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日本人の疲れがとれない根本原因はこれだ!

投稿日:2018年4月30日 更新日:

「ホンマでっか!?TV」でお馴染みの梶本先生が、疲労の原因をわかりやすく説明してくれています。

これだけ労働時間を短くしても、日本人の疲れがとれない根本的原因

我々は、やっぱり無理をして生きている 2018.04.26
梶本 修身
医師、東京睡眠・疲労クリニック院長

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わが国は「疲労大国」といわれています。
過労死という言葉を聞くことは日常茶飯事ですし、筆者も所属している文部科学省の疲労研究班が2004年に行った調査では、日本人のなんと60%が常になんらかの疲れを感じていることがわかりました。
ほとんど全ての大人が疲れているーー21世紀の日本はそんな国になってしまったのです。

にもかかわらず、疲労のメカニズムや正しい対処法は、あまり広く理解されていないことも事実です。
そこで本連載では、最新の研究成果をもとに、「疲れとは、そもそも何なのか」と「どうすれば、疲れを少しでも取り除くことができるか」について、解説していきたいと思います。

日本人は、無理をして生きている

日本人の多くが疲れを感じているのは、なぜでしょうか。
決して昔に比べてひ弱になったからでもなければ、かつての日本人に特殊な能力があったからでもありません。
最大の理由は、私たちが直面している「環境の変化」なのです。

現代人には慢性的に疲れを感じている人が多いと述べましたが、疲れの「度合い」には地域差があることがわかっています。
ひとことで言えば、田舎に比べて都会で暮らす人は、より疲れを感じているのです。
それはすなわち、都会人が「生きているだけで無理をしている」ことを意味しています。

現生人類の歴史はおよそ50万年と言われますが、人間の遺伝子は、その間ほとんど変化していません。
しかし、その一方で私たちを取り巻く環境は劇的に変化しました。

特に18世紀に起きた産業革命以降、文化文明は爆発的な発展を遂げましたが、50万年という長さに比べれば、この200年あまりはほんの一瞬に過ぎません。
ほとんど誤差の範囲と言ってもいいでしょう。

私たちの肉体は太古の昔から比べて進化していないのに、私たちを取り巻く環境のほうは劇的に変化した。
これが最大の問題なのです。

とりわけ日本では、その変化が急激かつ顕著でした。
特に問題なのが、国土の狭さからくる人と人の「距離の近さ」です。

見ず知らずの人と押し合いへし合いしながら満員電車に揺られ、職場に着くと、隣の席に座る人と肩が触れあいそうなほど狭いデスクに座る。
食事をする際も、ファストフード店や牛丼屋などでは、隣席との距離が非常に近い店が増えています。

こうしたことは、自然界ではあり得ない状況ですから、そうした環境への対応方法は、遺伝子の中には組み込まれていません。
当然、大きなストレスがからだにかかり、結果として「疲れ」を感じることになります。

理性をもつ人間だからこそ、こうした過酷な環境にも黙って耐えていますが。
おそらく人間以外の動物をこのような環境に長時間閉じ込めれば、短時間で死に至るでしょう。

例えば複数のラットをひとつの狭いケージに詰め込んで放置すれば、あっという間にケンカが起こり、あるいは強いストレスで、少なくともどちらかが死に至ります。
私たちが日々体験している「他人との距離の近さ」と「人口密度」は、ラットのケージよりもはるかに過酷です。
まさに、生命の歴史になかった異常事態と言うべきレベルなのです。

自然な労働時間は「1日2時間」

「ホーム」と「アウェイ」という考え方も重要です。
動物で言えば巣、人間ならば自宅などの「気を抜いて、疲れを癒やすことができる環境」がホーム、逆に「緊張を強いられる環境」がアウェイと定義できます。

通常、野生の動物の場合は、1日24時間のうちホームで過ごす時間が22時間程度で、アウェイに出向くのはわずか2時間程度にすぎないと言われています。
サバンナで暮らすライオンを例に取れば、獲物を追いかける時はもちろんアウェイに出かけますが、それは長くても2時間ほど。

それ以外の時間は、自分の縄張りでのんびり寝て過ごしています。
ホームの空間にいる間は、身の安全を確保する必要はありませんから、疲れません。

逆に言えば、ライオンが1日2時間しか出かけないのは、それ以上頑張ると疲れで身体を壊してしまう危険があるからなのです。
犬や猫を飼っている方はお分かりかもしれませんが、他の多くの動物も同じように暮らしています。

ところが現代人の多くは、24時間のうち10時間前後、勤め先などのアウェイで過ごしています。
中には、睡眠以外のほとんどすべての時間を外で過ごす人も珍しくありません。

生き物として、これはかなり不自然な状態です。
特に都会では電車通勤に片道1時間以上かかるという人も数多いですが、満員電車のように「超アウェイ」な状況に毎日3時間も閉じ込められれば、心身がおかしくなってしまうのも当然と言えるでしょう。

