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東大卒哲学者・千葉雅也先生が語る「勉強する子」を育てる唯一の方法

投稿日:

東大生・京大生にいま最も読まれている本”として話題の本、「勉強の哲学」の著者である千葉雅也先生のお話が興味深かったので以下に引用します。
「勉強デキ過ぎてキモがられた」東大卒哲学者のトラウマ

「勉強デキ過ぎてキモがられた」東大卒哲学者のトラウマ 12/13(水) 15:00配信

東大生・京大生にいま最も読まれている本”として話題の『勉強の哲学』。
4月の発売から現在まで順調に版を重ね、人文書としては異例の大ヒットとなっている。

勉強についての指南書が次々出版される中、なぜこの本だけがこれほど支持されるのか。
日本トップクラスの頭脳集団の心を掴んだポイントとは?

その理由を、著者の千葉雅也自身が分析。
さらに、これまでの勉強との関わり方や自身の体験から導き出した“勉強できる子どもの育て方”まで、存分に語ってもらった。

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頑張れば頑張るほど、ズレていく

『勉強の哲学』はなぜ東大生・京大生にウケたのか。
それは、僕自身の経験に基づく内容に、彼らが強く共感する部分があったからだと思います。

例えばこの本の中にある“小学生の頃、うっかり難しい言葉を使って友達にからかわれたり、キモがられた”という記述はそのまま僕の実体験ですが、まわりの研究者仲間に聞いてみると、こういったことは学生時代にみんな経験しているんですよね。
それを聞いて僕は“ああ、これは自分だけじゃない、一般にもいえることだ”と思った。

いわゆる受験戦争を乗り越えてきた人たちはみな、勉強を頑張ったことで周囲とズレが生じたというトラウマがあるんです。
『勉強の哲学』を書くにあたり、そういった人たちが共感できる部分をあえて集めたところはあります。
なぜなら、このトラウマに焦点を当てた本というのが今までなかったからです。

“学校の勉強なんてクソくらえだ! ”という感じで生きてきた人が自分なりのやり方を貫いて成功した話、勉強しなかった人への応援歌といったものはたくさん書かれているのに、逆に勉強したことで不幸になった人への応援歌はなかった。

きっと多くの人は、勉強すると何かトクをするとか、社会的にいい立場に行けると思っているんでしょうね。
でも必ずしもそうじゃない。

勉強することで、みんなが楽しめることが自分だけ楽しめなくなる、ノーマルさを失うということがある。
これは『勉強の哲学』の大切なテーマです。

勉強とは「ノーマルでなくなる」こと

その背景の一つに、LGBTに代表されるようなマイノリティの問題があります。
これについては元・ナタリーの唐木元さんと話した時に「この本で“キモい”をキーワードにしているの、クィアの問題もあるでしょ」と指摘され、僕自身そこで初めて気付きました。
書いている時は無意識だったけれど、言われてみればそうだな、と。

「クィア(queer)」とはもともと同性愛者に対する蔑称で、“オカマ”とか“変態”といった意味合いで使われてきた言葉です。
ところが、LGBTの権利問題に立ち向かっていた人たちはそれを逆手に取り、自分たちを指す言葉として積極的に使い始めた。
揶揄されるような言葉をあえて自ら引き受けることで、その価値を転換してしまうというやり方。

これを「クィア理論」といい、現在では性的マイノリティの生存戦略の一つになっています。
クィアな、あるいはLGBTの人たちは、“キモさ”に対する自意識、それとどう付き合っていくかということに対してとくに繊細な感覚を持っているといえるでしょう。

“価値の転換”をイメージしやすいようにもう一つ例を挙げておくと、障害者運動の中にもこれと似た動きが出てきていますね。
それは“その人に特異な身体を持っている”というふうに、障害をひとつの価値として捉える考え方です。

障害がある=欠けている、違っているという価値感覚は、あくまで「これがノーマルだ」という基準から見てのこと。
それと戦うために、基準そのものを複数化してしまっているのです。

