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ソフトバンク和田投手が「自分から若手にアドバイスをしない」理由が深い

投稿日:2018年4月25日 更新日:

メジャーリーグでも活躍した福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手。
彼が「自分から若手にアドバイスをしない」という理由が深いなあと思ったので紹介します。

ソフトバンク和田投手が若手に自分からアドバイスをしない3つの理由

4/17(火) 6:00配信

「もともと、たいして才能ある野球少年ではなかった」――
自身のことをそう振り返る福岡ソフトバンクホークスの現役エース・和田毅投手。
スポーツ万能というわけでもなく、天才的なセンスがあるわけでもない彼が圧倒的な結果を出せている理由は何なのか? 
球界きっての「思考派」と言われる和田氏の連載「練習について僕が思うこと」の第9回は、「若手との自主トレで気をつけていること」。
(構成/田中周治 写真/繁昌良司)

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● 後輩と「練習」するときに、年長者として意識すること

僕らプロ野球選手のほとんどは、毎シーズンオフの期間を、2月から始まる春季キャンプに向けた身体づくりのための「自主トレーニング」にあてている。
以前は、正月明けから1月末まで自主トレをするのが普通だったが、最近は12月中旬あたりから海外などに行き、本格的に始動する選手が増えてきているように思う。

トレーニングでは練習相手が必要なので、たいていの場合、何人かの選手で集まって行うのが一般的だ。
僕も毎年のように数名の若手選手とともに汗を流している。

今年の参加メンバーは、伊藤祐介(27歳)、田中正義(23歳)、笠谷俊介(21歳)、斎藤誠哉(21歳)の4名。
いずれも、「和田さんと自主トレをしたい」と言ってくれた、ホークスの後輩投手たちだ。
自分一人だと、どうしても妥協してしまいそうになることもあるので、彼ら若手とともに練習に励む機会は、僕にとってもとても貴重だ。

10歳以上も年齢の離れた彼らとの関係性を、ひと言で言い表すのは意外と難しい。
僕らプロ野球選手は、同じチームメートであっても、基本的にはいわゆる「個人事業主」なので、企業で働くビジネスマンの方たちの上司・部下関係とは少し違う。

彼らにアドバイスをする機会がないわけではないが、だからといって師弟関係があるわけでもない。
あえて適当な言葉を探せば、「先生と生徒」というのがいちばんしっくりくるような気もするが、学校の先生のように一方的に勉強を教えるスタイルをとるわけではないし、僕自身が彼らから教えられることも多い。

このような独特の関係性のなかでの話なので、読者の皆さんに直接役立てていただけるようなヒントにはならないかもしれないが、今回はこうした集団での「練習」において、年長者としての僕が注意していることをお伝えしていきたいと思う。

● プロだからこそ、自分からはアドバイスしない

まず僕が気をつけているのが、「自分から進んでアドバイスしない」ということだ。基本的に僕は、後輩から質問されたことにしか答えないようにしている。
「フォームのこの部分を改良すれば、もっとよくなるかもしれないな……」と内心思っていても、僕のほうから彼らに助言することはない。

なぜなのか? 理由は3つある。

1つは、あまりにも当たり前すぎて拍子抜けされるかもしれないが、本人が自発的に「知りたい」「学びたい」と思ったことでなければ、いくらこちらが熱心に教えてもあまり意味がないと僕が考えているからだ。
僕たちはプロの選手であり、アマチュアではない。個々人が自ら「もっとうまくなりたい!」と思わなければ成長はない。

今年の自主トレのメンバーも、決して僕のほうから「一緒にトレーニングをやろう!」と誘ったわけではない。
向こうから自発的に「和田さんのトレーニングに参加したい!」と言ってきたピッチャーが、今年はたまたま前述の4人だったというだけの話なのだ。

2つ目の理由は、「彼らが積み上げてきた野球」を尊重したいからだ。
たとえどんなに年齢が離れていようと、僕たちはそれぞれ、アマチュア時代にあげた一定の実績を評価されて、この世界に入ってきた「プロ」である。
そのことに対するリスペクトは忘れてはならないと僕は考えている。

ピッチャーの投球フォームは、非常に微妙なバランスの上に成り立っていて、少しいじるだけでも、全体が大きく崩れかねない。
だから、フォームの欠点が部分的に修正されたとしても、長所まで消し去ってしまう危険性すらあるのだ。
生半可なアドバイスによって、彼らの武器まで奪うようなことになっては元も子もない。

僕が若手に自分からアドバイスをしない3つ目の理由は、そもそも僕が「投手コーチ」の立場にあるわけではないからだ。
言うまでもなくコーチは教えることが仕事の「プロ」である。僕がその仕事の領域を侵すわけにはいかない。
また、前述の理由ともリンクするが、僕のアドバイスが功を奏さなかった場合……もっと言えば、悪いほうに転んでしまった場合、僕にはその責任の取りようがない。

たとえば、先輩社員が後輩に「このやり方でやってみたら?」とアドバイスしたとして、もしその後輩が失敗をすることになっても、先輩にはあとからフォローやカバーをするチャンスはあるのではないだろうか。

