NHK教育「ねほりんぱほりん」《少年院に入っていた人》2017年10月4日
2017年10月4日放送「ねほりんぱほりん」より
あなたには、消せない過去がありますか?
思春期、ほんのささいな気持ちでやった万引き、ケンカ…。
そこから道を踏み外し、気がつけば「少年院」「少年刑務所」に。
その代償は大きすぎました。
後の人生にも大きな影響が降りかかり、思うようにならない日々が待っていました。
今夜は、消せない過去を持ちながら懸命に生きる人生を、ねほりはほり…
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本日のお客様は「少年院に入っていた」
少年院に入っていたシュウジさん(仮名)。
少年院に入っていたミホさん(仮名)。
二人は夫婦で、二人とも少年院に入っていました。
夫のシュウジさん(仮名)35歳。
暴走行為や窃盗などで、逮捕歴15回、少年院送致2回。
妻のミホさん(仮名)30歳。
ひったくり(強盗)や覚せい剤使用などで、逮捕歴1回、少年院送致1回。
現在は更生し、二人の子どもと暮らしています。
なんで荒れてたの?
シュウジさんは中学1年生のとき、自分に自信がありませんでした。
あるとき、規則違反をして先生に注意されたとき、反抗したことがありました。
すると、それを見ていた友だちが来て「先生に反抗するなんてすごい」と褒めてくれたそうです。
勉強もダメだし部活もダメだった自分でも、周りから認めてもらえることがあると感じたのです。
そこから少しずつ、タバコを吸ったり髪を染めたりしていったら、また「カッコイイ」と言われるようになって、どんどん悪い道に進んでいきました。
母親は夜中まで探し回ったり、真面目になってくれることを願っていました。
学校も家も嫌になって、暴走族だけが自分の心地良い居場所になっていきました。
ミホさんは、保育園時代から万引きをしていました。
1歳のときに親が離婚、その後「母子寮」に入りました。
母子寮とは母子生活支援施設で、自立のために生活の支援が必要だと判断された場合に、母と子供が入居する施設です。
施設にいた同じ年頃の子どもと、物心ついたときから万引きをして、罪悪感もありませんでした。
母親が好きで迷惑をかけたくなかったのですが、ごめんなさいが言えず、壁を蹴ったり暴言を吐いたりしていました。
そして16歳で少年院送致になりました。
少年院行きが決まったときどんな心境だった?
シュウジさんも16歳で少年院に行きました。
裁判官から少年院送致と言われたときは、頭が真っ白になって泣きました。
少年院に入る前は暴走行為をしながら「年少(少年院)上等!」「警察上等!」と言っていましたが、いざ入ることになったら泣いてしまいました。
1度目の少年院は、バイクを盗もうとして持ち主が現れ、逃げたら財布を落としてしまい、それで名前・住所がわかって捕まってしまいました。
次からは財布にチェーンをつけようと考えたほど、最初の少年院では反省はしていませんでした。
少年院の先生には「真面目になります」と言っていたのですが、心の中では「出たらどんな悪いことをしようか」と考えてばかりいました。
少年院での生活はつらくなかった?
【ある少年院でのスケジュール】
AM
7:00起床・掃除・洗濯
8:00朝食
9:00朝礼・農作業学習
PM
0:00昼食
1:00木工科目学習
3:00危険行為(暴走行為)についての学習
4:00帰寮・自主学習
5:00夕食・自主学習
8:00ミーティング
9:00就寝
朝7時に起きて9時に就寝。
決められたプログラムをこなしていきます。
女子は、性教育学習、そろばん検定、パソコン資格取得などです。
決められたこと以外はしてはいけません。
おしゃべりも絶対にしてはいけません。
笑顔も禁止です。
中にいる人たちと仲良くなったら、出所後に一緒に悪さをするからです。
ミホさんの場合、中でできた友だちと連絡をとるために、母親に宛てた手紙の中にその人の電話番号を暗号のように斜めに入れていました。
出院後に電話をしてみましたが、着信拒否になっていて連絡を取ることはできませんでした。
………………………………
少年院は全国に52か所、年間入院約3000人です。
番組では、シュウジさん・ミホさん同様に、少年院に入ったことがある人たちに取材してみました。
「少年院で何が一番つらかった?」という質問に対して多かったのが【私語厳禁】というルールでした。
少年院に入っていた人たちに聞いた「そんな環境で少年院では何が起きている?」
【トイレットペーパーの切れ端で密談】
シュウサクさん(仮名・20歳)傷害致傷、入院期間6ヵ月
トイレットペーパーの端をちぎって、鉛筆で「出たら〇〇したくない?」「〇〇一番食いたいよ~」と書いて丸めて個室のトイレに置いておきます。
入れ替わりに入った人がそれを見るというわけです。
【口パクで…】