僕が『勉強の哲学』で「キモい」という言葉を使う時には、このクィア的な発想が背景にあると言える。
ノーマルを基準としたモノの見方からの否定的な価値設定をどう転換してやるか、ということを考えているわけです。

重ねて言いますが、勉強とはノーマライゼーション、つまり“よりノーマルへと近づき、ノーマルな基準の中で偉くなること”ではありません。
ノーマルの基準からズレたところで、ノーマルな人たちに後ろ指さされながらも、そこで独自のフィールドを展開すること。
これこそがこの本で提唱する“勉強”なんです。

先生なんて、ガイドにすぎない

ある意味、一般社会から見てマトモでなくなるというような状態まで想定して勉強のことを語った本というのは今までなかったのではないでしょうか。
ではなぜ、こういった本を書こうと思ったのか。
僕が『勉強の哲学』を書いた動機についても少し触れておきます。

僕は立命館大学の准教授として現在は大学院で教えていますが、その授業の一つに、入ったばかりの新入生が自分で本を読み勉強していくためのガイダンス的な授業があります。
そもそも大学院とは、何かを研究しようと思っている人たちが来る場所です。

ただ授業に出てればいいってもんじゃない。
大切なのは自分で本を読んで勉強することで、先生の話はそのためのガイドに過ぎません。

またうちの大学院には、大学からそのまま進学した人だけでなく、キャリアアップのためにもう1回勉強しようと入学してきた社会人学生も多くいます。
そういった幅広い人たちに向けて、自分でモノを考えるための基礎が学べる、授業の副読本としても使えそうなものを作りたかったんです。

勉強や研究をするうえでの基本の心構えを教える入門書には名著がいろいろがあります。
なかでも有名なのは外山滋比古さんの『思考の整理学』や、戸田山和久さんの『論文の教室』などでしょうか。
『勉強の哲学』はこれらをライバル視して書いた部分もあります。

“東大生・京大生に読まれている”というのは、最初からそれを狙っていたのか? と問われれば、そういった意識はありました。
だって東大は僕の出身校でもありますからね。

千葉雅也はどう学んできたか

先ほどから何度も出ている “東大生・京大生に~”という帯の一文ですが、一般書店の売り場においてこの帯がもっとも刺さるのは、東大生・京大を目指す若者より、自分の子をいい大学に入れたいと願う親たちなのではないか、との指摘を受けました。

そこで、僕自身のことも少し話してみましょう。

小さい頃から勉強はできたのかというと、そうですね、できた方だとは思います。
とはいえつまずいた経験もいろいろあって、例えば小学校の頃は、九九がなかなか覚えられなかったりしました。

でもそうかと思えば、モノの名前を覚えるのは昔からものすごく早かった。
珍しい生きものとか恐竜の名前って男の子はみんな好きですよね。
僕の場合は深海魚や微生物で、幼稚園の頃はその学名をたくさん覚えていました。

両親が二人とも美術系の学校を出ていることもあり、遊びといえばお絵描き。
何かを考えるために図を書くのもこの頃から好きでした。

受験戦争ももちろん経験しています。
小5から塾に通い、地元の国立大の付属中学校を受験しましたが、学科に合格したあとの抽選で落ちて、公立中学に進学しました。

その塾にはそのまま高3まで通ったのですが、今振り返ると、そこの先生はかなり発展的な内容を教えてくれました。
授業中にジョークを飛ばしたり大袈裟なジェスチャーを加えるといったことにもかなり影響を受けましたし、それは今の僕の大学での授業スタイルにも繋がっています。

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「勉強する子」を育てる唯一の方法

僕の場合はざっとこんな感じなのですが、子どもに勉強させるためにはどうすればいいか……。
僕が自分の経験から見つけた、唯一これだろうというアドバイスはあります。
「親が本を読んで勉強すること」です。

親がまずその姿を見せなければ、子どもは勉強するようにはならないと思います。
あるいは、何かモノを作るのでもいいと思う。
うちは多趣味な父のおかげでそういう環境で育ちましたし、研究者仲間の話を聞いていても、こういった親子関係がある場合が多いです。
親じゃなくてもいい。親戚のおじさんでも近所のおばさんでも、幼い頃のごく身近な距離にそういった存在がいることが重要なのでしょう。

