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社会

なぜ成功者は「性暴力」で人生を棒に振ってしまうのか!?

投稿日:2018年5月18日 更新日:

成功者が「性暴力」によって人生を棒に振ってしまう根本的な理由を大学院教授が語っています。

成功者が「性暴力」で人生を棒に振ってしまう根本理由

パワーの行使と乱用の違いを知ろう 2018.05.15

藤岡 淳子
大阪大学大学院教授
一般社団法人「もふもふネット」代表理事

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セクハラ、売春、強制わいせつ……次々と性的な問題行動が明るみになった。
これらの根本にあるものは何か?
パワーの行使と乱用の違いとは?
『性暴力の理解と治療教育』の著者で大阪大学大学院教授・藤岡淳子氏が考察する。

彼らが「性暴力」問題でつまづいた理由

福田淳一財務次官のセクハラと新潟県知事の買春という政治家の性的問題行動の話題が続いていたが、山口達也メンバーの強制わいせつ事件発覚で全て吹き飛んでしまったような感がある。
セクハラ、買春、強制わいせつとラベルに多少の違いはあるが、自分の持っているパワーを乱用して、被害者の意思と自由を抑制し、自身の欲求を押し付けているという意味では、性暴力行動としての共通項がある。
政治家であろうと芸能人であろうと、仕事の面では優秀で成功を収めている人が、「性暴力」の問題でつまづくのは、一体なぜなのか?

被害者に「はめられた」のであって、加害行動をした人は「悪くない」と考えれば、理解できない感じの「もやもや」は生じないし、世の中は「正しい人が力を持っている」という安心感も保てるかもしれない。
あるいは加害者の関係者は、自身の「責任」を問われずに済むのかもしれない。

性暴力の中でも、上記三人に共通するのは、暗い夜道や他人の家に無断で侵入して見知らぬ人を襲いました、というような一般的な性犯罪のイメージとは異なることである。
しかし、現実には、見知らぬ人に襲われるより、知っている人に襲われる性暴力の方がはるかに多いと言われている。
ただし、表に出ることはずっと少ない。

元々の力関係の上下を背景にしてこうした性暴力行動は生じるので、様々な意味で力の弱い被害者が被害を訴え出ることは、さらなる被害をこうむる危険性が極めて高苦なることがある。
1対1の関係性の中で下位に置かれ、被害を受けたとしても、別の関係性の中で支えを得て、より強い加害者に立ち向かえる見込みがあれば表に出せる可能性も少しは高くなろうが、残念ながら、今の日本社会はなかなかその見込みが低いと見積もられる。

例えば、バーでも自宅でも、「呼ばれて行く方が悪い」という論調がある。
こういう成功してパワーを持っている加害者は、パワーの乱用の仕方をよく心得ている。
いわばプロであることが多い。

財務省の政務次官に呼ばれたら、夜中だろうと何だろうと飛んでいかないわけにはいかない、それ自体パワーの公私混同であると筆者には思えるが、日本の職業倫理では、「仕事だから」の一言で通ってしまう。
そして、被害者側にも、もちろん特ダネをつかめるかもしれない、つかみたいという欲求もある。

有名芸能人の自宅に呼ばれたら、もちろん行ってみたい、友達に自慢できる、変なことするような人じゃないと思うし、でもちょっと怖いから友達と行く。
被害者の方は、性行為を望んでいるわけでは決してない。
加害者はおそらくそれを知っていながら、あるいは知っているからこそ、さまざまな「餌」をまいておびき寄せる。

被害者側のニーズにつけ込み、自分にはそれを満たす力があることをちらつかせながらおびき寄せ、結局相手のニーズは踏みにじり、自身の欲求のみを充足させる。
むき出しの身体暴力を振るうほどレベルは低くない。

