近に潜む「マイルド・サイコパス」 セクハラ・パワハラの心理分析

投稿日:2018年5月19日 更新日:

犯罪にまで至らない「マイルド・サイコパス」が身近に存在するという怖い話です。

セクハラ・パワハラの心理を徹底分析~サイコパスの「真実」を明かす

身近に潜む「マイルド・サイコパス」

原田 隆之 筑波大学教授 2018.05.06

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ニュースを賑わすハラスメント事件

ここのところ、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント事件が立て続けに起き、世間を賑わせている。
今年になってからでも、大相撲行司による若手行司へのセクハラ、レスリング協会強化本部長による伊調馨選手に対するパワハラ、財務省次官による記者へのセクハラなど、次々と大きな社会問題となっている。

私もこれらの問題について、繰り返し寄稿してきた。
・大相撲行司セクハラ事件、式守伊之助の言い訳に潜む「2つの問題点」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54090

・「伊調馨さんは選手なんですか?」衝撃会見で露呈したパワハラの構造
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54900

・「セクハラ調査お願い文書」からほとばしる財務省の強権体質
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55324

海外でも、大韓航空の「水かけ姫」こと、チョ・ヒョンミン氏が、広告会社の社員に激怒してコップの水をかけたことが刑事事件に発展して、大きな問題になっている。
彼女は、「ナッツ・リターン事件」で有罪判決を受けたチョ・ヒョンア氏の妹だ。
いずれも創業者一族の令嬢である。

また、スウェーデンでは、ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーが、セクハラ・スキャンダルに揺れている。
アカデミーメンバーの夫が、複数の女性に対してセクハラや性的暴行を行ったと告発され、さらに同人による情報漏洩疑惑なども発覚した。
その結果、今年の文学賞の発表が見送られるという前代未聞の事態に陥っている。

ハラスメントとは、端的に言うと「嫌がらせ行為」である。
その種類にはさまざまなものがあるが、あるサイトによると30種類を超えるという。
代表的なものには、上に挙げたもののほか、アルコールを無理強いする「アルコールハラスメント」、大学などで教員が指導学生に行う「アカデミックハラスメント」、相手をことさらに無視したり嫌味を言ったりする「モラルハラスメント」、妊娠中・出産後の女性に対する「マタニティハラスメント」などがある。

これらの行為が、最近になって急に増えたわけではないだろう。
社会の変化や意識の高まりにつれて、それまで日常的に「当たり前」として行われていたことに、被害者が声を上げるようになってきたという理解が正しいと思う。

従前は、被害者のほうも、それらの行為を受け入れざるを得ない状況にあったり、自分のほうが悪いと思っていたりした場合もある。
しかし、社会の変化、人々の意識の高揚に伴って、当たり前ではないこと、自分に非があるわけではないこと、異議を申し立ててよいことなどに気づき、声を上げるようになったのである。

いつの世にも社会の変化に取り残され、古い制度や意識に雁字搦めになったままの者はいて、相も変わらず「当たり前」だと思って態度や言動を変えないものだから、ハラスメントはなくならない。
さらに、ネット社会になって、見ず知らずの第三者によるハラスメントも増えてきた。

これは従来にないタイプのハラスメントである。
内容としては、匿名をいいことにSNSなどで誰かを中傷したり罵倒したりする「ネットハラスメント」がある。

もっと卑劣なケースは、事件やハラスメントの被害者に対し、被害者には非がないのに、その非をあげつらったりするようなハラスメントであり、「セカンドハラスメント」などと呼ばれることもある。
最近では、セクシャルハラスメントや性犯罪の被害者が声を上げる「#MeToo」運動に対して、被害者をことさらに誹謗中傷するような動きが広がりをみせている。

ハラスメント防止対策に効果はあるか

こうしたハラスメントに対して、社会のひずみの是正、意識改革が声高に唱えられるが、それで加害者は本当に考えを改めるのだろうか。
確かに意識改革や啓発運動は大事である。
それによって世の中の大多数の意識が変わってきたからだ。