成長の過程で「何の見返りもなくていい、勉強すること自体が楽しい」という感覚が育つことが重要だと思うんです。
それは楽しみのためのモノ作りでもいい、モノ作りって必ず勉強を伴いますからね。
何かに個人的な興味に「無償で夢中になっている姿」を親自身が示すということです。

よく聞く“テストでいい点を取ったらご褒美”のように、見返りや対価を得られるというだけでは、ある程度まではいけるとしてもその先が持たないでしょう。
勉強を続けるための原動力として“享楽”が生まれる必要がある。
そのためには、親自身が何かを学んで純粋に享楽しているところを見せる必要があると思います。

「お前の将来のためだから」なんて、間違ってもやめてくださいね。
考えただけでゾッとします。
自分は勉強しないけど、子供には勉強させたいというのは、ダメです。
子供に勉強させたかったら、自分が勉強を楽しむのがまず第一なのです。

人生の根底に革命を起こす「深い」勉強、その原理と実践。
勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。

だが人はおそらく、変身を恐れるから勉強を恐れている。
思想界をリードする気鋭の哲学者による本格的勉強論。

優れた教師は生徒を「解散」させる

教育において大切なのは、大人たちが勉強を楽しむ姿を見せること。
ですから僕は自分の授業でも、僕自身が楽しそうにしていること、それを伝えることを大事にしています。

今の大学の授業では、「カリキュラムをきっちり組んで」「シラバスには到達目標を分かりやすく書いて」といったことを非常にうるさく言われます。
まるで、お金を払い一定の時間授業に出たらどれだけのことが得られるかを明確に示せ、とでもいうように。

僕はまったくもって勉強の本質、教育の本質に反していると思いますね。
お金を払えば、なんて自動販売機じゃああるまいし、そんなことではロクなことにならない。

僕が思う大学の魅力とは、先生一人ひとりが一国一城の主であることです。
専門分野に対して自分ほど楽しんでいる人間はいない! という、自信というかはキモさでもって、周囲を圧倒するような。
学生たちはそのオーラに感化されて、自分も何かやってみようとするものではないでしょうか。

僕がいいなと思った先生はみんな、それぞれに孤独な享楽を持っていました。
そういう先生に出逢うと、人は“追いつきたい”とか“ああなりたい”ではなく“あの先生のように独特になりたい”と願う。

だから、優秀な先生は人を囲い込まない。
それぞれの道へ邁進させ、魅力的な力で人を“解散させる”のが素晴らしい先生なんです。

最後に、話を本に戻しましょう。

『勉強の哲学』はもともと講義録として出すつもりで、最初は『勉強論講義』という仮タイトルがついていました。
なので文体も講義のように、僕が喋っている形で書いています。

教師に大切なのは勉強に対する享楽を見せること。
その享楽が、普段の講義のようなスタイルのこの本から読んだ皆さんにも伝われば嬉しいですね。

〈取材・構成/山﨑恵〉

———-
千葉雅也(ちば・まさや)
1978年栃木県生まれ。
東京大学教養学部卒業。
パリ第10大学および高等師範学校を経て、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース博士課程修了。
博士(学術)。哲学/表象文化論を専攻。
フランス現代思想の研究と、美術・文学・ファッションなどの批評を連関させて行う。
現在は、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授
———-
千葉 雅也

[出典:「勉強デキ過ぎてキモがられた」東大卒哲学者のトラウマ(現代ビジネス)(Yahoo!ニュース > https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171213-00053792-gendaibiz-soci&p=1 ]

子どもに勉強させるのって難しいですよね。
自分が「もっと勉強しておけば良かった」と思っているから、遊んでばかりいる子どもを見るとつい「勉強しなさい」と言いたくなってしまいます。

でも、千葉先生の言う通り、”親がまずその姿を見せなければ、子どもは勉強するようにはならない”ですよね。
もっと勉強しなくちゃと思いました。

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