罠を仕掛け、騙しうちにし、最後は強制力を振るう。
その実態は、周囲にはなかなか知られないし、被害者の方も、騙された自分への屈辱感や自責感も強い。

SNSによる出会いや、金銭を介しての性行為は、比較的シンプルな金力というパワーの乱用で分かりやすいが、いわゆるセクハラ、パワハラと呼ばれるような仕事上の関わりを介しての性暴力で用意されるようなワナや餌は、加害者の暴力行動が糾弾されにくいように、より周到に準備されている。
最初は、慎重に行っているのだが、露見しないのをよいことに、段々調子に乗ってきて、日常生活の中でルーティンになり、やりすぎて、表ざたになることが多い。

暴力とパワーヒエラルキー

ギリシャ神話にあるナルシスの話(ナルシストの語源)をご存知だろうか。
美少年ナルシスは、自分しか愛せない人で、水辺に映った自分の姿に見惚れて、根が生えて水仙になってしまったという話だ。

その話には前段がある。
森の妖精エコーは、全能の神ゼウスの浮気を手伝ったことで、ゼウスの妻ヘラによって「相手の言うことを繰り返す」しかできないという呪いをかけられている。

エコーは、美少年ナルシスに恋をして告白するのだが、こっぴどく振られてしまい、悲しくなって森の奥深く深くへと進み、何も口にせず、ついには、身体は消滅して声だけの存在になってしまう。
今でも山の奥に行って、「ヤッホー」と声をかけると、「ヤッホー」というエコー(木霊)が返ってくる。
エコーの友人の妖精たちは、エコーがこうなったのはナルシスのせいだとし、復讐の女神ネメシスに、復讐を依頼し、ネメシスは、そんなに自分のことが好きならずっと自分だけを見ていろという呪いをナルシスにかけた。

はじめ、これは非行のある少年少女とその親、そして世間のことかと、筆者は思った。
自分のことしか見えていない少年ナルシス、自分がない少女エコー。
親は親で勝手なことをしている。

ゼウスは、人を巻き込んで浮気をし、ヘラは、不満があればゼウスと話し合うべきであるにも関わらず、エコーに八つ当たりをし、ナルシスがエコーを拒否したのはナルシスの自由であるにも関わらず妖精たちはそれを怒り、事の是非善悪に関わらず、ネメシスは、「復讐(処罰)」することによって、何か良いことをしたような気になる。
その関係の中で、ナルシス、エコーは一方的に被害を受け、ヘラは被害を受けて加害を加え、妖精とネメシスは、関係ないのに暴力的に介入し、ゼウスは関係大有りというか、ゼウスが浮気しなければこんな被害と加害の連鎖は生じていないのに知らん顔をしている。
ゼウスがパワーヒエラルキーの最上段にいるからである。

「非行」とか暴力とか言って、その人が悪いかのように糾弾されるが、確かにやった行動は悪いが、結局はパワーヒエラルキーの上か下かということなんだと、「わかった」気がした。
我ながら少しひねくれているようにも思うが、そんなに彼(女)ばかりが悪いのか、そんなに私たちは彼(女)を非難できるのかという思いを拭えない。

パワハラという呼称は、それ自体がパワーの乱用という意味を内包する。
一方、セクハラ、暴力、犯罪といった対人間における被害と加害は、あまり意識化はされていないように思われるが、常にこのパワーの不均衡と、乱用の問題をはらんでいる。
私たち一人ひとりが自身の持っているパワーに無自覚なとき、その乱用を行い、あるいはそれを許容し、社会に暴力を生み出す手助けをしているのではあるまいか。

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人間社会のサークルとトライアングル

有名な対人関係論者であるドナルド・ウィニコットによれば、人間が集団生活を営む上で、二通りの関わり方がある。
一つは、一人ひとりが同じように大切で、存在自体(Being)が尊重される関係である。
一人ひとりが考えていること、感じていることが唯一無二で尊いとされる。