加害者の多くは「無意識的に」ハラスメント行為を行っているので、意識改革や教育はそれなりに意味のあることのように思える。
しかし、依然として古い意識に凝り固まっている人々は、他人の意見を聞いても頑なになるばかりで、「そのつもりはなかった」などと言い逃れをして、ほとぼりも冷めぬ間に相も変わらず、同じ言動を繰り返してしまうのではないかという危惧もある。

たとえば、前財務次官は、いまだに非を認めておらず謝罪もしていない。
「全体を聞いてもらえばわかる」などと言い訳をしていたが、全体を聞こうが部分だろうが、あの発言が彼自身のものであれば、誰がどう聞いてもセクハラである。
日本の官庁のトップのトップにまで上り詰めた人が、なぜこんな簡単なことがわからないのだろうか。

ほかにも、伊調選手へのパワハラ事件について、「なぜこれがパワハラかわからない」などと放言した至学館大学の学長についても然りである。
ハラスメントは知性とは関係のない別の要因がからんでいるのだろうか。

もしかすると、他人の権利や感情について、それに反応するスイッチが切れている人がいて、このような人々に対しては、いかなる異議申し立てや批判の言葉も、そして啓発活動や人権教育も響かないのかもしれない。
最近、欧米ではハラスメントを行う人々のパーソナリティに着目した研究が大きな関心を呼んでいる。
そうした研究のなかで、他人の人権を顧みることができず、その気持ちに共感ができない一群の人々を、「マイルド・サイコパス」と呼んでいる。

「マイルド・サイコパス」とは

サイコパスと聞くと、誰もが思い浮かべるのは、連続殺人鬼や猟奇的犯罪者などの姿かもしれないが、研究によれば、サイコパスはどの社会にも人口の1%から数%は存在する。
そして、その圧倒的大多数は犯罪行為までは行わない。
仮に日本に1%のサイコパスがいるとして、その数は100万人を超えるのだから、これは当然と言えば当然である。

ただ、犯罪までは行わないにしても、彼らは日常的に他人の人権を踏みにじったり、嫌がらせ行為をしたり、嘘をついたりして、世の中にじんわりと迷惑をかけ続けている。
つまり、彼らの多くが加担するのは、凶悪犯罪のような突発的な悪事ではなく、日常に溶け込む慢性的な悪事である。
サイコパスとはスペクトラム(連続体)のようなもので、その極端な一端に猟奇的犯罪者のような人々がいるが、別の端には犯罪的ではないが、慢性的に社会を蝕む「マイルド・サイコパス」がいる。

サイコパス研究の第一人者であるカナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアは、サイコパスの特徴を4つの因子に分けて記述している。
それを簡単に説明すると、以下のようになる。

第1因子(対人因子):表面的魅力、虚言癖、尊大な自己意識、他者操作性
第2因子(感情因子):不安や良心の欠如、浅薄な感情、共感性欠如、冷淡性、残虐性
第3因子(生活様式因子):衝動性、刺激希求性、無責任、長期的目標の欠如
第4因子(反社会性因子):幼少期の問題行動、少年非行、多種多様な犯罪行動

これらの特徴の掛け合わせによって、さまざまなサイコパス像が浮かび上がる。
ヘアは、サイコパス傾向を測定するために、「サイコパス・チェックリスト」を開発している。
犯罪的なサイコパスは、そのチェックリストにおいて、どの因子も最高得点を取るような人々である。

一方、マイルド・サイコパスは、これらの特徴は満たしていても、ある程度「マイルド」に抑えられている。
身の周りに連続殺人鬼はいなくても、人当たりがよく魅力的で、行動力はあるが、感情が薄っぺらく、無責任で平気で嘘をついたり、人の気持ちを思いやることのできない人物については、多くの人に心当たりがあるのではないだろうか。