問題は、こうした特殊な状況が「たまに」ではなく、何十年もの間「ほぼ毎日」繰り返されるということです。
肉体が本来は想定していないようなストレスが、エンドレスにかかり続けるーーそんな極めて特殊な時代に、私たちは暮らしているのです。

とはいえ、社会状況が根本的に変わらないかぎりは、このような生活から完全に抜け出すのは不可能でしょう。
私たちは疲れと一生つきあってゆくしかありません。
だからこそ、正しい知識を持ち、少しでも疲れない工夫をし、きちんと疲れを取る方法を身につけなければ、健康に生きていくことはできないのです。

疲れを感じるメカニズム

では、そもそもなぜ、人はアウェイの環境で長時間過ごすと疲れを感じるのでしょうか。
それには「自律神経」のしくみが大きくかかわっています。

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私たちは激しい運動をすると心拍数が上がり、呼吸が荒く大きくなります。
体温の上昇を抑えるために、汗もかきます。
こうした身体の反応を、刻々と切れ目なくコントロールしているのが自律神経です。

例えば身体を動かすと、自律神経が処理しなければならないタスクが増えます。
その結果、脳細胞の内部で活性酸素が発生します。

すると、脳細胞は「酸化ストレス」とよばれる状態に陥り、本来持っている自律神経の機能が充分に発揮できなくなっていきます。
これが「脳疲労」と呼ばれる状態です。
このようなメカニズムで、私たちは「疲れた…」と自覚するのです。

アウェイに身を置くと、人は自然と緊張します。
緊張の度合いが高まったとき、呼吸が速くなり心拍数が増すことは感覚的に理解できると思います。
つまり「アウェイで過ごす」ということは、それだけで激しい運動をした時と同じように、自律神経が多くのタスクをこなさければならない状態になるということです。

ここで重要なのは、疲労の度合いは「時間×負荷」という計算式によって決まるということです。
労働時間が長いということは、それだけ自律神経を長時間酷使するということですから、疲労の大きさと密接に関係していることは言うまでもありません。

たとえ肉体的には大きな負荷がかからないデスクワークだとしても、むしろ肉体労働より長時間、緊張と集中を強いられることが多いでしょう。
パソコンに張り付いて長時間同じ姿勢を続けるのは、それだけで大きなストレスとなります。
このような状態でも身体のバランスを保つために、自律神経が常に心拍や呼吸を微調整し続けているのです。

バブル期には見逃されていた「過労死」

「疲れの大きさが時間×負荷で決まるとすると、たしかに負荷は増しているかもしれないが、労働時間は昔のサラリーマンのほうが長かった。それでも昔は過労死なんてなかったじゃないか」
こんな意見もあるかもしれません。

たとえばバブル時代にも、やはり日本人は長時間働いていました。
「24時間戦えますか」と尻を叩かれていた時代です。
昔のサラリーマンが皆、今のサラリーマンよりも体力において優れていたとも思えません。

正確な統計は残っていませんが、おそらく昔も現在と同様、多くの人が過労で亡くなっていたのだと思います。
ブラック企業も、むしろ昔のほうが多かったのではないでしょうか。
当時は世間がそれを「過労が原因である」と考えなかっただけです。

こう考えるのには理由があります。
私が医師になったばかりの1990年代中頃には、死亡診断書に書く死因で圧倒的に多かったのが「急性心不全」でした。
死因が特定できない場合は、とりあえず心不全と書いていたのです。

たとえ毎日長時間の残業を強いられ、職場で倒れてそのまま息を引き取ったというケースでさえ、直接業務でケガをしたなどの要因がなければ、すべて心不全で処理されるのが実態でした。
「過労死」という言葉が広がったのは、労働環境や福利厚生への注目が高まった2000年前後のことです。

その意味では、現在国が進める「働き方改革」で、残業を抑制しようとする方針は間違っていません。
現実に、日本人の労働時間は既にアメリカ人より少なくなっているともいわれます。

しかしそれでも、「疲れている」と訴える人は減るどころか、増えている。
それは一体なぜでしょうか?
この「国民総疲労社会」ともいうべき状況を、打破する方策はあるのでしょうか?

この記事をここまで読んでくださっている読者は、日頃から「疲れやすい」「疲れが取れない」といった悩みを抱えているかもしれません。
ですが、周りを見てみると、疲れ知らずで徹夜仕事をこなす同僚もいる。
何が違うんだろう…と思っている人も多いのではないでしょうか。

ストレスフルな環境で暮らしていても、疲れを強く感じてしまう人と、あまり感じない人がいるのは事実です。
それには体質の違いもありますが、それ以上に「うまく疲れを取り除く方法を知っているかどうか」も関係してきます。
次回は、「疲れと個人差」という深い問題についてお話ししましょう。
(つづく)

[出典:(梶本 修身)(現代ビジネス 講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55174 ]

なかなか興味深いお話でした。
年齢的にも疲れを感じやすいので、とても納得できました。

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