例えば、大切にされている赤ちゃんであれば、その子が何の役にも立たず、寝て、食べて、排泄して、泣いているだけだからといって、ないがしろにされたりはしない。
むしろ大切にケアされる。
「役に立つか」という基準ではなくて、生まれてきて、ここにいるということが何より重視される。

生きることに困難を抱えた人たちの自助グループでは、そうした関わりをサークルと呼ぶ。
メンバーは輪になって、一人ひとりの顔が見える状態で、自身の体験や気持ち、考えを話し、聞かれる。
輪の中に注ぎ込まれた様々な体験から、一人ひとりは自身の命の水を汲むことができる。

誰が偉いとか賢いとかではなく、「上もなければ下もない。始まりもなければ終わりもない」。
自分がどう感じ、何を欲しているのかに気づいて、人に伝え、人のそれを聞き、他者との間で欲求充足を調整していく関わり方である。
対等な横のつながりを基本とする。

もう一つは、人間が集団として何かを達成しようとするときに、役割を分担し、権限とパワーの階層構造の中に位置づけられる縦の関係である。
集団の中で、ある個人が何を成し遂げているか(Doing)によって評価され、評価に応じて成果の分配を得ることが認められる。

これを前述の自助グループでは、トライアングルと呼ぶ。
財力、地位、権限、人気、技術力等のパワーを入手するためにも人間は努力をする。
その努力をしている人、達成できた人として、パワーを持っていること自体が尊敬の対象となりうる。

この関わりでは、何かが正しければ、他は間違いであるとみなされがちである。
結局、何が正しいかより、より大きいパワーを持つ者が言っていることが、「正しい」とされることも多いように思う。

現実には、このサークルとトライアングルは、互いに支え合っている。
どちらを欠いても人間の集団生活はうまく機能しなくなる。

そして、一つの関わりの中でも両方の関わり方が場面や状況に応じて使い分けられるものであるのだが、縦の関係が偏重される達成偏重の暮らしを続けていると、横の関わりがどうやら苦手になるようだ。
現代社会において、生まれではなく、個人の達成に応じて成果とパワーを得られるようになったのは偉大な変革ではあるのだが、得たパワーをどのように使いこなすかまではまだあまり意識が向いていないのかもしれない。

あるいはようやく、パワーの乱用はいけませんよ、皆が不幸になりますよ、やめましょうね、というところまではきたが、現実にはなかなか難しい状態にあるのかもしれない。
パワハラやセクハラがきちんと問題視されるようになってきたのは、私たちがそういう社会を作っていこうとしているという兆候の一つではあるのだろう。

いずれにせよ、集団から賦与されたパワーを自分自身のパワーと勘違いして、立場上承認された公的なパワーの行使以上に、私的な欲求の充足に乱用してしまいがちになる危険性は誰にでもあることは自覚しておく必要がある。
大学の教員などは、それほど大きなパワーがあるとは思えないが、それでも指導している学生にとっては、大きなパワーに見えるらしい。

身近な生活のありようを左右する、よりパワーが上位の人の意向やニーズを忖度して、下位の人が動こうとするのはよくあるように思える。
いつの間にか忖度されることが当たり前になっていく。
他の人のニーズに気づかなくなっていく。

パワーというのは、行使している人には見えにくく、行使される人には抗いがたいくらいに圧倒的に見えるもののようだ。
学校でも、職場でも、達成と縦関係が強調され、対等な関係性や協働どころか、互いの同意の形成の仕方すら十分に目が向けられているとは言えない状況にあるように思える。

親子、先生と生徒、上司と部下、そうした縦関係の中で、目標達成のために全体として機能するよう、より上位にある者の指示に従うことと、上位者が、私的な欲求を満たすためにパワーを乱用することは全く別であるのに、文化全体が、それが混同されることに鈍感であり続けている。
人としてのパワーと職位など立場によって与えられたパワーは別物であるのに、本人ばかりでなく、周囲も混同してしまう。
そのことがセクハラ、パワハラをはびこらせる温床となっているように思う。