しかし、プロ野球の世界では、そんなチャンスはまずない。
彼らが試合で打たれてしまっても、同じ投手の僕には打撃でフォローするわけにもいかない。
それに、彼らが試合で出した結果は、ダイレクトに彼らの評価に現れ、その後の年俸や選手生命にも影響してくる。

投球フォームという微妙なものにメスを入れるならば、アドバイスをする僕にもそれなりの覚悟が必要だし、アドバイスを受ける側にも同等の覚悟を持ってもらいたい。
実際、大学時代に僕がパーソナルトレーナーの土橋とともに、投球フォームの改良に取り組んだ際も、「以前よりも悪くなるか、改良することで怪我するかもしれない。でもよくなるなら……」と最初は覚悟を持って臨んだのを思い出す。

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● 「選手がわかる言葉」に言い換える「通訳」になる

以上3つの理由により、僕は自分から進んで若手にアドバイスすることはしない。
しかし、彼らから助言を求められれば、もちろん、自分から伝えられる限りのことは伝えるようにしている。

自主トレでは、僕のコンディションに合わせてパーソナルトレーナーの土橋が全体のメニューをつくってくれているが、その合間に若手から質問が出れば、僕と土橋の2人でそれに答えていくことになる。
そのとき僕がもう1つ意識しているのが、「通訳になる」ということである。

投球フォームにおいて決定的に重要な「下半身の動き」を例にとろう(僕はサウスポーなので、左腕投手のフォームを念頭に置いた説明になっていることに注意!)。
投球動作において、僕が最も大切にしているのが、右足を上げて、ホームベース方向へ踏み込む直前の姿勢……つまり、軸足の左足で直立したときの体勢である。
この後、自分の左のお尻にしっかりと体重を乗せて体重移動をする感覚が得られないと、自分はいいボールが投げられないように感じる。

これは「パワーポジション」と呼ばれている姿勢であり、投球動作に限らず、人間が最も力を出しやすいスポーツの基本姿勢として知られている。
実際、スキージャンプの選手が踏み切る直前の姿勢や、ウエイトリフティングの選手がバーベルを押し上げる際の姿勢、と言えばイメージが湧くのではないだろうか。

若手投手へのアドバイスをするとき、いつも土橋はきわめて理論的な話し方をする。
決して感覚的な言葉での説明ができないわけではないだろうが、あくまでもプロのトレーナーとして科学的根拠に基づいた事実だけを伝えるように気をつけているのだと思う。

パワーポジションについて伝えるとき、彼は「重心にお尻を乗せろ」などと感覚的な言い方をするよりは、まず最初にバイオメカニクスに裏づけられた説明をする。
たとえば、意識する筋肉の名前だったり、その際に働かせる筋肉の名前だったり。

僕も早稲田大学時代にバイオメカニクスを勉強していたこともあり、こういう言い方は僕にとっては理解しやすいが、自主トレを一緒に行う若手選手にとっては難しかったりする。
たとえば、土橋にいきなりいろいろな筋肉の名前を言われても、具体的に動きをイメージできない選手も多い。

そういうときには、同じ投手の立場から、僕が土橋の言葉を「投手の言葉」に置き換えて、代わりに伝えるようにしている。
投手だからこそ理解できる「感覚的な言葉」というものは確かにある。
僕が「通訳」として間に入り、バイオメカニクスの専門用語を「ピッチャー語」に翻訳することで、若手投手たちも理解がしやすくなり、土橋に説明された筋肉の場所、筋肉のイメージがよりわかりやすくなることがあるのだ。

集団で練習するときには、一種の共通言語があるに越したことはない。
しかし、メンバー全員がそれを共有しているとは限らないだろう。
そういうとき、若手メンバーにも理解できる言葉に「翻訳」するのは、年長者である僕の役割なのだと考えている。

和田毅(わだ・つよし)

1981年生まれ。プロ野球選手(投手)。
福岡ソフトバンクホークス所属。左投左打。
島根県出雲市出身。浜田高校ではエースとして甲子園に出場。
早稲田大学では東京六大学野球の奪三振記録を大きく更新し、「ドクターK」と呼ばれた。
プロ入り後(福岡ダイエーホークス・当時)、1年目からローテーションの一角を担い、シーズン14勝。
日本シリーズではルーキーながら第7戦で先発完投勝利、胴上げ投手となり、満票で新人王を獲得。
2010年には自身初となる最多勝を獲得し、MVP・ベストナインにも選出された。
2011年に左腕史上最速となる通算200試合目での100勝を達成。
2011年のオフに海外FA権を行使し、MLBボルチモア・オリオールズへ移籍。
1年目開幕直前に左ひじの手術を受け、2014年にシカゴ・カブスへ移籍。
その年、7月に3年越しとなるメジャー初登板を果たすと、シーズン4勝を挙げる活躍で日米野球のMLB代表に選出、日本のファンの前で凱旋登板を果たした。
2015年に日本球界への復帰を決断。
2016年シーズンからは、福岡ソフトバンクホークスに所属し、同年に最多勝・最高勝率のタイトルを獲得。

[出典:(ダイヤモンド・オンライン)(Yahoo!ニュース > https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180417-00167215-diamond-bus_all ]

こういう人が、現役引退後は素晴らしい指導者になっていくのでしょうね。
ソフトバンクの強さの一端がわかった気がしました。

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