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職場のサイコパス

企業や組織における「マイルド・サイコパス」の研究では、サイコパス上司のいる会社の場合、部下の離職率、うつ、モチベーションの低下が際立っていることが相次いで報告されている。
ハラスメントに限ってみれば、サイコパス上司がいない会社では、ハラスメント発生率が58%だったのに対し、サイコパス上司がいる会社では93%だった。
つまり、サイコパス上司は、必ずといっていいほどハラスメント行為に及ぶのである。

イギリスの研究では、サイコパス上司のハラスメント行為による社会的損失は、年間35億ポンド(約5200億円)と見積もられている。
こうした研究を受けて、企業内で「マイルド・サイコパス」を早期に見つけ、彼らを責任ある地位に就かせないようにする試みも広がっている。
ヘアらは、「ビジネス・スキャン」という企業版「サイコパス・チェックリスト」を開発し、これを採用する会社が増えている。

これまでリーダーシップに関しては、指導力、チームワーク、コミュニケーション能力、プレセン能力、対人能力など、そのプラスの側面について論じられることが多く、書店のビジネスコーナーに行けば、そのような書籍がたくさん並んでいる。
しかし、近年は、上述のようなリーダーシップの負の側面についても研究が進んできたというわけである。

「マイルド・サイコパス」が企業内の重要な位置に就いてしまえば、ハラスメント行為にとどまらず、横領、情報漏洩などに手を染める恐れも大きいし、粉飾決算、談合、製品偽装、検査偽装などの企業犯罪に主導的に加担することもある。
彼らは表面的には魅力的で、コミュニケーション能力に優れているうえ、不安がないので、思い切りがよく卓抜した行動力や実行力を見せることがあり、そのために誤ってリーダーに選ばれやすい。
事実、職場で指導的地位にいる者の4人に1人は、「マイルド・サイコパス」の基準に当てはまるという研究もある。

企業のトップ、政治家、科学者、芸術家などにも、「マイルド・サイコパス」が多く、彼らはまた「成功したサイコパス」とも呼ばれている。
サイコパスはパーソナリティの問題であるが、知能や他の能力が優れていれば、社会的な成功を収めることも可能だからである。

先ごろ行われた南北会談で、北の指導者に対する印象がガラリと変わったと口々に述べる人がいて、「ノーベル平和賞か」などと言われている始末である。
しかし、「表面的な魅力」「優れたコミュニケーション能力」にまんまと騙されているような気がしないわけではない。

「マイルド・サイコパス」にどう対処するか

一連のハラスメント事案を見るにつけ、一旦事件が明るみに出ると、企業や組織に対するダメージが著しく大きくなる。
冒頭でも述べたように、社内研修や教育だけで、こうした人々に対処することは難しい。

そもそも人の権利を侵害し、無責任に行動し、共感性や罪悪感などが備わっていないのが彼らの特徴であるから、いくら知識を与えても、効果がないのである。
啓発によって意識を高める効果があるのは一般的な人々だけであって、一番のリスクグループである「マイルド・サイコパス」には、まさに馬の耳に念仏に終わってしまう。

では、彼らにはどのように対処すればよいのか。
残念ながら、現時点で効果的な対処法はない。

サイコパスの原因の多くは、脳の機能的な障害であるとわかっており、それを治療する方法は、今のところない。
心理療法を行った場合、逆効果になったという研究すらある。

近著『サイコパスの真実』では、これまで論じてきた「マイルド・サイコパス」のほか、犯罪的サイコパスについても分析し、その原因、対処、治療についても解説した。
サイコパスは、ホラー映画や犯罪小説のなかだけにいるのではなく、われわれの社会にも確実に存在して、さまざまな害を与え続けている。
サイコパスの真実を知り、その対策を検討することは、繰り返されるハラスメント事案だけでなく、多くの社会的な害を防ぐためにも今後一層重要になってくるだろう。

[出典:セクハラ・パワハラの心理を徹底分析~サイコパスの「真実」を明かす(原田 隆之)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55555 ]

サイコパスに対して効果的な対処法はないとは、何とも悲しい話です。
脳の機能的な障害を原因とするサイコパスの治療法が確立されれば、それこそノーベル平和賞ものではないでしょうか。

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