被害者の持つパワー

事件の起きた状況では、立場によるパワーの差によって、被害者は圧倒的に不利な立場に陥っているが、実際には、被害者にはちゃんと人としてのパワーがある。
今回、記者と高校生および両親が、きちんと訴え出たことには敬意を抱かざるをえない。

日常生活で関わりのある、パワーを持っている人を告発するというのは、現実には並大抵のことではない。
筆者も表沙汰にはできないいくつかの事件に関わって、黙っていることについて、不甲斐ない気持ちや情けない気持ちを抱いている。

しかし、直接の被害者でもなく、無暗に口に出すことはできない。
それは「闘い」であって、勝てそうにない相手に挑むことであり、さらに傷つき、時間とエネルギーを消耗することであるのは目に見えている。
覚悟と、共に戦ってくれる仲間がいないことには、踏み出せる一歩ではない。

大きなパワーとなるのは、「被害者の落ち度」などという戯言に惑わされることなく、力となってくれる人びとに事実を明かし、傾いたパワーバランスを均衡に戻すことだろう。
そのためには、周囲の人々の理解とサポートが不可欠である。

筆者は、学生などから、セクハラ被害の相談を受けることも多いが、まずはテレビ朝日の記者がやったように、事実を確認するために録音する、あるいは少なくとも事実を克明に記録することを勧める。
告発の準備を整える。その上で、安心と安全を確保するために信頼できる人に相談し、自分を守る体制を整える手伝いをする。
加害者の嘘や詭弁をどのように見抜き、反論するかを助言することもある。

そうした対応策で、パワーの均衡がとれてくれば、それで収まっていくことも多い。
初期の段階で、パワーの乱用をきちんと認識し、周囲の人々と協働して、対応をしていけることが極めて重要である。

とはいうものの、被害に繰り返しあい、あるいは極めて深刻な危害を加えられ、しかも誰からも助けを得られない状態が続いていると、本来は持っている力を無力化されて、被害に遭ったことが自身のせいであるかのような思考にはまっていってしまうこともある。
周囲の人々が、加害する側の言い訳や詭弁を見抜き、被害者の置かれた状況を理解しサポートすることは、被害の悪影響を少しでも低減させ、ひいては加害行動を減らすために不可欠なピースとなる。

そんな風に言われることは被害者にとっては心外かもしれないが、福田氏や山口氏は、ようやく告発されてよかったね、もっと早く告発されていればよかったのにね、でも今からでも遅くないから、やり直そうと言いたくなる。
もっと早く、ことが小さなうちに訴えられ、それが誰かに耳を傾けられ、対応がなされていれば、被害者を少なくできたし、加害を行った人にとっても、失うものや回復にかかる時間と努力も多少は少なくできたのにと思う。

自身の犯罪行動や落ち度を公開され、その過ちを認め、謝罪し、償いの行動をとっていくことは、実際にはとても大変なことである。
本当に責任を果たすとなると、自身の生き方を振り返らなければならなくなるからである。

それを行ったのであれば、筆者は、過去の行動に関わらず、その人にも敬意を感ぜざるをえない。
加害を行った人のことを考えるのであれば、周囲の人々は、かばうとか、非難するとか、はじき出すと言うよりは、共にいて、どこがまずかったのか一緒にきちんと考え、回復の努力を見守ることがよいと思う。
性犯罪の被害と加害、セクハラ、パワハラを減らすには、私たち一人ひとりが、パワーの行使と乱用の違いについて知り、乱用する際に使われる言い訳や詭弁に気づいてそれを許容せず、早めに健康な生活に戻ってくる手伝いができるようになることが今望まれている。

[出典:成功者が「性暴力」で人生を棒に振ってしまう根本理由(藤岡 淳子)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55591 ]

パワハラをする方も悪いですが、それを許容している社会にも問題があります。
パワーをコントロールできない人がパワーを持つべきではないと思うのですが、実際は難しい話です。

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