アツシさん(仮名・26歳)暴走行為、入院期間5ヵ月
口パクもあります。
「ダルくね?」と口パクで言うと向こうも「間違いない」「だよね」みたいな。
それだけでも、少年院の中では笑えてくるのです。
そんな状況を利用して仲間を陥れることもあったといいます。
わざと笑わせて、自分はとっさに隠したりして、「ハハーッ」と笑ったら懲役房です。
少年刑務所に入っていた人たちに聞いた「少年刑務所の中では何が起きている?」
【少年刑務所】……罪の重さによって教育よりも刑罰を科す方がふさわしい場合に送られます。
(※20~26歳の聖人も入ることがあります)
【地獄の奴隷生活】
ユウキさん(仮名・35歳)強盗致傷
「オヤジ狩り」という強盗致傷で懲役5年の求刑が出て少年刑務所に行くことになりました。
少年刑務所の中は地獄のような感じで、奴隷みたいに上下関係が激しいです。
雑居房という8畳くらいの部屋に8人で生活します。
時間によって私語が許される少年刑務所もあります。
先に刑務所に入った人が先輩です。
コッペパンに歯磨き粉をかけて「食べろ!」と言われ、ミント味のパンを食べさせられた人もいました。
チ〇チ〇の皮をヒモで結ばれてトイレに行けなくされたりとか、気の休まるところがありません。
【俺はセミじゃねえ】
ケイさん(仮名・42歳)傷害、強盗
思ってもいないことをやらされたりします。
壁にひっついて「ずっとセミのまねしとけ!」とか。
意味は何もなく、ただ皆の暇つぶしです。
それを見て笑って楽しむという感じです。
「いいよ」と言われるまでずーっと続けないとダメです。
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少年院を出たあとはどうしたの?
シュウジさんは、出院したその日に無免許でバイクに乗って、暴走行為をしました。
捕まらないと思っていましたし、むしろ少年院に入ったことが不良のキャリアアップになると思っていました。
2度目の少年院送致は、集団暴走・強盗・金庫破りが原因でした。
大きな金庫をみんなで山に担いでいって、バールでこじ開けます。
2回目の少年院、つらかった?
そして2回目の少年院に2年間入っていました。
中では不良のキャリアアップのために、読書や筋トレに励みました。
本物の不良になるためには、腕力も必要ですが頭も良くないといけないと考え、新聞を毎日読んで、政治・経済・国際・社会などを精読しました。
表と裏で生きていくために必要かと思って、フランス語も勉強しました。
2回目の少年院を出た日に、バイクに乗って暴走行為をしました。
そして、暴力団員の舎弟になりました。
番組で、少年院に入ったことがある人に「少年院に入って心を入れ替えることができた?」とアンケートをとったところ、YESと答えたのは8%だけでした。
少年院を出たあとは更生した?
ミホさんは、出院したあとすぐに、知り合いの紹介で工場で働きだしました。
初めて真面目に働いて、悪いことも全然していませんでした。
しかし、働き始めて半年後、ヘルプで行った別の工場で、昔一緒にクスリをやっていた不良仲間と偶然再会し、彼女が社長にミホさんの過去を密告したのです。
社長から昔の話を切り出され、「今度〇〇しようよ(Hな関係)」と見下したように言われてしまいました。
一生懸命にやっていたのに、人間不信に陥りました。
それがきっかけで男遊びするようになり、ナンパスポットへ友だちと行ったときにシュウジさんと出会いました。
お互い少年院にという話はいつした?
お互いの体に入れ墨が入っていたし、中卒ということで「仲間かな」と…。
結局いつ更生すんのよ?
今は、暴力団員の舎弟は辞めました。
そのきっかけになったのは、シュウジさんが24歳のときにミホさんが妊娠しました。
暴力団準構成員として生きていたシュウジさんでしたが、ミホさんの妊娠を機にある決意をします。
2人で夜景を見ていたとき、このまま子どもが生まれてきたらどんな生活になるのかなと考え、生まれてくる子が生まれる前から不幸が決まっているのは嫌だと思いました。
それまでは、真面目になろうとは思ったこともなかったのですが、「今日から変わろう」と決心しました。
そんな容易に暴力団抜けられるの?
2つ上の先輩が先に暴力団を辞めたのですが、逃げてて捕まえられたときは、頭から灯油をかけられて殺されそうになっていました。
「今日から逃げよう」と、兄貴分に「お世話になりました。縁を切らせてください」と置手紙を書いて、兄貴分の車のワイパーに挟んで逃げてきました。
ミホさんとしては、「子どもがいればそのままの生活で満足」と思っていたので、ボーリング対決をしました。
シュウジさんは「真面目になるために遠い土地に逃げたい」、ミホさんは「地元にいたい」だったので、ボーリングで決めることにしました。
「子どもとミホを大事にする」と言われたことが心に染みて、「ついていこう」と決心しました。
逃げるのは大変だった?
暴力団は、逃げた相手の親戚・知り合いなど、少しでも縁がある場所を捜すので、まったく知らない土地に逃げました。
お金がなかったので、最初は車の中で寝泊まりしていました。
妊娠5か月なのに、1週間で3kg痩せました。
10日ぐらいお風呂も入らず、ずっと車中生活でした。
仕事を探すため、求人誌を見てバイトの面接に行きました。
塀の中にいた空白の期間があるので「これは何なのか?」とか、住所なども聞かれ、結局採用されませんでした。
家を借りるために車を売り、そのお金でアパートを借りて、再び就職活動を始めました。
完全歩合制の仕事しか受からず、1か月の給料が10万円いかないときもあり、お金がどんどんなくなっていきました。
………………………………
少年院を出たあと、まともな生活ができず、初めて後悔したという2人。
番組では、他の人たちにも「どんな時に後悔を感じたのか」取材しました。
少年院に入っていた人たちに聞いた「初めて後悔した瞬間は?」
【元妻を駅で見かけて】…10代で結婚したユウキさん(仮名・35歳 強盗致傷)の場合
出所してから地下鉄に乗っていたら、別れた妻が歩いていました。
話しかけはしませんでしたが、後ろについていったら、そのままオジサンと肩組んで歩いていきました。
知り合いから、水商売をしていることは聞いていたので、お客さんと一緒に同伴出勤だったのです。
その姿を見たときに、自分のせいで見ず知らずのオジサンと、お金のために肩組んで歩かなきゃいけない人生を歩ませてしまった、子どもも2人いるのに、というのを目の当たりにしたときに、すごく申し訳ない気持ちになりました。
【やっと呼ばれた同窓会で】…少年院を出て20年たったケイさん(仮名・42歳 傷害・強盗)の場合
中学校の同窓会に一度だけ呼んでもらえて「やっと呼ばれた!」と思っていたら、その前日に「やっぱりやめてくれ」と言われました。
「お前が来ると『来ない」っていう子が何人かいるからやめてほしいな」と言われたらのは結構ショックでした。
………………………………
子どもが産まれるときはどうしたの?
親戚にお金を借りてなんとか出産しました。
子どもが神聖なものに感じて「私なんかが触っていいのかな」と躊躇しました。
自分が汚い人間だと思っていたからでした。
子どもが産まれたらいい方向に?
好きな服を買ったり、好きなものを食べたりして、借金が増えていく一方でした。
300万円くらい借金はありました。
犯罪こそしませんでしたが、犯罪以外の感覚は、犯罪者の頃とまるで変っていませんでした。
欲しくなったら少しでも楽に手に入れたいという考えは変わりませんでした。
普通の人なら車が欲しければ働いてお金を貯めますが、犯罪者の頃は「欲しければ盗ればいい」という感覚でした。
盗みはしませんでしたが、欲しいものは消費者金融から借金して買いました。
不良文化の感覚が抜けていなかったのです。
夫が浪費してたら大変だったでしょ?
ミホさんはお金を稼がないとと思い、飲み屋やキャバクラで働くのは嫌だったのですが給料がいいので「どう思う?」と夫に聞いたら、本当は反対してもらいたいのに「いいんじゃないの」と言われたときは「大事にすると言ったのに…」と思ったらつらくなりました。
夫は家にも帰ってこなくなり、「友だちも家族もすべて捨ててついてきたのに…」と愛想を尽かしたミホさんは、「離婚したいです。ありがとうございました」と置手紙をして家を出ました。
シュウジさんが家に帰ると、荷物もなくなっていて、手紙を見たときは「すべてが終わったな」と思い、涙が止まりませんでした。
妻子が出て行ったあとどうしたの?
そこで初めて自分の中でスイッチが入りました。
甘えられるものもなくなったので、小さなプライドは全て捨てて真面目にやっていこうと。
そして、いろんなところに面接に行って、介護の仕事を始めました。
交通費を浮かすために自転車で通ったりして。
夜に飲み歩くこともやめ、貯金をコツコツして、2年ぐらいで50万ぐらいになりました。
「もう一度チャンスをくれ、帰ってきてくれ」と頭を下げてお願いをしたら、悩んだ末に帰ってきてくれました。
もう完全に更生したってことですよね?
自分では、完全に更生していないと思うようにしています。
まだまだ自分は危ないところがあると思いながらやらないと、すぐに戻る危険性があるからです。
今は幸せですが、幸せになればなるほど、悪いことをしていたときには考えもしなかった被害者のことを考えるようになりました。
被害者にも幸せな家族があり、自分が軽い気持ちで犯した犯罪が、その家族を悲しませてしまう。
過去を消すことはできないので、「更生した」と言ってはいけないと思っています。
今は、少年院を回って講演活動をしています。
過去を振り返ってどう思う?
もしタイムマシンで戻れるなら、犯罪をしない選択をしたいです。
シュウジさんは、勉強が出来ないから、部活が出来ないから自分はダメだと思ってしまいました。
別に勉強が出来なくても、スポーツが出来なくても、例えば親に優しいとか、友だちに優しかったりとか、一つでもみんな良いところはあるということを中学生たちに話したいと思っています。
息抜きには、好きなヤクザ映画のDVDを観ています。
観るだけで、戻ることは絶対にしません。
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